トマールと水道橋

 トマールという町の郊外に残る長い水道橋は、セゴビアほどの高さはないですけれど、かつては街の上にある世界遺産のキリスト修道院へ水を運んでいました。この水道橋は、キリスト修道院のような観光地ではなく、郊外の車でなければアクセスできないという場所柄もあり、また、朝だったからもあってか、観光客は数人。見学できるところはさほど高いところではなかったので、怖い思いもせずに、じっくりと気になっていた構造や水が流れる仕組みを見ることができました。

 さて、このキリスト修道院ですが、リスボン北東の地域をイスラム教から奪回した功績によって、この土地を与えられたテンプル騎士団が、堅牢な城砦と聖堂を築いたのが始まりで、12世紀のこと。その後、キリスト騎士団に引き継がれて、5世紀に渡る増改築の末、ポルトガル最大の規模を誇る修道院ができあがり、建築美術とさまざまな様式が取り込まれています。とにかく大きく、奥が深く、全部見学できたかわからないほどでした。

 修道院を築いたテンプル騎士団は14世紀に弾圧され、19世紀に至るまで異端という汚名は晴らされなかったとのことですが、町の中では、テンプル騎士団の旗を見かけましたし、お土産も騎士団のフィギュアやちなんだものが多かったです。そして、私達が宿泊したホテルも騎士団からとった名称でした。 

 大変印象的だったのは、聖堂にある祭壇が、16角形の円堂になっていて、騎士たちはすぐに戦いにいけるよう馬で回りながらミサに参加したそうなのです。これぞ

メリーゴーランドの原型なのではと、不謹慎ながらふと思いました。

 トマールは、風光明媚という言葉がぴったりの水と緑に恵まれ、おしゃれな佇まいのとてものどかな町でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いってきました、ポルトガル! ハンソン喜子 @kiko717

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る