第118話  業に散る花、魔転の花――ジ・エンド・オブ・ダークナイト その3




「さあ、よく見なさい、無知で無力な小娘よ。今この瞬間から、このわらわこそが、クランブリン王国の正統なる王位継承権者――シャーロット・クランブリンよ」


「うそ……」


 シャーロットは目の前に立つカルナをまじまじと見た。そしてゴクリと唾をのんだ。その勝ち誇った笑みを浮かべている少女は、まさにシャーロットそのものだったからだ。


「すごい、なにそれ……。ほんとにわたしとそっくりなんだけど……」


「はぁん? そっくり? 違う、違う、違う、ちっがぁーうっ! この姿はっ! そんなチャチなレベルなんかじゃあないのっ! 今のわらわはっ! まさにっ! 正真正銘っ! 完全無欠のぉっ! シャーロット・クランブリンそのものよっ!」


 カルナはシャーロットの声で高らかに言い放った。そして薄くなった胸を張り、左手首の腕輪を夜空に掲げてさらに言う。


「王家の血筋を守る王室血統審判官ブラッドガードはっ! たしかにすべての変身魔法を無効化できるっ! だからわらわは使 それがこの超魔道具っ!  


「せ……生体情報……?」


「そのとぉぉりっっ!」


 カルナはシャーロットの顔で歯を剥きながら声を張り上げた。


「この腕輪はおまえのすべてを写し取り! わらわの体にその情報を転送する! そしてぇっ! 肉も! 骨も! 血液も! すべてをおまえと同じものに変化させる! これぞまさにっ! 究極の変身魔道具っ!」


「な、なにそれ……? 体のすべてを、わたしと同じものに変化させるって……」


「イィィエースッッ! この体が流す汗も涙も唾液すらっ! すべてがおまえと同じものよっ! だからっ! たとえ王室血統審判官ブラッドガードが特殊魔法の魔女狩ヘクセンハントを使おうともっ! この変身を見破ることは絶対! 絶対っ! 絶・対・不可能っっ! つまぁーりっっ!」


 カルナは不意にふっと息を吐いて力を抜いた。そして優雅な仕草でポーズを決めて、シャーロットに言い放つ。


「――わらわの勝ちよ」


「そ……そんな……」


 その瞬間、シャーロットは体中から力が抜けて呆然とした。


 カルナが口にした言葉が本当かどうかシャーロットにはわからない。しかし、カルナの声には揺るぎない確信が込められていた。シャーロットが生まれた14年前に復讐計画を立てて準備を始め、サイラス・クランブリンを暗殺し、王族を次々と暗殺したカルナは今、シャーロットの姿になって優雅な笑みを浮かべている――。


 その自信に満ちあふれた魔女の姿を目の当たりにしたシャーロットは、カルナの言葉がすべて真実であることがはっきりとわかった。


「ふふふ。どうやら観念したようね」


 青い瞳に絶望の色を浮かべたシャーロットを見て、カルナは声を弾ませた。


「でも、これでわかったでしょ? このソフィア寮には魔女や悪魔を絶対に通さない強力な結界が張ってある。。このソフィア寮でおまえと入れ替われば、誰も魔女だと疑わないからよ。そしてさらにこのバイオーンでおまえになりすませば、王室血統審判官ブラッドガードの特殊魔法『魔女狩ヘクセンハント』でもわらわの正体を見抜くことは絶対にできない――。


 ふふふ。皮肉なことね。王家の血筋を守るはずの王室血統審判官ブラッドガード自身が、このわらわを本物のシャーロット・クランブリンだと認めることになるのよ。……どう? わらわの計画は完璧でしょ?」


