異世界戦記・転魔撃滅ガッデムファイア ~ 地球から来た転生者どもはすべて倒す! 絶対神の魂を宿した最強の復讐者が、魔炎をまとって敵を討つ超必殺・撃滅譚!
第101話 襲いかかる正義――レッドパラソル VS マン・イン・ザ・ダーク その2
第101話 襲いかかる正義――レッドパラソル VS マン・イン・ザ・ダーク その2
「
真の名を告げたアムは、漆黒の剣を振り下ろして
「……さあ。覚悟はよいか、ジャコン・イグバよ。我が友メナ・スミンズの魂を
「なっ! なにが
アムの底知れない実力を
「こいつらは俺が召喚したんだっ! 俺の命令に逆らうことなんて絶対にできないっ! 本能的な恐怖なんか俺の命令で塗りつぶすっ! いけーっ! アリどもよっ! そのバケモノを食らい尽くせーっ!」
「まったく……。
四方八方から押し寄せた
「アムーっ! くそっ! だから言わんこっちゃない! 待ってろ! いま行くっ! うおおおおおおーっ!
「……お待ちください、クルース様」
クルースがとっさに腰の剣を引き抜いて、自らの
「ネンナさん止めないでくださいっ! 早くアムを助けないとっ!」
「落ち着いてよく見てください、クルース様。おまえごときの出番はない」
「えっ!?」
ネンナがアムの方を指さしたので、クルースも反射的に目を向けた。すると次の瞬間、黒い
「なっ!? なんだあれはっ!?」
それは異常な光景だった。
赤く燃える夕焼け空の下、石の広場は黒い
「影っ!? いやっ! これはまさかっ!
クルースは驚きのあまり目を剥いた。
それはまさに影でできた巨大な蛇だった。その暗黒の蛇は、まるで巨大な柱のように大地からまっすぐ天に向かい、再び石の広場に突っ込んでくる。そして地面を覆っていた
「ぶあっ!? バカなぁーっ!? これはまさかっっ!
ジャコンも突如として現れた影の蛇を見て度肝を抜かれた。
「ありえないっっ! こんなの絶対ありえないっっ! なんでこんなところにっっ!
「……知れたこと。あれは
「なにぃーっ!?」
不意に漂った少女の声に、ジャコンはハッとして顔を向けた。すると先ほどまでと同じ場所にアムが無傷で立っていた。しかもアムの周囲の
「なあ、ジャコンよ。おまえのアリどもはたしかに厄介だ。しかし、
アムは淡々と言い放ち、手にした漆黒の剣を天に向ける。そして再び黒い五芒星を宙に刻んだとたん、今度は4体の
「あ……ありえない……。レジェンダリー・ハイネイチャーが5体なんて……そんなの絶対ありえない……」
「何を今さら――」
ほとんど
「ほとんどの人間からすれば、カロン宮殿にいた者をすべて食らい尽くすなんてありえない
「くそぉぅっ! このバケモノがっ! あんま調子ぶっこいてんじゃねーぞゴラァーっ!」
ジャコンは右手をこぶしに握り、精神を集中させて青い指輪を力強く輝かせた。そして大地から噴水のように無限の
「バァカめぇーっっ! どんなに強いハイネイチャーでもっ! 手元にいなければ意味がないっっ! いまの無防備なおまえにぃーっっ! この数のアリどもを防ぐすべはないっっ!」
「……そうだな。たしかに
まるで津波のように襲いかかってくる膨大な数の
「しかし――
「なにぃっ!?」
その瞬間、ジャコンは仰天して目を丸くした。アムの背後の大地から
「なんだとぉーっ!? 自分ごと飲み込ませただとぉーっっ!?」
ジャコンは驚きの声を張り上げながら横に跳び、自分に向かって突っ込んできた大蛇の口をギリギリで避けた。しかしその直後、漆黒の剣を握ったアムが蛇の横腹から飛び出してきた。
「ぶぁっ!? バカなぁーっっ!?」
ジャコンは限界まで目を見開き、とっさに周囲の
