第15話怪獣遊園地
「酔った……」
青谷は、フードコートのテーブルに突っ伏していた。ジェットコースターの乗った後から、青谷はずっとこうである。
「大丈夫?貴方って、乗り物に弱いタイプだったのね」
「いつもは違う……でも、今は考えすぎて気持ち悪くなったんだ」
青谷の言葉に、プロジェクトzはため息をつく。
「軟弱ね」
「……さっきチケットを渡したスタッフがいただろ。あの子、俺の妹を苛めた子だ」
青谷の言葉に、プロジェクトzは言葉を失った。
そして、じっと青谷を見つめる。
「……使っていいよ」
プロジェクトzは言う。
なにをだろうか、と青谷は思った。
「私の肉体で、あの子を殺しても――いいよ」
その言葉に、石田は少し驚いた。
けれども、すぐにプロジェクトzの心根を知った。
青田には、少しだけ笑った。彼女の優しさを愛しく思うが故に、微笑んだのである。
「そんなことをおまえにさせられるか。それに、おまえだってそれを望んでいないだろう」
体を起き上がらせて、青谷はジュースを飲む。
冷えた甘みが、少しだけ気分をすっきりさせてくれた。
「おまえは、誰よりも命を大事にしてる。命の大切さを分かってる。だから、人殺しなんてできない」
青田には、プロジェクトzの頭をなでようとした。
だが、彼女は幻だと思い出す。
「させたくない」
青谷は、そう言った。
プロジェクトzは、その言葉に驚いたようであった。
「私は……貴方に怪獣を殺させているのに」
プロジェクトzは、申し訳なさそうに呟く。
「それはあいつらが地球に来るからで……そうか、怪獣もおまえにとっては命なんだな」
いつか、青谷の命を奪って生まれたいと願うプロジェクトz。
その矛盾には、まだ彼女は気が付けていない。
「私だって、怪獣がこの星の人々にとっては害がある生物だっては分かっているわ。でも、彼らも生きてる」
プロジェクトzの言葉に、青谷は少しばかり考えた。怪獣と戦うことができるプロジェクトzは異星人で、青谷の知り合いでは一番突飛な女の子だ。だが、きっと彼女の内面は死んだ妹と同じぐらいにナイーブだ。
こんなに弱くて、プロジェクトzは大丈夫だろうかと青谷は思う。彼女は、親しい人間の命を奪うことに耐え切れるのだろうか。
「プロジェクトz。行動しないと手に入れられないものがある。俺たちが怪獣を倒さないと地球は守れないし、俺から命を奪わないとおまえは生まれてくることができないんだからな」
「そんなの分かってるわ!」
プロジェクトzは、はっとする。
「怪獣が出たわ!!場所は、ここから結構近いわよ。飛べば、すぐよ。70パーセントの確立で被害が広まる前に間に合うわ」
「確かか?」
「ええ、私はずっとインターネットに繋がっているんだもの。情報は、常に最新よ」
ナビをするわ、とプロジェクトzはいう。
「また、少女yと会うかもしれないぞ」
青谷の言葉にも、プロジェクトzは恐れなかった。
「会ったとしたら、猛スピードで逃げればいいのよ。言っておくけど、少女yとはやりあわないほうがいいわよ。あっちは訓練を受けたエリートなんだから」
どうやら、プロジェクトzのなかでは行くことは決定しているらしい。
青谷はため息をついた。
前回は警察や自衛隊を待っていたが、先に少女yがきてしまった。今回はどうするべきだろうか、と青谷は思い悩む。しかし、今回の怪獣も少女yが退治した時のように巨大であれば、被害を最小限にするためにも自分たちがいかなければならないだろう。
「行くか、プロジェクトz」
「ええ、そうこないとね」
青谷はスマホのアプリを起動させた。
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