第51話  見送りの朝――サウス・ノース・ホワイトソード その2


 分厚い石の壁にはめ込まれた鉄格子の窓に、1羽の小鳥が舞い降りた――。


 それは黒い小鳥だった。灰色の雲の下、石造りの王都の片隅にあるハーブショップの窓辺で羽を休めた小鳥は、2度、3度と甲高い声で朝を告げる。すると薄暗い室内の長椅子で寝ていた少女が静かに目を覚ました。


 金色の髪をあご先で切りそろえた少女はゆっくりと体を起こし、小さなあくびを1つ漏らす。そして鉄格子のすき間で小さく跳ねる小鳥を見て、幸せそうに目を細めた。


「……うわぁ。異世界に転生して初めての朝が、小鳥の鳴き声で始まるのかぁ。なんかいいなぁ、こういうの」


 少女は心の底から嬉しそうに微笑みながら呟いた。それから両手と両足が動くことを確認して立ち上がる。そして流し台で顔を洗い、水を飲む。


 すると不意にどこからか音が聞こえてきた。何やら車輪らしきモノがきしむ音と、誰かの声だ。少女が慌てて顔を向けると、カウンターのある店の方から2人の人影が現れた。それは長い黒髪をポニーテールに結った少女と、金髪をショートツインテールに結った少女だ。木の台車を押して、子どもの背丈ほどの樽を重そうに運んできた2人は、薄暗い部屋で突っ立っていた少女を見たとたん首をかしげた。


「……え? あんた誰?」


「お、おはようございます。ボクはポーラです。ポーラ・パッシュと申します」


 黒髪の少女にじろりとにらまれた金髪の少女は、慌てて姿勢を正して返事をした。すると紫色のリボンで髪を結った2人の少女はキョトンとした表情で顔を見合わせ、それから1つうなずいた。


「なるほどね。転生者ハービンジャー領事館コンスレトにいるってことは、あんたも私たちと同じ転生者ってことね」


「は、はい。昨日転生してきたばかりです」


「あっそ。じゃ、私たちの後輩ね。夢と希望にあふれる異世界にようこそ――っと」


 黒髪の少女は淡々とそう言うと、再び台車を押し始める。そして壁の棚の空いているところに木の樽を押し込んでから、手についたほこりをはたき、ポーラの方に顔を向ける。


「えっと、私はヨッシー皆本。こっちの子は――」


「フウナ数見かずみだよん」


 ショートツインテールの少女はにこやかに微笑みながら、ダブルピースでポーズを決めた。その横でヨッシーは、壁の棚にズラリと並んだ膨大な数の樽を眺めながら口を開く。


「えっと、私たちは七天抜刀隊しちてんばっとうたいというギルドのメンバーで、私が一応ギルマスだから。とりあえずよろしくね。……というか、なにこの樽? 多すぎじゃない?」


「よろしくねん、ポーラちゃん」


「は、はい、よろしくお願いします」


 軽く手を上げて自己紹介した2人に、ポーラは慌てて頭を下げた。するとヨッシーはポーラを振り返り、疲れた声で言葉を続ける。


「……といっても、私たちはこれからすぐにダンジョンに行かなきゃいけないんだけどね……」


「ほんと……なんだかブルーだよねぇ……」


「え? え?」


 なぜかいきなり棚に手をつきガックリと肩を落とした2人を見て、ポーラは呆然と目を丸くした。


「しかも、うちのバカどものことをそれとなーく見張ってもらおうと思って頼みに来たら速攻で断られたし……」


「そのうえいきなり、昨日届いた樽を奥に運べとか命令されちゃったし……。ほんと、マジでブルーだよねぇ……。なんなの、あのオッサン。この店にある7枚のゲートコイン、全部盗んで捨ててやろっか……」


