「先輩!あ、あいらぶゆー!」 「俺は白身派だから」
雪純初
先輩に告白した·····筈なのに!?
#Side
私、“庭鶏 卯月”は一つ年上の先輩に放課後の校舎裏で今にも飛び出てしまいそうなほどの緊張を胸に、なんとか私は大好きな先輩に一世一代の告白を頑張って告白しました。
何故か英語で。
返ってきた返事は私の想像の斜め上どころか大気圏突破してしまうほどにぶっ飛んだ、そして理解不能な言葉でした。
「は?」
私、は口をあんぐりと開き、目を見開いてまるで信じられないものを見ているかのようだった。その表情は驚きと理解不能の感情で染まっていた。
ドクンドクンッ!、とうるさく鳴り響いていた心臓の鼓動が急激に弱まっていくのを感じるのを横に私の額の汗は一向に治まらない。
いや……これは緊張の汗じゃない。
冷や汗だ……!
「いやあの先輩」
私は寒くないのに何故か震える
……あ、今冬でした(それも12月)。
「なんだ?」
「も、もう一度言ってもらっていいですか?」
「え?」
「だ・か・ら!わ、わわ私が……その『あ、あいらぶゆー!』って言った後の言葉を!」
半ば興奮気味に、それも逆ギレ気味な印象を与えながら先輩に頼んでいる私。
可笑しいな~。
告白って
先輩は「ああ」と零す。
そこで私は思った。私は確かに告白した筈なのだと。英語のそれも緊張してしまって片言の『I LOVE YOU』だったけど、この言葉を聞いたなら誰でも告白だと分かるだろうと。
きっと私の聞き間違いだ。
女子の一世一代の告白したこの場面で誰がしろみは?などと空気読めない事を言うだろうか。
うんうんと何度も頷く。
そう、まるで自分に言い聞かせかのように。
そして、何処からともなく現れた
なら
「大丈夫だよ。俺は
ズコ────!!!
私は顔面から盛大に転んだ。
何が!?何が大丈夫なんですか!?
私の体と心は大丈夫じゃないんですけど!!
まさかの返事が大っ嫌い宣言ですか!?あんまりですよ先輩!?もう少しオブラートに包みましょうよ、
「おい!大丈夫か!?」
どの口が言うんですか……
「え……ええ。だ、大丈夫で……す。ご心配には及びませんので。たまたま足元にバナナが落ちていただけなので」
「へぇ~。バナナってホントに転ぶんだな。俺初めての見たよ、バナナで転ぶ人」
……でしょうね。
私も初めての体験ですよ。
所謂、初体験。…………初体験?
つまり、私の『
は!?ならば先輩に責任を取って貰わなければならないですよねこれは!!
ビバ既成事実ですよ!
ヤリましたね私(てかてか)。
私は即座に立ち上がり、制服に付いている土も気にせず目の前の先輩に言った。
「先輩、責任取ってくださいね!!!」
「うん。何のかな?君がバナナでこけた責任なら流石に俺は取れないと思うよ。うん。それは自己責任だしね」
し、しまった!?
初めての告白というシチュエーションと先輩の意味不明な言動に加えての『初めて』という官能的イメージのせいで変な事口走った─
───────!!!!!
「ち、違います!これは先輩が変な事を言うから!それで驚いて……!」
「何か可笑しいか?俺は君よりシロミの方が好きだと言ったんだが」
「あれぇぇぇえええ!?!?何でぇぇぇぇええええ!?!?!?」
シロミって誰ですが先輩ィィィィィィ!?
#Side
どうも世界の皆の衆こんにちわ。
ごく普通の高校生日本代表生徒こと“百合沢 愛斗”です。
ええ~唐突ですが、
何故俺がここにいるのか、それは俺の下駄箱にご丁寧にもピンクの可愛らしい手紙が置かれていた事が
手紙の内容は簡潔にすると、『放課後、校舎裏に一人で来てください。二人っきりで話したいことがあります。』という、こう言ってはなんだがテンプレートな内容だと思った。
けど折角もらったのだから行くという選択肢しか俺にはなかったし、それに特に用事という用事も
そして、いざやって来た放課後の校舎裏には一人の女子生徒がいた事に少々驚いたが、あのピンクの手紙に女子らしい丸い文字なら当然だよなと思った。
俺はその女子生徒を知っている。
俺の一つ下の高一の『庭鶏 卯月』という飾りっけのないストレートな茶髪と前髪を止めるハートマークのピン留めが特徴の女の子。
第一印象は活発そうな女の子だ。
庭鶏はこちらをチラチラと見ながら様子を伺っているようだった。
俺は横目でその仕草を見ているが、彼女が俺に対して話したいという内容のおよその見当はついているのである。
俺は
それを切り出すタイミングを探っているのであろう。
そう彼女が俺に告白したい事。
それも放課後の校舎裏に二人っきりでという人気の少ない所でしか言えない内容。
俺には一つしか心当たりがなかった。
そうそれは…………。
──昼休みに彼女が最後まで置いといたゆで卵をこっそり取って食べてしまった事だ!