「……さすがは邪悪な魔女ね」


 シャーロットは悔しそうにあごを引き、目の前にある自分の顔をにらみつけた。


「つまりあなたの狙いは、最初からわたしだったってことね」


「あら。勘違いしないでちょうだい。わらわが待ち望んでいたのは、王の血を受け継ぐ直系の姫よ。それがたまたま、おまえだったというだけのこと。そして、


 カルナはシャーロットの胸元に手を伸ばし、ペンダントの青いロケットを指でつまんだ。


「それは、お父さんにもらったお守り……」


「ふふ。これはただのお守りではないわ」


 カルナは小さなロケットを見つめてニヤリと笑った。


「わらわの契約悪魔は調。そして、このロケットの贈り主はおまえの育ての親、モーリス・ナクタンではないことを突き止めた。これは、おまえの本当の父親、サイラス・クランブリンが特別に作らせたものよ」


「えっ? うそ……」


 その瞬間、シャーロットは目を丸くした。まさか実の父親からの贈り物を肌身離さず持っていたとは思ってもいなかったからだ。


 そんなシャーロットを見て、カルナは思わず鼻で笑った。そしてシャーロットの首からネックレスを外して奪い、後ろに下がって口を開く。


「このロケットは魔法金属のホーリウムで作られている。そんな高価な『入れ物』ならば、中にはそれに相応しいモノが入っているはず。つまりこの中には、王家の血筋を証明する『印章』が収められているということになる」


「印章……? それが最後の鍵……?」


 シャーロットはカルナの手の中にあるロケットを見つめて唾をのみ込んだ。物心がつく前から常に持ち歩いていたロケットの中に何が入っているのか、気にならないといえば嘘になる。しかし――。


「でも、それはぜったいに開けちゃダメだって、お父さんが……」


「うふふふふふふ。なにそれ? 開けちゃダメ? 開けちゃダメですって? そんな心をくすぐる甘い言葉を聞かされて、開けない魔女がこの世にいると思うの? いるわけないでしょ。なに言ってんの? バカじゃないの? せーのっ! ゲラゲラゲラゲラッゲラゲラゲラゲラッ!」


 カルナはシャーロットの顔のまま、邪悪な笑みを浮かべて高らかに笑い出した。


「さあ、見なさい、シャーロット・クランブリン。わらわに蹴られて転がるために生まれてきた愚かな小石よ。これこそが、クランブリンの王族だけが持つ王家の紋章――。王権サイン・オ神授印ブ・スローンよっ!」


 そう言って、カルナは青いロケットを目の前に持ち上げた。そしてシャーロットに見せつけながら、ゆっくりとふたを開ける。


 その瞬間――強烈な閃光が夜の闇を切り裂いた。


「――なっ!? なんなのっ!? なんなのよこの光は――がっはぁっ!」


 それはロケットの中から解き放たれた、まばゆく輝く青い光だった。


 そしてその光を浴びたとたん、カルナの瞳の中で光の魔法陣がはじけ飛んだ。それはカルナの魂に刻んであった精神保護の安全装置――魔法遮断陣マギアブレーカーだ。


 さらにカルナは全身から大量の汗を一気に噴き出し、崩れるようにへたり込んだ。同時にシャーロットの体を拘束していた影の十字架も大気に溶けて瞬時に消え去り、シャーロットは自由を取り戻した。


「こ……これはいったい……どういうこと……!?」


「えっ? なっ、なにっ? なにが起きたのっ?」 


 カルナとシャーロットは思わず驚きの声を漏らした。そして2人は反射的に、カルナの手の中にあるロケットに視線を落とした。


 すると、ふたが開けられたロケットの中には小さな宝石が貼りつけられていた。透きとおるような青い色をした、楕円形の宝石だ。


「これはまさか……特殊魔法核エクスコア……?」


 自分の身に何が起きたのか理解できないカルナは、疲れ果てた顔で呆然と呟いた。そして荒い呼吸を何とか肩で整えながら契約悪魔の名を呼んだ。


「ブリトラ……ブリトラぁっ!」


「――お呼びでしょうか、カルナ様」


 カルナが息も絶え絶えに怒りの声で呼びつけたとたん、カルナの影から1人の男が音もなく浮かび上がってきた。それは黒い執事服に身を包んだ上級悪魔――ブリトラ・ダヤンだ。