「え? え?」


 さらに暗い表情でブツブツと呟き始めた2人を見て、ポーラは心の底から困惑した。すると不意に、店の方から低い男の声が飛んできた。


「――おーい、おまえらっ。樽を運び終わったらさっさと出ていけっ。グズグズしないでキリキリ働くんだぞっ」


「くそ……ほんと何なのよ、あのオッサン。ゲームマスターだからって調子に乗りすぎでしょ……。大人ってほんと、自分勝手なんだから……」


「ほんと……ガチでブルーだよねぇ……」


 男のつっけんどんな指示を耳にしたとたん、2人の少女は般若のような顔をした。そして険しい表情のままポーラに向かって力なく手を振り、すぐにハーブショップから出ていった。


「あ、あのぉ、ザジさん。今の人たちは……?」


 つられて店の前の狭い通りまで出たポーラは、トボトボと北に向かっていくヨッシーとフウナを呆然と見送った。それから店内に戻り、短い黒髪の中年男性に質問した。


「ん? ああ、あいつらはおまえと同じ転生者だ。ちょっと北のダンジョンまでお使いを頼んだのさ」


 カウンターの奥の椅子に座っていたザジは、ぼさぼさの黒髪をかき上げながら答えた。そしてカウンターに置いていた2つの包みの片方をポーラに差し出した。


「それより、ほら、朝飯だ。ここを出ていく前に食っておけ」


「あ、ありがとうございます……って、え? これ、もしかしてホットドッグですか?」


 紙の包みを開けたとたん、長いソーセージが挟まったパンを見て、ポーラは再び目を丸くした。


「まあな。俺が食べたかったから現地の人間にレシピを教えて作らせたんだ。ケチャップとマスタードソースを再現するのにかなり手こずったが、けっこうイケるぞ」


「うわぁ……まさか異世界での初めての朝ごはんがホットドッグだなんて、なんだかちょっと面白いです」


「こっちで長く暮らしていると、たまーにこういうファーストフードが食べたくなるんだよ。ま、俺は毎日食ってるけどな。……それよりおまえ、さっきの2人には気をつけろよ」


「えっ? それって、ヨッシーさんとフウナさんのことですか?」


 ポーラはホットドッグを持ったまま、パチクリとまばたいた。そんなポーラに、ザジは淡々と言葉を続ける。


「そうだ。本気で静かに暮らしていきたいのなら、あいつらとは付き合わない方がいい。あいつらはセブンルールの意味をはき違えているからな」


「はき違えているって、それはどういう意味ですか……?」


「ルールってのは、最低限度のラインって意味だ。つまり、ルールのギリギリを生きるヤツってのは、その時点でもう心が腐っているんだよ。わかりやすく言うとだな、ルールを守ろうと考えるヤツと、ルールさえ守ればいいと考えるヤツとでは、品性に天と地ほどの差があるってことだ」


 ポーラに話しながらさっさとホットドッグを食べ終えたザジは、包み紙を細長くたたみ、丁寧に結んだ。それから熱い茶をすすり、ホッと1つ息を吐き出す。


「……ま、今のは俺個人の考え方だからな。セブンルールさえ守れば、おまえやあいつらがどんな人生を歩もうがそれは自由だ。それと、この世界で生きていくために必要な知識は一通り教えたが、何か困ったことがあったらいつでもこの店に来い」


「……はい、わかりました。いろいろと教えていただき、ありがとうございました」


 ポーラは真剣な顔でザジの話に耳を傾け、丁寧に頭を下げた。それからゆっくりとホットドッグを食べて、茶を飲み干す。そして再びザジに礼を述べてから、店を出た。するとザジも表に出てきて、灰色の空に目を向けながら口を開く。


「……俺はゲームマスターとしてこっちの世界に転生してきたから、いろんな転生者の面倒を見てきた。そのほとんどがアホなガキどもだったが、おまえは比較的まともな方だ。だからその分苦労することも多いだろうし、見知らぬ異世界で生きていくのはけっこう厳しいだろうが、ま、適当に頑張れ、ポーラ・パッシュ」


