第6話 新たなる旅立ち

 その後――回収されたシンスケの頭部はエンバーミング技術を応用してαレベルのシミュレーションに変換された後、霊柩車のメイン・コンピュータに埋め込まれた。

 いまでは世界唯一の自律制御式の霊柩車として名を馳せ、さらなる駕龍のサービス向上に貢献している。

「新聞で紹介されてもうたところで、そろそろ名前でもつけまひょか」

 シンスケの音声は、左右のスピーカーからステレオで聞こえてくる。

「コシュタ・バワーとかどないでっしゃろ」

「なんやそら」

 花田は白手袋をはめなおす。ヤクザ時代は黒い革手袋をして握っていたハンドルが、今では真逆だ。

「ヨーロッパだかの昔話で、首なし騎士が御しとる馬車でんね」

「なんや、首なしのシンスケにぴったりやな」

「でっしゃろ」

「それに、このリンカーンも欧州大陸コンチネンタルやしな!」

 花田は笑った。シンスケも笑った。

 そしてどちらからともなく、お気に入りの映画の主題歌――胡蝶曼珠沙華を口ずさみはじめたのだった。


  仏式、神式 秤にかけりゃ

  仏式儲かる 葬儀の世界

  昔なじみの 病院様にゃ

  患者の生き死に 漏れまくり

  背中(せな)で揺れてる 胡蝶曼珠沙華


  ホトケの金歯を 承知でくすねて

  まがりくねった 排煙ダクト

  つもり重ねた 遺灰の余り

  どこに埋めよか 袋につめて

  背中で泣いてる 胡蝶曼珠沙華


 〈合掌〉

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【短編】仁義一発! レイキュウ仮面 モン・サン=ミシェル三太夫 @sandy

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