「これはいったいどういうことよっ!」


 カルナは屋上庭園の冷たい床に座り込んだまま再び怒鳴った。


「このロケットには王家の証が入っている! おまえはわらわにそう報告した! しかし! 中に入っていたのは正体不明の特殊魔法核エクスコアじゃない! これはなに!? いったいどういうことよっ!」


「大変申し訳ございません、カルナ様」


 もはや立ち上がるどころか顔を上げる体力すら残っていないカルナに、ブリトラはうやうやしく頭を下げて謝罪した。


「そのロケットは、シャーロット・クランブリン姫殿下が常に持ち歩いておりましたので、王家の証に違いないと思い込んでおりました」


「ふざけないでっ!」


 その瞬間、カルナは気力を振り絞り、隣に立つブリトラをにらみ上げた。


「いったい何年一緒にいると思っているのよっ! おまえがそんな曖昧あいまいな思い込みをするはずがないでしょっ! いいからさっさと答えなさいっ! これはなにっ!? この青い特殊魔法核エクスコアはいったいなんなのっ!?」


「……さすがはカルナ様。私のことをよくご存知でいらっしゃる」


 カルナが吠えたとたん、ブリトラは声を出さずに笑い出した。そしてうやうやしいポーズを取りながら、カルナを見下ろして言葉を続ける。


「では、正直にお答えいたしましょう。その特殊魔法核エクスコアの正体は、でございます」


「しっ!? 封才魔石シーラントですってぇっ!?」


 その言葉を聞いたとたん、カルナは愕然と目を見開いた。


「はい。カルナ様もご存知のように、封才魔石シーラントは、特殊な魔法核マギアコアでございます。そして今、カルナ様がお手にされている特殊魔法核エクスコアは、封才魔石シーラントの中でも最上級の逸品――。大山亀の大魔獣、タインテトルの特殊魔法核エクスコアでございます」


「――ンなっ!?」


 その瞬間、カルナの瞳は深い絶望の色に染まった。


「な……なんですって……? タインテトルって、伝説級レジェンダリー精霊獣・ハイネイチャーじゃない……」


「はい、さようでございます。ですので、そのロケットを開いた時点で、。つまり、精神力が一気に尽きて魔法遮断陣マギアブレーカーが発動したのも、シャーロット様を捕らえていた魔法が消滅したのも、すべてその封才魔石シーラントのせいでございます」


 そう言って、ブリトラはニヤリと笑った。それからゆっくりと歩き出し、シャーロットの前で足を止めた。


「お初にお目にかかります、シャーロット・クランブリン姫殿下。私の名前はブリトラ・ダヤン。果てしなき力を求める、意地汚い悪魔でございます」


「……え? あ、はい。どうも、こんばんは……」


 いきなりうやうやしく頭を下げたブリトラを見て、シャーロットはパチクリとまばたいた。すると地面にへたり込んだままのカルナがブリトラの背中に怒鳴りつけた。


「ブリトラぁーっ! 何をのんきなことを言っているのっ! さっさとこの忌々しい封才魔石シーラントを破壊しなさいっ!」


「かしこまりました、カルナ様」


 ブリトラはすぐさま振り返り、カルナに向かって丁寧にお辞儀した。しかし、そこから1歩も動かなかった。執事服の悪魔はその場に突っ立ったまま、カルナを見下ろして言葉を続ける。


「――ですが、大変申し訳ございません、カルナ様。その前に1つ、お伺いしたいことがございます」


「はぁっ!? 話ならあとでいくらでも聞くから! とにかく今はこの特殊魔法核エクスコアを何とかしなさいっ! これは命令よっ!」


「――まことに残念ですが、その命令は無効でございます」


 その瞬間、ブリトラはカルナを見つめたまま邪悪に笑った。


「先ほども申し上げましたとおり、カルナ様の能力はすべて完璧に封じ込められております。それにより、私との。ということはつまり――まあ、この先は説明しなくてもおわかりでしょう」