「……はい。前の人生みたいにならないよう、頑張って生きてみます。いろいろとお世話になりました」


 新たな人生の旅立ちを見送りに来たザジの言葉に、ポーラは瞳を潤ませながら深々と頭を下げた。そしてザジに背中を向けて、目元を拭いながら未来への第一歩を踏み出した。




「――よーし、それじゃあ、記憶喪失のふりをして警備兵に保護してもらって、家族を探して呼んでもらう作戦を実行する前に、ちょっと街の中を散歩しようかな」


 ザジのハーブショップをあとにしたポーラは、一番近くにある広場に足を向けた。そして興味深そうに周囲の露店や屋台を眺めながらさらに南にまっすぐ進み、王都で最も大きな中央広場についたとたん、思わず感嘆の声を漏らした。


「うわぁ……なにこれ。ものすごい人の数……」


 夜が明けてから数時間後の中央広場には、すでに無数の露店や屋台がところ狭しとのきを連ね、朝食や買い物に来た客でごった返していた。


 大通りの端から端までズラリと並んだ露店には、新鮮な肉や魚、野菜や果物、チーズや香辛料、茶葉やコーヒー豆、古着や生活雑貨など、ありとあらゆる商品が置いてある。広場を囲むように並ぶ屋台には、パンやスープ、焼肉や焼き魚、味付けの総菜をのせたライスなど、様々な種類の料理があり、どこの店にも大勢の客が詰めかけて朝食をとっている。


「これってなんか……お祭りみたぁい……」


 広場を歩いて各種の屋台をのぞくポーラの瞳は輝いていた。ただ見て歩くだけでも人々の熱気と活気が押し寄せるように伝わってきて、胸の奥が熱くなる。


「すごぉい……異世界ってドキドキする……」


 とりあえず、ごった返す人混みの中を通り抜けたポーラは、中央広場を囲む石の建物の1つに近づき、小さなカフェにおそるおそる足を踏み入れた。そしてテラス席に腰を下ろすと、注文したフルーツジュースを半分ほど一気に飲んだ。それから制服の上着の内ポケットから大きめの財布を取り出し、中に入っていた11種類のコインをテーブルに並べて目を落とす。


「えっとぉ……鉄、青銅、赤銅、銀、金の順でコインの価値は高くなる。それで、1番価値があるのは星の模様のこの金貨で、金額は2,000ルーン。これは日本円だと20万円に相当するけど、この世界の物価は日本のおよそ3分の1だから、実質的には60万円の価値がある――。こんな高価な金貨を3枚もお財布に入れているってことは、ポーラさんはかなりのお金持ちってことだよね……。どうしよう。もしかしたら今度の人生、けっこうイージーモードかも……」


 しっかりとした存在感を放つスター金貨を見つめながら、ポーラは思わずテーブルの下で白いこぶしを握りしめた。それからすべてのコインをそそくさと財布に戻し、内ポケットにしっかり突っ込む。そして残りのフルーツジュースをちびちびと飲みながら、今後の人生について考えた――。


(……今日からボクはポーラ・パッシュだ。しかし昨日のお昼から、ポーラは家に帰っていない。きっとポーラの家族は心配しているはずだ。だからボクは道で転んだショックで、名前以外は思い出せなくなったということにしよう。それで警備兵に保護を求め、家族を探して呼んでもらう。そして家族の元に戻ったあとは、周りの人間の反応を見ながら言動を調整するんだ。演技にはあまり自信がないけど、大丈夫、きっと何とかなる。この体は間違いなくポーラ・パッシュの体だし、ボクにはもうポーラ・パッシュとして生きていく以外に道はない。それに、何といっても今のボクにはこれがある――)


