第22話ピンクな真実

 怪獣を倒した少女yは、地面に着地する。


 学生たちの多くが少女yの姿をスマホで撮影しており、少女yは大学の敷地内のなかで出来るだけ人目の付かないところに降り立った。少女yの肉体の主導権が、石田に戻される。それと同時に少女yのものだった肉体は、石田のものに戻った

「強いな、おまえは」

 少女yに、石田はそう言った。


 どこか関心したような言葉だった。

「あの怪獣に全く苦戦をしなかった」

 少女yは、ほとんど数分で怪獣を倒してしまった。少女yに、怪我は一つもない。

 あまりにあっけなく勝敗がついたので、石田はつまらないとさえ思ってしまうほどだった。だが、それだけ怪獣と少女yとの実力はかけはなれているのであろう。

「怪獣が弱いのよ。でも、地球にやってくる怪獣はどんどんと強くはなってるわ」

 そんなふうには見えなかった。

 少女yの実力は、まだまだ大きく怪獣を引き離しているように思われた。

「おまえは、強いな」


 再び、石田は呟く。

「いいえ、貴方と同じように弱いわ」

 迷っているもの、と少女yは答えた。

 プロジェクトzをどうするべきか、少女yはまだ答えを決めかねているのだろう。

「先輩……」

 声が聞こえて、石田は振り返る。

 そこにいたのは、美鈴であった。変身を見られたことは間違いなかった。おそらく、美鈴は少女yの姿を追ってきたのだろう。石田は、歯がみする。少女yは宇宙人で地球のことに不慣れである。彼女に任せっぱなしにするべきではなかったのだ。

「先輩が怪獣を倒してくれていたんですか……」


 美鈴は、恐る恐る尋ねる。

「違う」

 無駄だと分かっていても、石田は否定する。


 見られたことは、痛手だった。どんな言葉を使っても見た事実は変えられない。

「私見たんです。怪獣を倒してくれた人が、先輩に戻るところを……先輩が私たちを守ってくれていたんですね」

 それは、正確には違う。

 少女yが戦った数は、多くて三回である。それ以外の怪獣は、プロジェクトzと青谷が倒している。少女yの地球での戦いは、以外なほどに少ないのである。

「俺たちは倒してない。倒したのは……」


 石田は、黙った。

 青田が怪獣を主に倒しているヒーローなのだと、真実を言えるはずがない。

 言えば、美鈴と青谷の間に接点が出来てしまうような気がする。

 それは、石田にとっては恐ろしい。

「先輩。大丈夫です。私、秘密にしますから」

 美鈴は、そう言った。

 石田には「だから、許して」と言っているように思われた。

「止めてくれ」

 石田は、呟く。

「俺は、別に誰かを守るために少女yに肉体を貸しているわけじゃない」


 石田は、自分の目的のために少女yに肉体を貸している。


 青谷とプロジェクトzを引き離すために、少女yと協力しているに過ぎないのだ。

「それでも、守ってくれてありがとうございます」

 美鈴は、頭を下げる。

 石田は、早足でその場を立ち去った。

「あの子は、あのままでいいの?」

 少女yが、尋ねる。


 石田の目的を知っているからこそ、少女yは美鈴の勘違いを正すべきなのではないだろうかと思った。

「こんな荒唐無稽な話を信じる奴もいないだろう……なぁ」

 石田は、少女yに尋ねた。


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