いといけ

「今日のから揚げ、おいしいね。さすがママ!」

「あら、そうお? やだーもう。そんなに褒めないで」

 ある日の夕食。父の久雄が梨佳の料理をべた褒めした。

 これはいつものことだった。

 目の前に久志と久々梨がいてもお構いなしに、二人の世界に入っていく。

「愛しているよ」

「私もよ」

 久雄が梨佳を抱きしめた。

 久志は恥ずかしそうに目を逸らしている。

 久々梨は目の前の両親をガン見している。

「あのさ。そういうの、二人きりの時にやってくれない?」

 久々梨の言葉に、久雄が反応する。

「パパは、もちろん久々梨のことも愛しているぞ」

「ママもよ」

 梨佳が同意した。

「え、俺は?」

 久志だけが眉間にしわを寄せていた。


【ククリメモ】

 パパとママはラブラブ。お兄ちゃんはこの後数分間、「ねぇ、俺は?」とうるさかった。


【人物紹介】

 糸井久雄(42)

 身長170㎝


 久々梨の父。最近の悩みは息子に身長が追い抜かれたこと。

 

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ITOIFAMILY 黒宮涼 @kr_andante

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