消えた息子はどこへ
@1919
第1話
視点が反転した。
目の前が、私が見ていた景色と逆の光景が広がっていた。振り向いたから? いや違う。私の立ち位置が急に変わったのだ。
周りを見渡してみる。周囲には脱ぎ捨てられた衣服が散乱していた。ただ、その場で服を脱いだというよりは、着ていた人間がその場で消えたような服の置かれ方だった。そう、服だけを残して、人が消えていた。
旦那と、今日5歳になったばかりの息子もいない。
こうなる前の記憶はハッキリしている。今日は家族3人で最近出来たショッピングモールに来ていた。フードコートでミートソースのパスタを食べ、息子に誕生日プレゼントを買った。
それからAIを搭載した最新の人型ロボット、ランボに3人で話しかけた。息子が私のスマホを使ってロボットの写真を撮った時、私の視点は反転し、人が消えた。
旦那と息子を探しに行こう。
目の前に置いてある自分のバッグを拾おうと、手を伸ばす。見慣れない腕が見えた。見慣れないだけで、見覚えはある腕だ。金属製の腕。これはランボの腕だ。
私の身体はランボの身体になっていた。
パニックになりそうな思考を抑えつける。今自分がやるべきことは息子と旦那を探すことだ。
私は機械の腕でバッグを持ち、落ちている自分と旦那のスマホをバッグに入れる。旦那の服の尻ポケットから旦那の財布も忘れずにバッグに入れておく。
モール内を散策してみるが、やはり人がいない。それからペットショップからペットも消えていた。それ以外に変わっているところは特にない。
同じように衣服が放置されているだけだ。機械の声であたりに呼びかけてみても返事が無い。私しかここにはいないのだろうか。
ピロン、とどこかでスマホが鳴る音がした。
そこで思い出す。このショッピングモールの外はどうなっているのだろうか。バッグから自分のスマホを取り出した。LINEを開こうとしたが、何故か別のアプリが開かれている。メモのアプリだ。
そこには既にビッシリと文字が書かれていた。そして、今もそこに文字が書かれ続けている。
そこには何度も何度も「おかあさんたすけて」と書かれていた。
バッグから旦那のスマホの鳴る音が聞こえて間もなく。周囲のスマホが一斉に通知音を発した。
消えた息子はどこへ @1919
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