 思考を巡らせながらポーラは心臓の上に手を当てて、力強くうなずいた。


転生武具ハービンアームズ――進化ハートビート・心臓エボリューション。そう。これさえあれば、生きているだけでボクの能力値はどんどん上がっていく。ザジさんも言っていたとおり、1年もすればはく天位クラスになれるし、10年後には自動的に人類最強になるはずだ。そうなれば、もはや怖いものは何もない――。ボクの静かな生活を邪魔する者は、すべて燃やして灰にして、庭にまいて泥にしてやる。そうしてボクはゆっくりと年を取り、幸せに死んでいくんだ……。ああん、どうしよう。異世界転生ってすごすぎる……。もぉ、未来が明るすぎて目がクラクラしちゃいそうだよぉ……)


 ポーラは薄暗い灰色の曇天を見上げながら、ニマニマと微笑んだ。すると不意に、その視界が黒く陰った。誰かがいきなりポーラの顔を横からのぞき込んできたからだ。


「――ああ、ポーラ。よかった、無事だったのね。昨日は寮に戻ってこなかったから、心配して探していたのよ」


「えっ?」


 椅子に座っていたポーラはパチクリとまばたいた。そして声をかけてきた人物に視点を合わせて見てみると、それはポーラと同じ年頃の少女だった。さらりとした長い黒髪を持つ、優しげな微笑みがよく似合う美少女だ。


「ポーラ? どうしたの? 大丈夫?」


「……え? あ、うん」


 突然のことにポーラが呆然としていると、微笑んでいた少女は心配そうに眉を寄せて首をかしげた。


(う、やばい、どうしよう……。いきなり知り会いに見つかっちゃったみたい……)


 ポーラは自分と同じ制服を着た少女を見ながら、思考をフル回転で働かせた。


(えっと……とりあえず、名前を呼ばれて返事をしちゃったから、ボクが自分の名前をわかっていることはバレている。だけど、どうしよう……。名前以外の記憶がないって主張するのが元々の計画だったけど、今さらながらそれはちょっと厳しいような気がしてきた。そんなご都合主義の記憶喪失なんて、本当に通じるのだろうか……?)


「ポーラ? あなた、本当に大丈夫? 何だかぼーっとしているけど、どこか具合でも悪いの?」


「え? えっと、あの、その……」


 黒髪の少女がさらに心配そうな顔で声をかけてきたので、ポーラは反射的に両手で口元を隠し、特殊スキルを発動した。


(ス……ステータス・オン……)


 相手に聞こえないほどの小声で呟いたポーラは、すぐに少女の頭の横に目を向ける。そして少女のステータスを素早く見ながら返事をした。


「あ、あの、その、うん、大丈夫。えっとぉ、ごめんね、アイナ……。なんか心配かけちゃったみたいで……」


「ううん、ポーラが無事ならそれでいいから」


 ポーラの言葉を聞いた黒髪の少女はホッと1つ息を吐き、それからにっこりと微笑んだ。


「それじゃあ、ポーラ。何があったのかは知らないけど、早くソフィア寮に戻りましょう。寮監のシスタールイズや他のみんなも心配して探していたから、顔を見せて安心させないとね」


「う、うん、わかった」


 ポーラはすぐにうなずき、料金を払ってカフェを出た。そしてアイナと一緒に南東の細い路地に向かって歩きながら、おずおずと口を開く。


「じ、実はね、アイナ。ボク……わたし、その、昨日ちょっと転んじゃって、頭を打ったみたいなの。それでちょっと名前以外の記憶があいまいになっちゃって、寮に戻ることができなかったんだけど……」


「ええっ!? そうなの!? 記憶がなくなるなんて大変じゃない!」


 ポーラの話を聞いたとたん、アイナは目を丸くした。


「それじゃあ、自分の名前以外は思い出せないの? でも、私のことはわかったんでしょ?」


「あ、うん、アイナのことは、顔を見たら思い出せたみたい」


「そうなんだぁ。よかったぁ。それじゃあ寮に戻ってみんなの顔を見たら、いろいろ思い出せるかもしれないわね」


「そ、そうだね。そうだといいけど……」


(よし……。顔を見たら思い出せたっていうのは、我ながら上手い言い訳ができた……)


 ポーラは心の中で安堵の息を漏らした。するとアイナが自分の顔を指さしながらポーラに訊いた。


「それじゃあ、ポーラ。私のことをどれくらい覚えているか試してみて。私の苗字はわかる?」


「え? 苗字? えっと……アイナの苗字は、ルーラン……だよね?」


「そうそう、正解。その調子だと、けっこう思い出せそうね。私の資質と職業は思い出せそう?」


「し、資質と職業? それはえっと、たしか――」


 ポーラは再びアイナの顔の横に目を向けた。そしてアイナのステータスをすばやく見ながら言葉を続ける。


「資質は騎士と戦士で、職業は騎士……で、あってる?」


「ええ、当たっているわよ。それじゃあ最後に、私の種族は覚えている?」


「へっ? しゅ、種族? 種族って、えっと……」


(ええ? なにそれ? 種族ってどういうこと? 人間じゃないの? 人間以外の種族がいるなんて、ザジさんから聞いていないんだけど……)


 訊かれたとたん、ポーラは混乱して焦りながらアイナのステータスを凝視した。そして視線を上下させてステータス画面をスクロールし、隅々まで目を通す。その直後、種族の欄を見つけたとたん、ポーラは思わずパチパチとまばたきした。


「アイナの種族は……えっとぉ、その……」


「あら、やっぱり思い出せない?」


「う、ううん。えっと……竜印りゅういん族のドラゴニアン……で当たってる?」


「はい、正解。よかったぁ。ちゃんと思い出してくれたのね」


「う、うん。なんとか思い出せたみたい……」


 嬉しそうに微笑んだアイナに、ポーラもぎこちない笑みを返す。そしてポーラはそっと横を向き、静かに長い息を吐き出した。


(ふ~、セーフ……。なんとかじょじょに記憶を取り戻した記憶喪失のふりができた……。というか、さすが異世界。まさか人間そっくりなドラゴニアンなんて種族がいるとは思いもしなかったよ……。だけど、どうしてザジさんは教えてくれなかったんだろ……って、あ、そうか。ガイダンスの時間があまりなかったから、生活に必要な情報以外は割愛かつあいしたってことか……)


「――あら、ポーラ。学院にはこっちの方が近道よ?」


「ほえっ?」


 不意に後ろから声をかけられて、ポーラは反射的に首だけで振り返った。するとアイナが斜め後ろで立ち止まり、横の狭い道を指さしている。


「ご、ごめんね。ちょっとぼーっとしてたみたい」


 考えに没頭していたポーラは、アイナが足を止めたことに気づかなかった。ポーラはすぐに回れ右して引き返し、アイナと一緒に横道に入っていく。


「大丈夫、ポーラ? やっぱり道の方はまだ思い出せそうにない?」


「う、うん、そうみたい……」


 アイナに訊かれて、ポーラは慌ててうなずいた。


「そうなんだぁ。でも安心して、ポーラ。道なんて忘れても、またすぐに覚えられるからね。さあ、お先にどうぞ」


「あ、うん、ありがと……」


 急に道幅が狭くなったので、アイナはポーラを先に促す。ポーラはアイナの前に出て、ゆっくりと進んでいく。するとすぐに少し広い場所に出たが、そのとたんポーラはぴたりと足を止めた。そして周囲を軽く見渡し、首をひねる。そこは大きな家に挟まれたスペースだったのだが、道の先には幅の広い水路しか見当たらず、行き止まりになっていた。


「……あれ? アイナ? ここ、行き止まりっぽいんだけど……?」


 ポーラはゆっくりと振り返り、後ろの暗がりに立つアイナを見た。するとアイナはにこりと微笑み、口を開く。


「いいえ、ポーラ。行き止まりなんかじゃないわよ? だってほら――」


 その瞬間、アイナは腰の剣を抜き放ち、ポーラの首を斬り飛ばした。


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