Act.18 メイド喫茶タイニー娘
【食堂バスターズ】の名を欲しいままにした?私達が訪れたのは、異大陸のカルチャーとして有名な喫茶店のチェーン店――ささやかな興味から来る誘惑に負け足を向けました。
そしてその喫茶店で私達と、あの少女は邂逅する事となるのです。
「ちょうどいい!ここで会ったが――」
「さっさとしょっ引いて、フェザリナ卿の下へ――」
「ちょっと!?ここは喫茶店よ!?何得物抜こうと――」
先日辺境の街タバックを出る際、長期的な依頼上で受けた次の依頼――この白黒さんの動向を探り、場合によっては強制捕縛も持さない内容を……フェザリナ卿より受けていたのですが――
注釈として少女に脅威が感じられない――或いは捕縛を強行した際、無用の被害が増大するならば泳がせても良い……と言う点も加えられていました。
の――はず・なの・に――
その依頼内容を、注釈まで同行し聞き及んだはずの二人のおバカが……その身に携える得物を今正に抜き放とうと手を掛けたのを視認します。
同時にピクリと動いた私な眉根へ、静かなる憤怒を
「ああ……私は今――猛烈にお腹が空いたね!いやぁ、すぐにでもお料理を食さないと……この手に
「――まさか、その私の空腹を助長する様な……それこそここを破壊するなんてバカな真似をする輩は、私の身内にはいないはずだけどっ!?どう思うかい!?テンパロット……ヒュレイカ!」
うん――得物に手を掛けた二人が、プルプルと震えるその手でメニューを取ったね。
そしてカタカタと言う音が二人の口元から漏れ出すと――
「……さ、さぁ~何を頼もう――かなぁ~。ああ、オレもと~~ってもお腹が空いたぜ?まさかミーシャの空腹をこじらせるような真似――オレ達がする訳無いよな~~ヒュレイカ?」
「そ、そそそそうよねぇ~~。そんな事この私達がする訳は……無い訳なのよね~~……――」
恐怖を目が訴えるおバカ二人に、いつもの事ながら失礼な扱いと立腹が頂点を穿ちそうになるも……ひとまずこの場を、破壊の惨状に巻き込まないで済んだと胸を撫で下ろした私。
するとその私に掛けられる声が——なんと本来店側……被害者となりかねない人物までもが、失礼極まりない言葉の羅列を恐怖に
「ももも、申し訳ございません……でした!ご主人様!ここ……こちらも、至らぬ部分があったかも知れなくもなかったりりりr——」
「……白黒さん。この場合君は被害者だからね?て言うかその恐怖に
「ひぃぃ!?失礼がいたましたっっ!」
最初の威勢が電光石火で消え失せた白黒少女が、もはや語尾を支離滅裂な絶叫で括りつつ——おずおずと注文を聞く体制へ移行しました。
その白黒さんをみる限りでは、驚異など欠片も存在しない訳で……寧ろ我が身の生活路銀でも手にするためプライドすらも
しかしよくもまあこの様な店に――
違うね……このお店で働く方達は、メイドと言う仕事に己の全てを賭けている者も居るのを知っている。
そこには間違いないなく、プロとしての誇りが宿っている事実——少しこの様なと表現した自分に自重の念を宿しておこう。
「それじゃあ気をとり直して、私はこのスペシャルメニュー ——⌘ 愛情タップリ メイド式オムライスにゃん☆ ⌘にしようかな?」
「そしてこのスペシャルサービスの、⌘ メイドの美味しくなるおまじない
と口にした私の視界へ、明らかに引き
「……か、かしこまりぃ☆ではご注文を繰り返しま~~すぅ……愛情タップリメイド式オムライスにゃん☆ 一点に、スペシャルサービスの……サービスのの、の——」
「め……メイドの美味しくなるおまじない
——盛大に噛んだ。
そしてやってしまったとばかりに、沸騰した赤面を手にしたメニューメモで隠した〈オリリンにゃあ☆〉——
あれ?何だろう……今胸の辺りがズキュン!と撃ち抜かれた様な——そんなまさかこの私がと、血迷った思考に惑わされていたら……——
「ミーシャ……一つ質問いいかしら?」
「な、何かな(汗)?」
隣の椅子へ座ったオレンジツインテが、あるまじき真顔で質問を投げて来たので……ちょっと引きつつ返答したのですが——直後のセリフで、私の血迷いはほんの些細な物と痛感してしまいました。
「ここのメニューに、〈メイドお持ち帰りにゃん☆〉って無いのかな!?」
「無いよ!何言ってるんだ!君はやはりおバカなのかな!?そもそも白黒さんは敵だろう……血迷うのも大概にしないか!!」
ご丁寧に「にゃん☆」まで付けて、さもメニューに存在してるかの様に叫んだけどね?
