第12章  プリンセスと天秤の剣――ライブラソード・イービルソード

第53話  プリンセスと天秤の剣――ライブラソード・イービルソード その1


・まえがき


■登場人物紹介


・カトレア・イストン  13歳

            クランブリン王国の王位継承権第9位の姫。

            プリンセス・カトレア。

            王国第3位の交易都市クラシンをまとめる、

            大貴族イストン家の長女。

            母のセレカ・イストンが、前国王サイラスの妹。

            セルビス・クランブリンが王に即位するはずだったので

            その即位の儀式に参列するために王都に向かっていた。

            しかし、セルビスを含めた王位継承権の上位7名が暗殺

            されたことで、カトレアが女王になる可能性が

            高まった。

            やんちゃで我がままだが、素直な性格。

            護衛についてくれた騎士のアルバート・グロックを

            気に入っている。



・アルバート・グロック  36歳

             白百合騎士団のナンバースリー。

             種族は狼牙族ウルフェン

             団長のバルト・ブレイデンの愛弟子。

             ブレイデン直伝の天秤剣ライブラソードの達人。

             社交性が高く、剣の腕も立つ実力者。

             18歳の時に、バルト・ブレイデンにケンカを売って

             ボコられた過去がある。それで改心して立派な騎士に

             なった。



***



 そこは深い森の中を貫く、幅の広い一本道だった――。


 背の高い木々が左右にうっそうと生い茂る薄暗い街道を、無数の騎馬が整然と並んで駆けていく。その騎馬隊の中央には、1台の白い馬車が走っていた。見るからに高貴な雰囲気を感じさせる豪華な馬車だ。馬車は騎馬隊に前後左右を守られながら、分厚い灰色の雲の下を一定の速度で進んでいく。そしてそのまま何事もなく走り続けていると、不意に馬車の窓が勢いよく開き、中から元気いっぱいの少女の声が飛び出した。


「アルバートぉーっ! アルバートぉーっ!」


(おやおや、またか……)


 少女の快活な声が響いたとたん、馬車の近くを走っていた騎馬にまたがる中年の騎士が思わず苦笑した。純白のマントをまとったその男は、馬の速度をわずかに落とす。そして馬車の窓から上半身を乗り出していた長い金髪の少女に近づいて返事をした。


「……あー、またまたお呼びですかな? カトレア姫」


「またまたお呼びよ、アルバート・グロックさまっ」


 騎士の言葉に、黒いドレス姿の少女は大きな目を細めて微笑んだ。そしてすぐさま青い瞳を輝かせながら言葉を続ける。


「ねぇねぇ、アルバートぉ~。王都まで、あとどれくらい? 10分? 5分? 3分? 1分?」


「そうですなぁ。この調子ですと……3時間というところですかな」


 アルバートは短い銀髪をかき上げ、木々の間から見える灰色の空を眺めた。するとカトレアはニンマリ笑い、さらに甘えた声でアルバートに言う。


「じゃあさ、じゃあさぁ~、アルバートの馬に乗ってもいい? 馬車の中でじっとしてるの、もう飽きちゃったぁ~」


「駄目ですよ、カトレア姫。慣れない者が馬に乗ると、すぐに尻が痛くなりますからな。自分なんかは馬より馬車に乗りたいぐらいですので、おとなしく座席で寝っ転がっていてください」


「やだっ! 馬車の中はつまんないっ! アルバートの馬に乗りたいのっ!」


「――うおっ!?」


 その瞬間、アルバートは思わず両目を見開いた。不満そうな声を張り上げたカトレアがいきなり馬車の窓枠に足をのせて、そのまま空中に跳び出したからだ。アルバートは反射的に腕を伸ばし、宙に飛んだカトレアの細い腰を両手でつかんだ。そして自分の前にそっと下ろして馬に乗せ、少女の小さな頭をコツンと叩いた。