「なっ! なぜだぁーっ! おまえはたしかにっ! あのハイネイチャーに
「……ムダな質問をするな。
アムはジャコンの前で足を止め、漆黒の剣を軽く振った。すると6体目の
「すべてを飲み込む闇の蛇を、攻撃と防御と移動に使う。それが我の編み出した魔法剣技――
「な……なんて無茶苦茶な……。そんな攻撃、防ぎようがないだろ……」
「ようやく悟ったか――」
アムは剣を天に向けて、ジャコンに向かって振り下ろす。そのとたん、他の5体の大蛇どももアムの周囲に集まってきた。
「さあ、ジャコン・イグバよ。そろそろ幕を閉じるとしよう。我が友を無残に殺したその因果、最大の恐怖とともにその身に刻め――。闇・死霊、第8階梯
「だっ!? 第8階梯魔法だとぉーっ!?」
アムが全神経を漆黒の剣に集中させたとたん、6体の
「……やれやれ。殺される覚悟もなしに、他人の命を奪ってきたのか。哀れな生き様だな、ジャコン・イグバよ――むっ?」
必死に逃げるジャコンを見ながら、アムは感情の消えた顔で呟いた。その直後、反射的に空を見上げた。何かが視界の隅に飛び込んできたからだ。すると、血のように赤く染まった空の彼方から、高速で飛翔してくる何かが見えた。それは青い刀と緑の刀を手に持った、2人組の少女だった。
「――ジャコンさん! これはいったい何の騒ぎ!?」
上空から一気に急降下してきた少女たちはジャコンの前に着地した。そして長い黒髪を頭の後ろで結わえた少女が慌てて声を張り上げた。
「敵だっっ!」
ジャコンも少女たちに全速力で駆けつけながら叫んだ。
「しかも俺たちじゃ絶対に勝てない相手だっ!
「わっ! わかったっ!
ジャコンに怒鳴られたとたん、金色の髪を頭の左右で短い
「……空を飛ぶ2人組。王位継承権者を暗殺した魔法使いどもか」
アムは遠ざかっていく3人の姿を見つめながら漆黒の剣を天に向けた。すると、アムの頭上で何かの形を成していた黒い光の粒が、長い筋を描きながら剣の先に集まり出した。そのとたん、離れた位置で控えていたクルースがアムの隣に駆けつけた。
「おいっ! アムっ! 今の2人組はまさかっ!」
「うむ。どうやらジャコン・イグバは、他の暗殺者とつながりがあったようだな」
「だったら見失う前に早く追いかけるぞっ!」
「その必要はない――」
今にも走り出さんばかりのクルースに、アムは淡々と言った。そして1歩前に出て、黒い光を集めた剣を赤い空に振り上げた。そのとたん、王都の上空に巨大な黒い五芒星が発生し、街中の影がうごめき出した。
「なっ!? なんだこれはっ!? おいっ! アムっ! おまえいったい何をしたっ!」
クルースは両目を見開いて石の広場を見渡した。6体の
しかもその新しい
「第8階梯魔法をキャンセルして、すべての魔力を
「数百って、おまえ……」
当たり前のような顔で答えたアムを見て、クルースは愕然とした。赤い空の上では無数の大蛇が暴れ狂い、ジャコンたち3人を足止めして襲いまくっている。さらに蛇どもが動くたびに街中の家々が倒壊し、破壊の轟音がひっきりなしに響き渡る。
「ダメだアムっ! 今すぐ蛇の召喚を中止しろっ!」
「断る」
破壊音に続いて人々の悲鳴や絶叫が
「ジャコンはメナのかたきだ。ヤツを確実に仕留めるまで、
「だからって王都を破壊してどうするっ! おそらくすでにかなりの被害が出ているはずだっ! スミンズさんのかたきを討つために、他の人たちを巻き添えにするなんて許されないだろっ!」
「かまわん。我が許す」
「ふざけるなっ!」
「ふざけてなどおらん。我にとって、友の命はこの国よりも重い。メナのかたきを討つためなら、王都の1つや2つが廃墟になろうとどうでもいい」
「ダメだっ! そんなことは絶対にダメだっ!」