それはかなり、如何わしいお店と化してしまう点でもいろいろアウトだよ?分かってるのかなこのおバカは(汗)。
しかしそのやり取りの中、このお店に於ける致命的な点へ……遂に気付いてしまった私——これは由々しき事態と〈オリリンにゃあ☆〉へ注文では無く……クレームを申し立てるために憤怒のまま命令を出した。
「〈ハートの狙撃手〉さんよ!ちょっとここの店長さんへ物申したい事を発見した……すぐに店長を呼び出して貰えるかい!?」
バンッ!とテーブルに手を叩き付け……ガラにもなく声を張り上げた私は、賑やかだった店内で流石に沈黙と共に注目を浴びるも——そんな事はお構い無しに、〈ハートにゃあ☆〉を睨め付けた。
「ひぃいいっ!?すいません、もうしません!すぐに呼んで参ります、ご主人たまーーっっ!!」
私の視線できっとちびりかけたであろう〈ハートのオリリン〉は、自分が何かしでかしたのかと錯乱しつつ——またも語尾を噛み噛みしながら店長の元へと走り去った。
その一連の事態を目にしたツンツン頭でさえも——
「……いや、ミーシャ?何があったかは分かんねぇけどよ……その——もうちっと穏便に——」
こちらも珍しいほどにオドオドキョドりつつ、私を制そうとするも——ここは〈アカツキロウ〉のカルチャーにおいて他に譲れぬ見識を持つ身としては、絶対に引き下がる訳には行かない私は……——
「君は黙ってるといいよ!?」
「うひっ!?悪かったっっ!」
一喝し……そしてその気迫で、漆黒のアサシンで狂犬さんが恐怖で縮み上がった。
「あ、あの……お待たせしましたにゃん、ご主人様!私はこの【タイニー娘】の店長兼メイド長……〈永遠の17才 ララァ〉ですにゃん☆この度は何かこちらの——」
程なく現れたのは店長であり、メイド長の女性——名札でララァと名乗るこの方が、私のクレームを聞きに来た割にはプロ根性できっちり自己紹介をこなしますが——
「自己紹介は後で構わないよ!それに何なのさ永遠の17才って!?——て言うか君に突っ込むために呼んだんじゃ無いんだよ!いいかい——」
「にゃん☆や、にゃあ☆と言う割には……メイドの誰一人——猫耳と尻尾が付いていないじゃ無いかっ!!?」
そして——静寂。
直後……「あっ!?」と叫んだ店長兼メイド長。
さらにその声に反応した客達が、周囲を見渡し「「「あっ!?」」」と各々に叫んだ。
その状況下……最後に店内で働く
「この〈アカツキロウ〉のカルチャーにおける見識では、アグネス王国でも右に出る者のいないこの私——ミシャリア・クロードリアを侮って貰って困るね!」
「直ぐにでも、猫耳と尻尾アクセを準備して来るといいよっ!!」
「し……失礼しましたーーーっっ……にゃん☆」
そうして……にゃん☆を口走る上では決して欠かしてはいけないマストアイテム——猫耳と尻尾アクセが半ば強引に準備される事となり——
その点に対してこのカルチャーを愛して止まないお客達も、私に共感する者が続出——気が付けば私達のテーブルに人だかりが出来ていた。
「あの!俺ら〈アカツキロウ〉は行った事無いけど……さっきの意見は、賛同以外に浮かばなかったよ、お嬢ちゃん!」
「ぼぼ、ぼくはちょっとメイドさんに違和感がある様な……って思ってたんだけど――それが猫耳だって、言われるまで気が付かなかったよ!」
「異大陸の文化に詳しいって——お姉さん、是非私にも〈アカツキロウ〉情報を教えて下さい!」
「ああ……まあ注文の品が届くまでならば構わないよ?流石にお腹のワーニングを見過ごす事は出来ないからね——」
少々
それを見やる対照的な二人——話していなかったとは言え、まるで神降臨!と言わんばかりの視線を送るオレンジツインテに……もはや蔑みの視線で、この店内すら異空間に思えてるであろう精気の抜けたツンツン頭。
猫耳装備と注文した食事が届くまで、他のお客様との同郷の友の様な……至極の時間を過ごした私なのでした。
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