「こら、カトレア姫。危ないことをしたら駄目ではないですか。もしも姫が怪我でもしたら、護衛を任された自分が団長に怒られてしまうんですぞ?」


「えっへへぇ~、だーいじょーぶよ、アルバート。そのときはわたしも一緒に、ブレイデンさまにあやまってあげるから」


 カトレアはアルバートの胸に寄りかかり、悪びれもせずニッコリと微笑んだ。その無邪気な笑顔を見下ろして、アルバートはもう1度苦笑した。


「まったく……。イストン家の姫君はやんちゃの盛りと聞いてはいましたが、まさかうちのシャーリーよりお転婆だとは思いもしませんでしたな」


「あ! シャーリーってアルバートの娘さんでしょ? うわぁ~、早く会いたいなぁ~。ねぇねぇ、アルバートぉ~。王都についたらシャーリーに会いにいってもいいかなぁ~? そして今夜はアルバートのおうちに泊まらせてぇ~」


「駄目ですよ、カトレア姫。今夜は満月ですからな。下手に近づくとシャーリーにガブリと食べられてしまいますよ?」


「ええっ!? ホントぉっ!? シャーリーの変身が見られるの!? うぅわぁ! やったぁーっ! 見たい見たぁーい! 狼牙ろうが族の女の子って見たことないからすっごくたのしみぃ~! きっとすっごくかわいいんだろうなぁ~」


「さぁて、それはどうですかな」


 無邪気にはしゃぐカトレアを見下ろして、アルバートは意地悪そうにニヤリと笑った。


「うちのシャーリーは純粋な狼牙族ウルフェンですからな。カトレア姫が想像しているより恐ろしい姿に変身するかもしれませんよ? 特にあの子の牙は、自分よりも鋭いぐらいですからな」


「うぅわぁ~! ほんとぉ!? シャーリーってアルバートより怖い顔なの!? すっごーいっ! 見たい見たぁーいっ! ちょーたのしみぃーっ!」


「いやはや、そこで喜ばれるとは予想外ですな……」


 アルバートは思わず小さな息を吐き出した。軽く脅かすつもりが、逆にカトレアの好奇心に火をつけてしまったと気づいたからだ。


「そこまで楽しみにされると、獣人の中でもっとも恐ろしいと言われている狼牙族ウルフェンとしては面目が立ちませんな」


「えぇ~、だってぇ~、アルバートが怖いのは顔だけだも~ん。心はすっごくやさしいから、わたしだいすき~」


「さようでございますか。それは光栄の至りでございますな」


 急に体をよじって抱きついてきたカトレアを見て、アルバートは微笑みながら肩をすくめた。するとカトレアは再び前を向き、アルバートに寄りかかりながら質問を口にする。


「それでね、アルバートぉ~。もしもわたしが女王になったら、王の盾にはアルバートを選んでもいいかなぁ~?」


「いえいえ。まことに残念ながら、それはできないことになっております」


「えぇ~? なんでぇ~?」


「女王の専属騎士は女性騎士と決まっているからです。それに我々白百合騎士団は、サイラス陛下をお守りする王室騎士団を務めましたからな。同じ騎士団から2代続けて王の盾を出すことはできない決まりになっております」


「なにそれ~? べつにいいじゃん、そんな変な決まりなんか守らなくても~」


「決まりは守るためにあるのです。それに国家というのは大勢の人間で成り立っておりますからな。重要な役割は独占せず、交代して引き継ぐことで1つにまとまっているのです。ですので、そんな変な決まりであっても、なくてはならない大切ないしずえなのですよ」


「ふーん、そうなんだぁ。なんだかよくわかんないけど、アルバートがそう言うのなら、きっとそうなのね」


「はい。そういうことなのでございます」


(おやおや。今度は意外にあっさり引き下がってくれたか……)


 こういうところで聞き分けがいいのは、人の上に立つ素質がある証拠かも知れないなとアルバートは思いながら、少しだけ不満そうに唇を突き出したカトレアを見て目元を和らげた。するとカトレアが馬のたてがみを優しくなでながら訊いてきた。


「それじゃあ、もしもわたしが女王になったら、だれが専属騎士になるの?」


「ふむ、そうですなぁ……」


 その何気ない問いかけに、アルバートは少しだけ思案した。


(カトレア姫は王位継承権第9位だが、上位7名の王子が暗殺された今となっては、事実上第2位の有力候補――。王座に就く可能性は低くないどころか、かなり高い。つまりここが運命の分かれ道というヤツか。まったく……。団長も面倒な仕事を押しつけてくれたものだ……)


 アルバートの知る限り、この質問を予想していた人間は3人いた。1人はアルバート本人。もう1人は白百合騎士団の団長バルト・ブレイデン。そして最後の1人は、青蓮せいれん騎士団を代表するコバルタス家の当主、ローガン・コバルタスだ。しかもローガン・コバルタスはバルト・ブレイデンを通して、をアルバートに頼み込んできた。だからこそ、アルバートは薄暗い道の先を見据えながらゆっくりと口を開いた。


「えー、それでは逆にお伺いしますが、カトレア姫はどのような人物がよろしいですか?」


「アルバートみたいなおもしろい人っ!」


「さようでございますか」


 剣を振るしか能のない自分のどこが面白いのだろうかと、アルバートは思わず心の中で苦笑した。そしてすぐにカトレアの興味を惹きそうな言葉を選びながら話を続ける。


「でしたら、青蓮せいれん騎士団のクレア・コバルタスがよろしいでしょう」


「クレア・コバルタス? その人って、どんな人?」


「そうですなぁ。一言でいいますと、少年みたいな女性ですな」


「えっ? なにそれ? 女の人なのに男の子みたいなの?」


 カトレアは思わずアルバートを見上げてパチクリとまばたいた。その好奇心が宿った青い瞳を見下ろして、アルバートはわずかに頬を緩めながら言葉を続ける。


「彼女は21歳の大人ですが、まるで育ち盛りの男子のように毎日激しい訓練をしていると有名ですからな。しかもその見た目はすべての女性騎士の中でもっとも美しいと評判でありながら、性格はまさに男そのもの――。食事の時は肉を手でわしづかみにして豪快に頬張り、大量のワインを飲んでは地べたに寝転んで眠りこけてしまうことがたびたびあるそうです」


「えぇっ!? お肉を手でつかんで食べちゃうのっ!? うっそぉーっ! なにそのひとっ!? 野蛮人!?」


「はは。さすがに野蛮人は言い過ぎだと思いますが、普通の人間とは異なる魅力を持っていることは間違いないでしょう。もしも興味がおありでしたら、一度お会いしてみますか? 百聞は一見にかずと言いますからな」


「うんっ! 会いたい会いたいっ! 野蛮な美人ってすっごく興味ある! 会うときはやっぱり、お肉をいっぱい用意しておいた方がいいのかな!?」


「そうですなぁ。上等の肉とワインとカトレア姫がいらっしゃれば、彼女もきっと大喜びするでしょう」


「うぅわぁ~、どうしよぉ~。アルバート以外にも、そんなおもしろそうな人がいるんだぁ~。王都に行くのがまたまた楽しみになってきちゃったぁ~」


「さようでございますか。楽しみが増えるのはよいことでございますな」


(ふぅ、やれやれ……。これで、カトレア姫にクレア・コバルタスを紹介する任務も、どうやら果たせそうだな……)


 小さなこぶしを握りしめて青い瞳を輝かせているカトレアを見て、アルバートはホッと小さな息を漏らした。すると不意に、前を走っていた騎士の1人がアルバートに近づき、ハンドサインで報告してきた。異常が発生したという緊急報告だ。アルバートも即座にうなずき、ハンドサインで指示を出す。そしてすぐに騎馬隊を停止させて、カトレアと一緒に馬を降りた。


「さて、カトレア姫。そろそろ雨が降り出しそうなので、馬車の中にお戻りください。体調を崩されますと、せっかくの王都を楽しむことができなくなりますからな」


「うん、わかった! アルバートもお尻が痛いなら、一緒に馬車に乗りましょうよ!」


「そうですなぁ。たしかにそうしたいところですが、自分はこの護衛隊の責任者ですからな。一番上の人間が仕事をサボると、部下たちも仕事をサボってしまいます。そうすると、王都に到着するのが遅れてしまいますが、それでもよろしいですか?」


「えっ!? それはダメ! アルバート! しっかりお仕事してね!」


 アルバートの言葉を聞いたとたん、カトレアは慌てて首を左右に振った。そしてにっこり微笑みながらアルバートにしっかり抱きつき、軽い足取りで客車の中へと駆けていく。


「やれやれ……。あの子は本当に守りがいのあるお姫様だな……」


 アルバートは苦笑しながらカトレアの細い背中を見送った。それからすぐに表情を引き締め、集まってきた3人の部下に体を向けて口を開く。


「――状況は?」


「はっ、報告します。この先2キロほどのところで、切り倒された大木が道を塞いでいます。そしてそこには5人の人影が見えました」


「待ち伏せか?」


「その正体不明の5人は木の前に立って並んでいました。我々を待ち構えているのは間違いないかと思われます」


「ふむ……。場所の選択は悪くない。しかし、日暮れ前に仕掛けてくるとは、ずいぶんと大胆なやり口だな……」


 アルバートは道の先に目を向けて顔をしかめた。それから2人の部下に目配せして指示を出す。


「よし。おまえたち2人は森の北と南に分かれて突っ切り、王都の警備隊に応援を要請しろ。目立つところに5人いるということは、見えないところにはもっと潜んでいる可能性がある。気をつけていけ」


 命令を受けた2名の騎士はすぐさま馬に飛び乗り、森の左右に駆けていく。


「……さて。敵は5名で、こちらは100騎。戦力差は歴然だが油断はできん。全員で一斉に攻撃を仕掛けるぞ」


 王都に伝令を走らせたアルバートは、前方を指さしながら言葉を続ける。


「まずは護衛隊の半数を先に走らせて突撃だ。その5人がどこの誰だかは知らんが、問答無用で斬り捨てろ。ただの一般人であろうと容赦はするな。そしてその大木を速やかにどかして突っ切るぞ。グズグズしていると左右から挟撃される恐れがある。スピード勝負だ。それではいくぞっ! 行動開始!」


 即座に作戦を立てたアルバートは、声を張り上げて両手を打ち合わせた。命令を受けた部下はすぐさま馬に飛び乗り、騎馬隊の半数に指示を飛ばす。同時に50の騎馬が速歩はやあしで走り出し、すぐに襲歩ギャロップで2キロ先の5人に向かって突撃していく。


 アルバートも素早く自分の馬に飛び乗り、残りの半数と馬車を先導して走り出す。そしてすぐに道を塞ぐ大木と、その前に立ち並ぶ5人の男たちの姿が見えてきた――。




「――おっほぉ~、マジできた! キタきたキタきたぁーっ!」


 森の中の一本道を塞ぐように倒れた大木の前で、緑色の髪の少年が興奮した声を張り上げた。その目は、怒涛どとうのごとく迫り来る騎馬隊の群れを遠目に眺めて輝いている。


「佐々木パイセンっ! 見てくっさいよ! あのが言ったとおり、お姫様を守る騎馬隊がまっすぐこっちに来るっすよ!」


 緑髪の少年は道の先を指さしながら、倒木の前に立つ5人の1人、長い黒髪の少年に顔を向けた。しかしそのとたん、黒髪の少年は不愉快そうに顔を歪め、足元に唾を吐いた。


「……ちっ。うっせーぞ、塚原。ンなもん見れば誰だってわかっだろ。ガキみたいにはしゃいでんじゃねーぞ、このボケがっ」


「うっす、サーセーンっした、佐々木パイセン」


 いきなり文句を言われた塚原はすぐに頭を下げて謝り、隣の2人にさらに訊く。


「そんで、佐々木パイセン、宮本パイセン。ボクチンとバッキーとムネはどうすりゃいいっすか?」


「ンなもん、決まってるだろ」


 今度は短い赤髪を逆立てた宮本が、あごを上げて口を開く。


「馬に乗って突っ込んでくるヤツらをイジロウがぶった切る。そして生き残ったヤツらを、オレッチとおまえたちで迎撃する。オレッチとイジロウは1人でじゅうぶんだから、塚原と滝沢と柳生はいつもどおり3人1組で戦え。敵の中には強いヤツもいるだろうが、塚原の妖刀があればなんとかなるだろ」


「うっす、りょーかいっす」


 塚原は即座にうなずき、スキンヘッドの滝沢と金髪ツインテールの柳生に目を向ける。すると滝沢と柳生もうなずき返し、迫り来る騎馬隊に顔を向けた。同時に佐々木が威勢のいい声を張り上げ、指示を飛ばす。


「いよーしっ! テメーらぁっ! 気合いを入れろぉーっ! いっくぞぉーっ! 七天抜刀隊しちてんばっとうたいっ! チーム汚闘股おとこぉーっ! 戦闘準備っ! 狙いはクランブリン王国第9位の王位継承権者――カトレア・イストンだっ!」


