筋・根・知 ――私見 W杯2023の見どころ――
みなさん。ワールドカップですよ。何の? 何のじゃねえ。わたしが言うのだからもうそれはラグビーしかなかろうて。筋肉と根性と知謀の祭典、ラグビーW杯が、9月8日から始まります。知ってる。みんな興味ないって知ってる。でも、例によってそういう空気には気付かんかったことにして、今から勝手にごくごく私的な「見どころ」を垂れ流す。久々に何か言うてきた思たらそれか…と渋い顔をなさっているのが目に浮かぶが、事故にでも遭ったと諦めてもらいたい。
四年なんてあっという間だった。と言いたいところだが、COVID-19の流行や、個人的なところでは父との永訣、恐らく最後になるであろう出産など、前回から今大会までには実にいろんなことがあり、「もう来週からやで」と言われたら、え?! もう?! と一瞬驚くけれども、あー、そうね、四年やね、長かったね、と思う。
この四年間で、まことに残念、かつ、わたしのようなスカタンが指摘するのは本当におこがましいことながら、我らが日本代表は世界ランキングをどんどん下げてしまい、この夏に行われた一連のテストマッチを見ていても正直なところ、多くを期待できる状態ではなさそうに見える。知らんよ。ひょっとしたら秘密戦略を持ってるかもしれんよ。でも、始まる前からこんなことを言ってはなんだが、完全に魔法が解けたシンデレラのように思えてならない。我々の魔法使いのおばあさんはエディ・ジョーンズというオーストラリア人のおやっさんだった。これだけ言えばわかる人にはわかる。魔法使いはその後、イングランド代表の面倒をしばらく見た後、現在母国に帰って代表チームの監督になっている。去年の暮れに魔法使いがイングランド代表監督を解任されたとき、どんな手を使ってでも、なんぼ金を積んででも、日本に呼び戻すべきだったのに、とスカタンの繰り言は絶えない。W杯の予選で、日本とイングランドが同組に入っていることを思えばなおさらである。
ともかくも、見どころその一は、この魔法使い率いるオーストラリア代表の仕上がり具合だ。夏の五試合、ひとつも勝てていない。直近の8月27日フランス戦もあちゃー、という感じで終わった。トライ数だけ見たら一本差やのに、キック外しすぎや。5日の宿敵NZ戦では後半に逆転されて惜敗を喫し、魔法使いは首脳陣席で魔法の杖、いやヘッドホンをテーブルに叩きつけて、めちゃくちゃ怒っていた。それでも、まだ何か秘策があるんじゃないかとスカタンは思う。なぜならあの人魔法使いだから。それから、代表選手の若さも注目である。ベテランの怪我などもあってか、今回代表入りした選手たちは平均して大変若い。前回大会のフランス代表を思わせる。フランスは2019年を「捨て」、自国開催となる今大会にすべてを賭けてきたと言われている。そしてフランスの場合、それは面白いように奏功し、こん年まさに準備万端である。オーストラリアはどうなのか。次の2027年はオーストラリア開催である。オーストラリアも、そのつもりなのか。フランスは、しかし、そんなこといいながらも結局2019年だって強かった。オーストラリアは、どうなのか。
フランスの話が出たので、見どころその二はかの国のSHアントワーヌ・デュポンと言っておこう。話の流れ上「その二」扱いになったが、自分としては最大の関心である。なんとなれば、いい男だからだ! 前にも言ったが、猪首・太巻きあるいは単一乾電池のような体型・ブサイクなのか男前なのか非常に微妙な境界線上の顔面(ときどきむくんでる)・攻撃的なプレースタイル、どれをとっても好いたらしい!! 数年前わたしは南アのファフ・デクラークに熱を上げており、一時は待受画面までファフだったのだが、なんやかんやで憑き物は落ち、そのなんやかんやはデュポンだったのである。コロナのせいで2020年の欧州六ヶ国対抗戦が延期になったとき、どうにかして情報を得ようと思ってデュポンのインスタグラムを見ていたがすべてフランス語で理解不能な上に、当時のデュポンは全然似合わない丸刈り頭だったためインスタチェックはすぐやめたけれども、髪型はやがて元通りになり、わたしの情熱も元通りに戻った。今検索しても出てこないが、そのころGoogleで「アントワーヌ・デュポン」と検索すると、外国のサイトを自動翻訳か何かでまんま日本語にしただけの、デュポンに関するかなり詳しいページがひとつだけあって、そこの「恋人」という欄に「現在の恋人、〇〇〇〇(名前は失念した)は、絶妙な乙女です」と書いてあったのを見たときは噴いた。「絶妙な乙女」て! もはや日本語には無い概念とも言えようが、しかし、女と生まれてこれ以上の誉め言葉があるだろうか?
