005  類似する世界Ⅴ

「なんで、ゲームの世界にそんなものがあるのよ。現実世界では一銭にもならないのに……。働いていればよかったじゃない」


「春、人それぞれだ。圭祐君には両親がこっち側にはいなかったんだぞ。それに未成年のバイトを快く引き受けてくれる所なんてあまり少ないからな……」


「まぁ、稼いだと言ってもざっと一億円ほどですけど……」


「え? 今、何円と言った?」


 啓二は聞き間違えたのか、自分の耳を疑い、質問した。


「はい、一億円ほどですけど……」


「まさか、このたった一年間で年商一億円稼ぐってよほどの運がよかったんだな。それを聞いた春は、何を喜びながら苛立っているんだ?」


 啓二は春を見る。


「んなっ⁉」


「で、でも……これはこの世界で生きていくために遊ぶために使うお金ですし……」


「そ、そんなわけないでしょ! それにお金というのはそんなに無駄遣むだづかいしちゃいけないのよ。後、あなたはこれからこの学園都市に来て、どこの学校に入るつ、つもりなのかしらっ?」


 つ、ツンデレというか、なんとなく難しい性格をしているな、と俺は思った。


「一応、学園都市の北星学園ほくせいがくえん高等学校だったはずだが……、まぁ、こっちの世界でも色々と書類や手続きが多くて大変だったけど……」


「えぇ! 私と同じ高校に通うの! 何よそれぇえええええ……」


 春は頭を抱えて、深々と溜息を漏らした。

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仮想世界の中で僕らは、恋愛アドベンチャーゲームの日常を存分に満喫する。 ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ @kouta0525

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