ほんとに始まった。


 わたし忙しい。いそがしわー。テレビの前に座らないかんわけ。HDDの残量をマネジメントしなければならんわけ。もう文章がわやくちゃでも見直し書き直しなんかしないんだぜ。今回に限ってそんな暇はない。


 ついに始まってしまったラグビーワールドカップ2019なのである。もっとひっぱってくれてもいい、とこないだ書いたばかりだが、やっぱり始まってみたら毎日が楽しみでバラ色なのだった。今の時点でおもんない試合というのはほとんどなかった。試合展開がいまいちであっても、毎度申し上げるように世界のムキムキを眺めるのはいいものである。それに国を背負っている男たちの顔は、美醜とかいうのとはまた別の次元で、みんながみんなひたすら「立派」だと感じられる。したがって、わたしにとっては全てがナイスゲームなのだった。極端な話、国歌斉唱のところだけでも十分おもしろかったりする。

 とりあえずわたしの応援した側のチームはいまのところ概ね順調に負けている。わたしが情熱的に声援を送るチームはだいたい負ける。はじめから負けそうな方に肩入れしてしまう判官びいき的姿勢、そしてたいていの場合は予想が当たってしまうためで、だからそれはまあ、いたしかたないのであるが、善戦はするだろうけれども勝つのはさすがにちょっと無理かなあ、と思っていた我が日本代表がアイルランドを降したのには本当に驚いた。わたしは試合開始の時、よんどころない事情で車で外に出ていての帰りだったので、前半23分まではNHKラジオ第一の実況中継に頼らざるを得なかったのだが、それを聴きながら、道々目に入る自転車の人、犬の散歩の人、花壇に水やり中の人などに対して、

「あんたら、そんなん全部後回しにして家に入ってテレビ見よし!」

 と非常に歯痒く、本気で「代わってほしい」と思った。


 アイルランド戦の翌日9月29日、泉州の生きる伝説、はー太郎・ザ・グレイトと一緒に後輩のSちゃん宅へ遊びに行ったのだけれども、とにかく生理的にアンチ大男、アンチ筋肉の二人でさえラグビー見た、と言うので、ワールドカップってすげえな、とわたしはそのことにも感心したのだった。はー太郎に至っては、対ロシアの開幕戦も見たらしい。「怖いもの見たさで最後まで見た……ムキムキがムキムキにむしゃぶりついて、ムキムキがムキムキの上に折り重なって……」と、はー太郎は恐悚の表情で語った。

 はー太郎とSちゃんは他にも、「試合前に踊るチームがあるが、あれは何か? 小2の息子が真似をする、ガリガリのくせに本物に忠実に胸などをバンバン叩くので危険極まりない、止めさせたい」とか「防具もつけない人間があんなに激しくぶつかり合って医学的に大丈夫なのか」とか言い、かくてワールドラグビーはこれまでこのスポーツに対して何の興味もなかった二人の日本人女性に、曲がりなりにも多少の興味を植え付けることに成功した模様であった。特に、二試合ほどを通しで見遂せたはー太郎の方は、日ごろ自分が観戦しているサッカーと比較して様々な質問をしてきたが、「じぶん、細いシュっとした人もいる、て言うてたけどそんなん一人もおれへんやん!」「ガンガンぶつかる割にパスの仕方はセコい」などと、普段からラグビーを見慣れている者では到底抱き得ない所感を開陳し、わたしをして困惑せしめた。いや、松島とか福岡とか明らかに細いし、パスがセコいと言われましてもな……ディフェンスを十分引きつけておいて脇に出すパスはそれだけで巧妙な技術なのだが。あと、パスというのは通らないと意味がないわけで、やみくもに速くキツい球をぶん投げればいいというものではなく、受け手になるプレイヤーが取りやすい球を出さなければいけないのである。わかりますか、はー太郎さん。わたしの高校時代のラグビー部顧問だったM先生はそれを「愛のあるパス」と呼んでいたわ。


 そしてわたしは、そのまた翌日の30日に、サモア対スコットランド戦を観に行ってきた。わたしが声を嗄らして熱烈に応援したサモアはやはり負けた。しかもノートライで。生レイドローも見たし、生ホッグ、生アラアラトアも見た。(マイケル、かっこいいよ!) 特にホッグは、テレビで見る感じよりも肥えてるというか、ものすごくゴツいレスラーのような体型でびっくりした。あんなのがフルバックをやってるのか……こえぇ。

 ゲームに関しては、言葉は悪いがしまらない内容で、語るべきことはそれほどないのだがしかし、周辺のことはほんとうに面白く、これは国際的なお祭りなのだなあ、とつくづく思った。スタンドでバグパイプを吹いてたスコットランド人と思しきファンがいたけど、手荷物検査はどうしたのか、傘は駄目なのにバグパイプはいいのか、試合中三回も外国人観客の乱入があったけど、あれってセキュリティが不全ってことじゃないの? ともかくあんなに大量の外国人を、日本国内で見たことは一度もない。ここ数年、四条河原町界隈を歩けば海外からの観光客が死ぬほど居るが、一挙に一か所でまとめて見る、というようなことは初めてだったと思う。それに、スカートを穿いた男たちをあんなにたくさん見たのも初めてだった。プリーツのかわいいヤツだ! 日本の民族衣装である和服だと、どうしても全身、ということになってしまうのに対し、代表チームのレプリカシャツなどを着てその下に合わせられるキルトはこういうとき便利よなあ、と思ったが、よく考えたら日本にも袴があるじゃないか。呉服業界はポリ混素材の自宅で洗えるヤツを作って、もっとアピールすればいい! ラグジャの下には是非袴を!! もし流行りだしたら足袋屋さんも草履屋さんも、相乗効果で儲かりまっせ。頑張れ呉服屋さん。

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