そんな絶妙な乙女との関係が今どうなっているかはいざ知らず、デュポンのプレーは見ものである。キャプテンなので毎回先頭で入場するだろう。猪首のもっちゃりぶりを堪能してほしい。ついでにSOロマン・ヌタマックの完全チワワ顔も見てほしかったが、チワワは今回十字靭帯断裂でまさかの欠場である。
チワワのほかにもかわいい顔の男はいる。見どころその三である。ウェールズ代表のリース=ザミット、イングランドのマーカス・スミス、イタリアのカプオッツォが三大カワイイだと、わたしは思っている。奇しくも全員黒髪だ。マーカス・スミスはちょっと前からひげ面になってしまってかわいい度は半減したが、リース=ザミットの赤いほっぺたが光る安定感はすごい。見ると必ず雪ちゃんの日本海味噌の歌を歌いたくなる。要するに北国顔なのである。蓑笠被せてさらにかんじきを履かせたい。似合うはずだ。カプオッツォは時々、角度によってはまるで女の子のようである。蓋しほくろの位置が絶妙だ。絶妙な乙女。(ちがいます)
カワイイがお気に召さない向きには、スコットランド代表の大型WTB、ファン・デル・メルヴァを推したい。素晴らしい美丈夫で、さながらギリシャ彫刻である。それがめっちゃ走る。怖い。サモア、トンガ、フィジーなどの島嶼国代表にはセクシーなもじゃもじゃが満載だ。アルゼンチンのSOサンティアゴ・カレーラスは生きる劇画である。梶原一騎か。前にも言ったが、イタリア代表のトンマーゾ・アランの鼻の高さよ。あと、カワイイ違いで、イングランド協会所属のレフリー、マシュー・カーリーさんはちびのミイに似ている。ムーミンファンは必見である。
監督が変わって、今年の6ネーションズでも勝てこそしなかったが目に見えて強くなったイタリアと、代表資格についての変更を受けて有力な選手が揃う島嶼国勢がどこまで上に喰い込めるのか、それにしてもフィジー代表選手たちの名前。「ハンボシ」「トンギアタマ」「タワケ」て。いま自分は猛烈にレベルの低いことを言っておるとわかっているが、面白いのだから仕方がない。豪州のマクダーモット(このひともオラオラ系のいいSHである)が急に刈上げ坊ちゃんヘアになったのは、新たに代表入りしたSOのゴードンがあまりにも同じ髪型で試合中どっちがどっちかわからなかったからなのか、マクダーモットの方が代表歴も長いし年上だのにそこは譲って良かったのか、ご覧の通りわたしの興味は八割九分が本質的にはラグビーと無関係で、都合三十年くらいラグビーを見てきても万年素人なのであるが、重ね重ね、そんな感じでもラグビーは十分面白い。是非とも、これを機に観戦をおすすめする。
わたしとしては、もちろん、元の姿に戻ったシンデレラのことも全力で応援する。そのあたりが、一張羅のときに一目惚れしただけの王子様と、一緒に暮らしてきたネズミとの違いである。心から、健闘を祈る。
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