「お……おまえ……いったい何を……」


 淡々と語ったブリトラの言葉を耳にしたとたん、カルナは鋭く息をのんだ。


「ですが、ご安心くださいカルナ様。私の質問は、特に難しい内容ではございません」


 絶望の上に恐怖をにじませたカルナの顔を見下ろしながら、ブリトラは再び問いかけた。


「私が知りたいことはただ一つ――。カルナ様の一番の目標はなんでしょうか?」


「も、目標……?」


 訊かれたとたん、カルナは瞳の中に怒りの炎を燃え上がらせた。


「何を今さらっ! そんなことは決まっているでしょ! 復讐よ! わらわはクランブリンという邪悪な王国を1人残らず滅ぼし尽くす! そのためにわらわは今日まで生き抜いてきた! それはわらわの契約悪魔であるおまえが誰よりもよく知っているはずよっ!」


「お答えいただき、まことにありがとうございます」


 カルナは声に力を込めてブリトラに吠えた。しかしブリトラはカルナの怒気どきを軽く受け流し、今度はシャーロットに体を向ける。


「それでは、シャーロット様にもお伺いいたします」


「え? わたしも?」


「はい。シャーロット様の一番の目標はなんでしょうか?」


「わたしの、一番の目標……?」


 訊かれたとたん、シャーロットは首をひねった。


 いきなり現れて、奇妙な質問をしてきた悪魔の考えがさっぱりわからなかったからだ。しかし、黒い髪を丁寧になでつけた悪魔は、真剣な表情でシャーロットの答えを待っている。そしてその後ろでは、疲れ切って床にへたり込んでいる魔女が、憎々しげにシャーロットをにらみ上げている。


 その2人を見た瞬間、シャーロットはハッと気づいた。


(そうか。これはたぶん――ううん。これもきっと、なんだ。だったら、わたしが選ぶ道は――)


 シャーロットはカルナとブリトラを交互に見て、自分が運命の分かれ道に立っていることを自覚した。


 謎の問いかけをしてきた悪魔の意図はわからない。しかし、魔女はシャーロットになりすまし、クランブリン王国の破滅をたくらんでいる。その邪悪な牙から、クランブリンという生まれ故郷を守る力を、今のシャーロットは持っていない。だが――。


(今のわたしは、たしかになんの力もないか弱い子どもよ……。だけど、なにもできないからといって――未来をあきらめるつもりはない! だって!)


「――だって! わたしはネインくんに! 命がけで助けてもらったんだもんっ!」


 その瞬間、シャーロットは全力でこぶしを握りしめ、腹の底から声を張り上げた。


「わたしは今日までなにも考えずに生きてきた! 自分がなにをしたいのかなんて考えたこともなかった! だけど! 今ならわかる! それじゃダメなの! わたしはもっと! もっともっとっ! いろいろなことを考えなくちゃダメだったのっ!」


 シャーロットは目を見開いた。そして青い瞳の中に澄んだ光を宿らせながらカルナを見つめた。


「その人は復讐のために生きていると言った! それはすごく悲しいことだと思う! メナちゃんは研究のために生きていると言った! みんなの生活を豊かにするのが夢だと言っていた! それはすごく素敵なことだと思う! クレアさんはこの国に生きる人たちを守りたいと言っていた! それはとても勇気のあることだと思う! そしてネインくんは! この世界を守るために戦うと言った! それは! それはっ! とても強くてっ! とても辛い道だと思うっ!」


