004  類似する世界Ⅳ

「それにしても何も怪我無くてよかったな。まぁ、相手の男の子は————」


「怪我無くてよかったじゃない‼ こっちは被害者なのよ!」


 父親に抗議するはる


「いや、お前よりそっちの方が被害者な気がするんだが……」


 俺を見て、呆れて深々と溜息をつく。


「そ、そんなの関係ないわよ! 女の子の体を触ったのが悪いんでしょ!」


「い、いや……一応、男の子って言うのをやめてもらえませんかね……。圭祐けいすけって言うんですけど……」


 俺は、自分の名を名乗った。


「えっと……閉じ込められて一年半、ようやくこっちの方に来まして……」


「圭祐? あれ、その声とその名前、それによーく姿を見ると誰かに見覚えがあるんだが……。もしかして、中川裕二なかがわゆうじの息子じゃないよな」


「あ、はい。そうですけど……おじさんは……?」


 俺は自分の父親の名前を当てられて、問いかえす。


「俺はあいつの悪友というか、腐れ縁みたいな関係だ。笹倉啓二ささくらゆうじ、裕二とは幼馴染だ。そして、同じくこの世界に閉じ込められた人間でもある」


「俺の親父の親友の人か……。うーん、何と言うか、知っている人がいてくれて良かった……」


「あのさー、二人で話が盛り上がっているところ悪いんですけど……。当事者である私を除け者にしていませんか?」


 春はジト目で俺を見下すように言った。


「それは……はい、すみません……」


「それにしても圭祐君は、この世界では一人なのか? 見たところそう言った言い回しに聞こえるんだが……」


「まぁ、一応、一年間一人暮らしをしていましたし……」


「それじゃあ、金銭的にも人事的にも問題があるんだろうな……」


「確かにそれはそうだね……」


 春が小さく頷く。


「はぁ……。色々と、株やFXなどを通して生活できる程度までは今でも何とかしていますけど……」


 俺は頬を掻きながら苦笑いで話をする。

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