「「「「おうっ!」」」」


 人通りのない土の街道に5人の声が響き渡る。その直後、男たちは一斉に肩の留め金を外し、防寒用のマントを地面に落とした。そして順番に名乗りを上げながら、腰の刀を抜き放つ――。



「佐々木イジロウ、妖刀・黒光長竿くろびかりながさお、抜刀――」


「ムサイ宮本、妖刀・桃竹鳩宗ももちくはとむね、抜刀――」


「ボクチン塚原、妖刀・光陰裏卜珍こういんうらぼくちん、抜刀――」


「バッキー滝沢、妖刀・爆血村々ばくけつむらむら、抜刀――」


「柳生ムネニク、妖刀・満臭まんしゅう萌肉丸もえにくまる、抜刀――」



 黒、桃色、黄色、紫、赤――。色とりどりの妖刀が鞘から滑らかに抜き放たれ、薄暗い森の中に不気味な光がきらめいた。


 同時に佐々木が数歩前に進み出て、押し寄せる無数の騎士たちを見据えながら黒い妖刀を肩に構える。そして全身に強烈な殺気をみなぎらせた直後――必殺の斬撃を連続で撃ち放った。


「うおおおおおおーっ! いっくぞぉーっ! 次元剣ディメンションソードっ! 超必殺っ! ディメンションスラッシュ無限乱舞っ! つばめ返しっ! つばめ返しっ! つーばつばつばっつばつばつばつばっつばつばつばつばっつばつばつばめがえしゃあーっうおぉぉあらぁっしぇいうぉいゃあぁーっっ!」


 連光斬閃――。


 その瞬間、目に見えない無数の次元の刃が空間を瞬時に切り裂いた。同時に佐々木たち目がけて突撃してきた騎士たちが、その騎馬もろとも縦・横・斜めに切断された。


 騎士も馬も首が飛び、腕が舞い、足が大地に転げ落ちる。猛烈な勢いで突進していた人馬は雪崩のごとく土の道に崩れ落ちた。さらに噴水のように飛び散った大量の血が雨となって降り注ぎ、舞い上がった土煙を瞬時に消し去る。そして無数の死体から流れ出た赤い筋が地面に広がり、どこまでも静かに伸びていく――。


「ううううっひょーっ! しぃーんじらんねぇーっ! さっすが佐々木パイセンっ! ほんの一瞬で50人ぐらいぶっ殺したぁーっ! うおおおおーっ! すっげぇーっ! マジすげぇーっすっ!」


「……へっ、こんぐらい……はあはあ、よゆ……はあはあ……はあはあ……よゆうだぜ……はあはあ、はあはあ……」


 いきなり肉塊となった騎馬隊を見て、塚原が歓喜の声を張り上げた。すると佐々木は黒い妖刀を地面に突き刺してよりかかり、肩で荒い息を整えながら決め顔を仲間に向けた。しかし一気に剣を振り回したせいか、疲労で歪んだ顔からは大量の汗が流れ出している。その疲れ切った様子を見て、今度は宮本が肩をすくめながら佐々木の前に進み出た。そして道の奥から突っ走ってくる新たな騎馬隊を眺めながら口を開く。


「グッジョブだぜ、イジロウ。残りの敵はオレッチたちが始末すっから、おまえはしばらく休んでな」


「……へっ、こんなんすぐに回復すっから、テメーらは適当に遊んでこいや……」


「うぃっす! 佐々木パイセン! りょーかいっす! そんじゃあバッキー! ムネ! ボクチンたちも行くぞっ!」


 佐々木の言葉に宮本がうなずいたとたん、塚原も勢い込んで声を張り上げた。滝沢と柳生もすぐさまうなずき、宮本の隣に並び立つ。そして4人の少年たちは残りの騎馬隊に向かって一斉に突撃をかけながら、それぞれの妖刀の能力を解放した――。





***



・あとがき


本作品をお読みいただき、まことにありがとうございます。


参考までに、明日の投稿時間をこの場に記載いたします。


引き続きご愛読いただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。


2019年 1月 18日(金)


第54話 00:05 プリンセスと天秤の剣――その2

第55話 07:05 プリンセスと天秤の剣――その3

第56話 12:05 憂いの森の捜査班――

第57話 17:05 別れと祈りと涙の朝――

第58話 20:05 深き森と、遥かなる空の彼方――その1



記:2019年 1月 10日(木)

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