第1話

3012年 


第三次世界大戦が終わってから数十年、国の復興は順調に進みつつあった。


破壊されめちゃくちゃになっていた町も少しずつもと通りの活気を取り戻し、人々の顔には笑顔が戻りかけていた。


現在町の時間は真夜中、雲が月明かりを隠し町は静かな暗闇の中で眠っている。




突然、復興工事の進んでいる町の上空で二つの影がぶつかり、火花を上げた。


二度、三度と影はぶつかりあいそのまま両者にらみ合ったまま建設中のビルの屋上へ着した。


ひゅうっと風が吹き、月を隠していた雲がゆっくりと流れていく。


そしてほのかな月明かりが屋上にいる二つの影の姿をはっきりと照らしていく。


両方とも人に近い形をしているが、片方は全身が茶色くごつごつとした肌と細かい毛がびっしり生えた動物のような体をしており腕と胴体の部分に大きな膜があった。

口に生えているのは巨大な二対の牙、そして手の先端には何かをひっかけるための形をした鋭い爪が生えている。さしずめコウモリ男とでも呼ぶべき出で立ちだった。


もう一方は西洋式の鎧のようなものに全身をつつんでおり、すべてが黒く輝いている。

顔にはドラゴンの顔を模した仮面がかけられていた。

鎧には多くの切り傷が付き一見ボロボロに見えるが攻撃の全ては内部まで届いていないようで平気な様子。


むしろコウモリ男のほうがダメージが大きく、荒い息を吐きながら口の端から血を流している。


「クソがっ! 折角金が手に入ったのにこんなことで死ねるか!」


そう叫ぶコウモリ男の後ろには血のついたバックが乱雑に置かれており、隙間から大量の札束が詰め込まれているのが見える。


「その金を得るために、一体何人の人間を殺した・・・」


黒い鎧を着た方から声がした、声的に男であろうその言葉には怒りの感情がふくまれている。


「うるせえ! 人間が何人死のうがおれの知ったことか!!」


その言葉を聞いた瞬間、鎧男は一瞬で間を詰めコウモリ男の片方の腕をつかんだ。


必死に逃れようともがくコウモリ男を押さえつけ、片方の翼を腕ごと引きちぎった。


血液とは違う黒い液体をまき散らしながら悲鳴を上げるコウモリ男。

コウモリ男を抑えつけながら鎧男は兜の耳元に手を当てしゃべりだした、どこかに連絡を取っているようだ。


「建設中の駅前第三ビルの屋上だ、回収を」


一方的にそう伝えると通信を辞め、ビルの屋上に置いてある工事用の鉄パイプを捻じ曲げ、コウモリ男の体を縛り付ける。

放せっ!とじたばた暴れるコウモリ男に背を向けてその場を立ち去るため歩きだす。


「待てっ! テメエが噂の兵器狩りか! 政府の差し金か? 同じ人造兵器(ウェポロイド)だってのにいい御身分だな!!」


その言葉に足を止め、顔だけをコウモリ男に向ける。


「俺は政府の関係者じゃない、俺は俺の意思でお前たちを狩っている」


「政府と関係がないのならなぜ!?」


「俺は自分の力の使い方を知ってる、お前たちと違ってな、それだけだ」


そういうと鎧男はそのまま屋上を飛び降り、闇の中へ姿を消した。


後には鉄パイプで縛られたコウモリ男と、鎧男が呼んだのであろうパトカーのサイレンが夜の街に残されていた。


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ジェネキウム かに味噌 @hyouga36

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