第5話きっと彼女がヒーローだった

目覚めたとき、青谷は病院のベットにいた。

 どうして病院に運ばれているのかは理解できなかったが、隣にはプリンを食べる石田の姿があった。おそらくだが、彼が運んでくれたのだろう。

「どう……なったんだ?というか、あれって全部夢だったのか?」

 青谷がそう尋ねると「夢じゃないわよ」と甲高い声が聞こえてきた。

 スマホを見ると、暗い画面には青色の線でのっぺりとした宇宙人の顔が浮かび上がっている。プロジェクトzの顔である。相変わらず、その姿は石田には見えていないようである。

「ああ、お前が青くてゼリーみたいなものに変身して、道路で醜態をさらしたのは夢じゃない」

 そのわりに、石田は適確にプロジェクトzの琴線に触るようである。スマホのなかで、石田の言葉にプロジェクトzは怒り狂っていた。どうやら、肉体を得て動けなかったのがよっぽど悔しいのだろう。

 だが、同時に全てのことが夢ではないと分かった。蟷螂のようなバケモノも肉体が変化したことも、すべてが現実であった。そして、青谷が蟷螂のバケモノを倒したことすら現実であったのだ。

「仕方がないじゃない!知らなかったのよ。生身の体が重いなんて!」

 ヒステリックに騒ぐ、プロジェクトz。

 その声や言動は、青谷にはものすごく幼く感じられた。何も出来ないくせに、プライドだけは高い様子は、幼い頃の妹の未来そっくりだった。

「プロジェクトz。あれが、お前の本来の姿なのか?」

 青谷の言葉に、プロジェクトzは騒ぐのを止める。

 そんなところだけは、妙に理知的で大人びて思えた。

 そして、渋々認めた。

「ええ、そうよ。アレが、私がデザインされたDNAの姿よ」

 恐らく、プロジェクトzは女の子だろう。

 だが、そのわりには肉体は性別を感じさせないユニセックスなものだった。胸の膨らみもまったく全くなく、か弱い印象もなかった。プロジェクトzは、そんな青谷の思考を読んだのか補足で説明する。

「私の種族は、男女の性差がそんなにないのよ。肉体の大きさは貴方の肉体が元になっているから、そんなに大きくはなれないだけよ」

 元の肉体が大きかったら、大きくなれるような口ぶりである。

「まぁ、私の種族から見たら、かなり小柄ね」

 プロジェクトzはそういうが、彼女に不満はないようである。

 自分の肉体が小さくなってしまっていたら、不満がでるような気がしてならないが、プロジェクトzはそうではないらしい。

「お前は……誰に作られたんだ。宇宙人か?」

 青谷の言葉に、プロジェクトzはあきれ返った。

「最初に説明しなかったかしら……。まぁ、いいわ。私は宇宙から来た、プロジェクトz。私は、私自身が生まれるために、この星にやってきたの。私は、貴方の肉体が欲しい」

 プロジェクトzの正直な言葉に、今度は青谷があきれた。

 そんなに正直に喋って、体を受け渡すようなお人よしがいると思っているのだろうか。

「訂正しろ、プロジェクトz。おまえは、この星を守りにやってきてくれたヒーローなんだろ」

 青谷の言葉に、プロジェクトzは「そんなにいいものじゃないわ」と答えた。

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