クルースは声を張り上げながら剣を構えた。そのとたん、アムは軽くあごを上げてクルースを見た。
「ほう? 我に剣を向けるとは、なかなか思い切ったことをするではないか。たかが
「勝てなくても止めることぐらいはできるっ! ――
クルースは精神を集中して
「もう1度言うぞアムっ! 蛇の召喚を今すぐ止めろっ! さもないとっ! ボクも本気で全力を出すぞっ!」
「かまわんぞ。さっさと
アムはクルースに体を向けて、漆黒の剣を横に払った。
「このわからず屋がっ!」
「当たり前だ。理由もなく自分より他人を優先する人間など、この世には1人もおらん。この街の人間どもは我の痛みを理解しようとしないのに、どうして我が他人の痛みを理解せねばならんのだ」
「そんなことは決まっているっ! アムにとってスミンズさんが大事だったようにっ! 他の人たちにも大事な人がいるからだっ! そして今っ! 誰かにとって大事な人がっ! あの蛇どものせいで傷ついているっ! だからボクは止めたいんだっ!」
「……ふむ。それはたしかに一理あるな」
アムは剣を素早く走らせ、
「しかしな、クルースよ。我にとって
「ふざけるなっ! そんな一方的な契約解除なんてボクは絶対に認めないぞっ! とにかくっ! 今すぐあの蛇どもを止めろっ! これは命令だっっ!」
「命令か……」
クルースはさらに力を込めてアムに怒鳴った。そのとたん、アムは悲しそうに微笑んだ。
「か弱い人間の分際で我に命令するか……。まったく……。おまえは本当に、コンラッドによく似ている……」
アムはポツリと呟きながら顔を上げた。そして王都の上空で、無数の
「……いいだろう。ネンナ」
「――はい、お嬢様」
不意に声をかけられたネンナは、車椅子を押してアムのそばに近づいた。そして拾っていた赤い傘をそっと差し出す。アムはその傘を受け取り、漆黒の剣を静かに収めた。するとすべての
「求めるものが同じなら、道は
「コンラッド様のことですね」
「うむ。我に生きろと命令した、あのバカ者だ……」
アムはネンナに1つうなずき、車椅子に腰を下ろした。そして背もたれに寄りかかり、疲れた顔で遠い空に目を向ける。赤から紫色に変わり始めた空には、すでにジャコンたちの姿はなく、天空で小さな星が
「たしかに、自分のために他人が巻き添えになることを、メナはよしとしないだろう。ゆえに、今はメナの優しさに免じて引いておく――。それでよいな、クルースよ」
「……ああ。そうしてもらえると助かるよ」
穏やかなアムの声を聞いたとたん、クルースは安堵の息を1つ漏らした。そして剣を鞘に収め、車椅子に近づいた。
「悪いな。怒りを我慢させて」
「かまわん。我も少し遊びすぎたからな。次にヤツらと顔を合わせたら、即座に首をはねてやろう。……まあ、ヤツらの顔を見ることはもうないだろうがな」
「え? それはいったいどういう意味だ?」
「そのままの意味だ。――行くぞ、ネンナ。メナが我らを待っている」
「はい、お嬢様」
アムの指示で、ネンナはゆっくりと車椅子を押し始めた。そして広場の出口に向かいながら、アムはさらに言葉を続けた。
「求めるものが同じなら、道は
「それはまさか――」
車椅子の隣を歩くクルースは、ハッとしてアムを見た。
「そうだ。ジャコン・イグバに恨みを持つ者は我だけではない。メナのかたきは、メナの想い人に譲ってやるのも悪くはなかろう……」
アムは再び夜空を見上げ、呟くようにそう言った。そして、わずかに潤んだ瞳で遠い星を眺めながら、心をこぼした。
「最後の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます