Act.55 火蜥蜴と黒妖精 切なる逃走の物語
時は〈
さらにそこから僅かの時を挟み、
当時は先の未曾有の危機により、乱れきっていた国々の治安も落ち着きを取り戻し――それはまさに英雄隊の活躍の賜物と、世界各地の至る所から賞賛を送られていた。
しかし――
――悲しき歴史は、連綿と繰り返される――
その記述はあらゆる文献の
それが最初に巻き込むは弱き者共の住まう場所――
当時すでに魔導機械文明が
「よいか!ワシが奴らの注意を引く――その隙に何としてでも、お主はサリュアナを連れて逃げるのじゃ!」
「ファッキン!この老いぼれがっ……てめぇ一人に任せて逃げたんじゃ、この
「そうサリ!じっちゃまだけおいて逃げるなんて――あーしには出来ないサリっ!」
「ったく、この頑固親父がっ!さっさと行けと言っておろうに――」
「それはてめぇだぜファッキン、この頑固じじいっ!」
「パパもじっちゃまも、ケンカはダメサリ!皆で逃げるサリっ!」
世界の混乱に乗じた勢力の一部にて、廃れた世界でのし上がるための魔導機械導入を急かす国々……が、世界でも列強の最上位に位置する
弱小を甘んじて受け入れて来た国々の一部が目に付けたのは、精霊を強制的に支配下へ置き……そこから搾取した
それは魔導や精霊と供に発達して来た魔導科学文明と言う、新時代の新たな文明基盤を悪用・乱用する
その事態を想定した
「この愚か者がっ!あ奴らは、人として手にすべきではない物へ手を伸ばそうとしておる!ここでお主らを捕らえさせるなど……このワシにとっては己の死よりも辛い絶望――」
「最愛の友人であるお主らへ、絶対あの愚か者共には手出しさせんと誓ったのじゃっ!」
弱小国家でも卑劣な手口で有名ななりあがり国家。
その軍隊を前にただ一人、盟友であり戦友でもある
が――如何に黒妖精が英雄隊と呼び声高き冒険者であったとしても、たった一人で精霊親子を守りつつ戦うは無謀とも言えた。
それでも――
「我は〈
「やめろっってんだよ、この老いぼれがっ!俺達のためなんかに、てめぇが命懸けてんじゃねぇぞこらっ!このファッキン野郎っっ!!」
襲い来る欲望に塗れた
やがて
∫∫∫∫∫∫
泉のほとりに佇む一軒の丸太小屋。
かく言う伝説級の偉人殿が現在住まう場所にて、私達はその招きを受け……情報提示を受ける事になったのですが——
「どうじゃ、泣ける話じゃろう?そしてワシは暫く人里から身を隠して、
「唐突に話し始めた思たら昔話かいな。まぁそれはええとして――」
「むっ?残念精霊とやらは、ワシの身の上話がお気に召さぬと――」
「言うたな!?このショタジジィ、ウチの事残念言うたなっ!?ミーシャはんならまだしも、初対面の妖精さんからそんな
「ばっ!?しーちゃん、止めないか!?この方は現皇帝陛下とも――ちぃ!テンパロット、籠をっ!」
「アイっ、マムっ!」
「のわあーーっ!?ここで籠とかっ、止めんかいなーーっ!?」
直前のお涙頂戴話の重さが一気に吹き飛ぶいつものバカ騒ぎ。
しかし今回ばかりは面倒な方へ限りなく突き抜ける事態に、さしもの私も残念な精霊さんをガチで籠に閉じ込めるも待ったなしです。
「……そんな……。ミーシャはん――マジでウチを籠に閉じ込めるやなんて……。」
「ふぅ……シフィエールよ。流石に今回は、
「……ふぇい。」
「ジーンさんの言う通りだね。今日ばかりは私も本気を出させて頂いたよ。では改めて――」
「リド・エイブラ殿、重ね重ねの無礼をご容赦願います。」
「堅いのぅ……まあ今までの精霊を
自業自爆で籠の鳥ならぬ籠の精霊となった残念なしーちゃん——て言うか、その籠は
そんな籠相手なら実体を自在に変化させられる精霊であれば、抜け出そうと思えばいくらでも抜け出せるはずなのに……それをしない所を見ると結構それなりに反省してる様で——
嘆息の中可愛い所もあるじゃないかとしーちゃんを一瞥しつつ、すでにいくら重ねたか分からぬ非礼を皇帝陛下の家系に関わる偉人殿へ謝罪として明示します。
そして——重要なのはここから。
リド卿が語った昔話に確実に入り込んだ
それはまさに今私達が得んとする情報に他ならず、
思考に描いたままを私は卿へと問う事にします。
「リド卿……あなたがこの様なタイミングで、私達の実力を見定めんとした経緯——やはりそこには皇子殿下からの依頼などが絡んでおいでなのでしょうか?」
かく言うテンパロットにヒュレイカも、すでに察した様に卿へと視線を送り——それを受け平然とした面持ちの卿が……事の詳細真相へと踏み込んで行く。
「いかにもじゃ。ふむ……あのひよっ子が気をかけるのが分かった気がするのぅ——鋭き観察眼、ワシが
と、眼前の見た目ショタジジイな伝説の偉人殿へ……畏怖のあまり萎縮していると——
彼が下げた声のトーンで放ったのは……予想もしない言葉だったのです。
「あの頑固親父と小さきお嬢も……お主達の様な者にならば、任せられるやも知れんの。と言う事でここからは、ワシ立っての頼みじゃ——」
「ワシもできうる限りの支援を惜しまぬゆえ、どうか悲しき定めに翻弄された
そして……伝説に
同日——
すでに夜の
偉人殿同行の元、まずはその
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