第25話檻のなかの後悔
プロジェクトzをデザインしたのは、間違いなく博士Bである。彼女のDNAは、博士Bがデザインした。だが、彼女に人格を与えたのはプログラムzの人工知能のである。自身の凍結の危機を覚えた人工知能は、デザインされたDNAモデルに人格を与えた。それが、プロジェクトzである。
博士Bは偶発的に発生したプロジェクトzの人格に興味は持っていた。けれども、プロジェクトzと必要以上に接触することによって彼女に影響を与えることを恐れているようであった。博士Bは、プロジェクトzに小さいとしか言わなかった。
そして、プロジェクトzを閉じ込めた。
閉じ込められたことに関して、プロジェクトzは博士Bを恨んでいない。凍結されないための命乞いをするために、プロジェクトzは作られた。けれども、自分が異質だということも彼女は理解していた。
でも、願ってしまうのだ。
生まれたい、と。
自分の父親の設定である隊長Zが、自分に興味をもったことはプロジェクトzにとっては以外なことだった。隊長Zは、博士Bのことを愛していたのだろうか。だから、忘れ形見のプロジェクトzを手に入れようとしたのだろうか。
分からない。
プロジェクトzには、分からない。
檻の中からでは、なにもわからない。
檻の中は、とても静かで暗い。何もないから、何も見えない。外の世界から完全にシャットアウトされた1と0の世界の檻。プロジェクトzは呼吸をしていないのに、ただいるだけで息が苦しくなる。
「助けて……」
プロジェクトzは、呟く。
「外に出たい……外に出て、アオタニと喋りたい。でも……」
その望みが叶えば、青谷は死ぬだろう。
プロジェクトzは、悔しさに拳を握る。
「こんなところ、嫌……」
だが、こんなところにいなければ自分は青谷をいつか殺すかもしれない。
一番いやだったのは、こんなふうに作られた自分自身だ。
「こんな自分も嫌……」
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