 シャーロットは星空に目を向けた。そして潤んだ瞳の中にネインの姿を浮かべながらさらに言う。


「ネインくんはお父さんとお母さんのかたきをとるために生きている! さらわれた妹さんをさがすために生きている! それは! その魔女と同じ復讐の道かもしれない! でも! ネインくんはメナちゃんを命がけで守ってくれた! 後悔しながら亡くなったサイラス陛下のために! わたしを捜し出してカメオを届けてくれた! そして! さらわれたわたしを助けるために命がけで戦ってくれた! ネインくんは自分の復讐の道よりも! こんななにもできないダメなわたしを助けに来てくれたのっ!」


 シャーロットは泣いていた。


 白い頬に涙の筋を流していた。そして泣きながら奥歯を噛みしめ、胸の内にあふれてくる心を夜空に向かって吐き出した。


「だからわたしはっ! ネインくんを尊敬しているっ! 人の優しい心を伝えるために! 誰かの命を守るために! いつも傷つきながら戦っているネインくんを尊敬しているっ! だからわたしはっ! ネインくんのように強くなりたいっ! そしていつかっ! そしていつかぁっ! わたしがネインくんを守ってあげたいっ! それがっ! それがぁーっ! わたしの一番の目標よぉーっ!」


 シャーロットは全身全霊で声を張り上げた。


 その言葉は心の奥底で燃えていた炎だった。魂の叫びだった。弱い自分という過去との決別を告げる、まばゆいばかりのきらめきだった――。


「――お答えいただき、まことにありがとうございました」


 涙を流して体を震わせているシャーロットに、ブリトラはうやうやしく頭を下げた。同時に、床にへたり込んでいるカルナが小馬鹿にするような笑みを浮かべて毒を吐いた。


「はっ。愚かな小娘らしい言葉ね。なぁーにがネインを守ってあげたいよ。生まれてから今日まで何の努力もせずにムダに生きてきた小娘に、そんなことができるはずないでしょ。理想っていうのは語るモノじゃないの。胸に秘めて実現させるモノよ」


 そう言い捨てて、カルナはブリトラに向かってあごをしゃくった。


「ほら、ブリトラ。茶番はもうじゅうぶんよ。さっさとこの封才魔石シーラントを破壊しなさい」


「かしこまりました」


 ブリトラはカルナにうやうやしく頭を下げて、ゆっくりと近づいていく。


 するとカルナはニヤリと笑い、満足そうにうなずいた。しかし次の瞬間、カルナの顔面が完全に強張こわばった。


 なぜならば、床に膝をついたブリトラが、カルナの手の中にある青いロケットをつまみ上げたあと、カルナの左手首から腕輪を外したからだ。そしてそのとたん、カルナの体は黒いきらめきに包まれて、一瞬で元の姿に戻ってしまった。


「なっ!? ブリトラっ! いったい何をしている!?」


 生体情報複写転ジ・エクスコア・送・特殊魔法核オブ・バイオーンを外されたカルナは、牙を剥いて怒鳴りつけた。そして怒りに任せてブリトラに飛びかかろうとしたが、疲れ切った体は指一本動かなかった。


 タイム・アウト・マギアサークル魔影十字縛シャドウ・クロスの魔法を使用していたカルナは、封才魔石シーラントで能力を封じられた瞬間に精神力が完全に底をついてしまった。そのせいで今のカルナには、気力を振り絞ってブリトラに怒鳴り、殺気を込めてにらみつけることしかできなかった。


 そんな心身ともに衰弱したカルナを無視して、ブリトラは再びシャーロットの前に戻っていく。そして上品に微笑みながら口を開く。


「失礼ながら、たしかに今のシャーロット様にはなんの力もございません。――ですが、


「えっ? おめでとうって……?」


 シャーロットはわけがわからずパチクリとまばたいた。するとブリトラは


今宵こよい、この時、この場所に巡り合わせたのは、シャーロット様の運命でございます」


「運命……?」


「はい。どうぞ、そちらをご覧ください――」


 悪魔は優雅な仕草で1歩下がった。そして、顔から汗を流してへたり込んでいる魔女を手でさした。


「今まさに、



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