すいませぇぇぇぇぇぇええんでした!!!
昼休みにたまたま相席して、その時俺は昼飯はおにぎり二つだけだったんだ!そんな中目の前にあったのが何故か通常の2倍はあるだろう巨大ゆで卵だったんだ。
ほんの出来心だったんだ。
道端に落ちているエロ本を周りに誰もいないかどうか確かめてこっそりと拾って見るのと同じ感じのアレと同じだ。
彼女は自分が食べてしまったと思っている様子だったが、恐らく俺が盗み食いしたことに気付いたんだろう。
庭鶏の友人の
好物は『卵』。その中でもゆで卵が特に大好きというではないか。鶏の世話していたのに好物が『
校舎裏を選んだのも流血沙汰になった場合にその処理をするのに人目が邪魔だったからに違いない。
とまぁそういわけで、庭鶏は『卵』という食べ物に関しては並々ならぬ執着心があるらしいのだ。それも奪った相手に対してバイオレンスな方向での仕返しつきらしい。
ああ……それと、庭鶏は『
ふと庭鶏を見る。
頬を赤らめて、チラチラと俺と地面を交互に見いやる。
……頬なんか赤らめて、そんなにテンションが怒りのボルテージが高いのか!?ごめんなさい!一ヶ月分の俺のゆで卵あげるから許してください!おなしゃす!!
そんな俺の心境を知らず、庭鶏は言った。
────
「あ、あいらぶゆー!」
その時、俺の全身の毛という毛が逆立った。
こ、こいつ『あ、あいらぶゆー!』だと!?
I =私。love=大好き。
最後に、you=君。
卵好きの庭鶏だとこういう訳になる。
『you=
つ、つまり庭鶏が言いたいのは……!
『私、
こ、こいつ遠回しに
敢えてここで直球に『私のゆで卵食べたでしょ!』などと言えば俺がしらを切るかもしれないと危惧しているのだ。
俺が食ったという証拠はないから、俺の反応を見て確認するつもりだな……!庭鶏卯月なんて恐ろしい子なんだ!?
ま、
このまま黙ってちゃ、俺がやりました!、って言ってるようなもんだぞ。沈黙は肯定と受け取るってやつだ。やばいやばいやばい。
もし俺が食べた事がバレたら、
『オイ
などといった事になったりして。
この子……大人しそうな顔をして、卵になると豹変という都合のいい設定を持ってやがるのか(※妄想です)。
今どきの若い子って凄いね。お兄さんみたいなそこらにいるモブみたいな一般生徒とは比較にならないほどに設定を盛ってやがる。
ってぇぇえええ!そんな事を考えている場合じゃねぇだろ俺!な、なな何か返さないと。
下手な事は言えない。俺の頭と毛根とスクランブルエッグの為にもだ。
そこでふと
そうだよそうだよ!
何も否定しないといけないと決まった訳じゃない!あっちが遠回しに脅迫するならこっただってやり返しちゃイケナイ理由はない、
おおー!冴えてるかよ俺ェ!冴えまくってるいるじゃねぇか俺ェ!
生命の危機状況に人が陥った時脳やら潜在意識やらとかが覚醒するのは本当だったのか!ありがとうアニメ、漫画。俺をこの告白シーンかと連想させるこの青春の1ページ(※リアルです)を血に濡れた殺戮場というグロシーンを防いだご都合主義に喝采を!
俺……この戦いが終わったら特大のゆで卵を作るんだ(※死亡フラグですね)。
「俺は(卵の部位なら)
自分は卵なら
その後、庭鶏は漫画のような芸術的ズッコケを披露したのだった。当の彼女の心境を知らない愛斗は、
(
と、盛大に復活フラグを建てていた。
殺ったぜ俺(てかてか)。
#Side Out
その後のオチは、
「だから俺は
と、半ばあたふたしている庭鶏に対して鬼気迫る勢いで肩に両手で掴み、ゆらゆらと揺らしながら説明している。
しかし卯月は、
「(
と、絶賛勘違いを勘違いで打ち返していた。
ぐるぐると目を回し、突然別の女の名前が上がった事で疑いと嫉妬と悲しみと……その他よく分からん感情が暴走して卯月は正常な思考が出来ていなかった。
だからだろう。ビクッ!と首に親指が触れた事で震えた際に無意識に上がった
「ムぅぅぅぅ!?!?!?……あはぁぁ(チーン)」
卯月の膝に二つのぐにゃっとした感触のゴールデンボールが生暖かく残っていて(本人気付かず)。
「月ちゃーん私どうしたらいいか分からないよぉぉ!!ぶぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
哀れなり庭鶏 卯月。
そしてざまぁ百合沢 愛斗。
全てはここで真っ白に灰人となって昇天して逝っている鈍感難聴唐変木無自覚野郎な百合沢 愛斗が悪いのだ。
「い……いや~エッグいすね。
、なんてね……!ぐゔぉぉ……」
死亡フラグと復活フラグを見事に回収した百合沢愛斗であった。
「先輩!あ、あいらぶゆー!」 「俺は白身派だから」 雪純初 @oogundam
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます