何度生まれ変わっても貴方に恋がしたいです。

香音

第1話 出会い

4月1日。

人生で最初で最後の大学の入学式。

今日から学生として過ごす最後の4年間。そのスタートラインに立ったのだ。

「満開の桜が咲き誇る今日の良きに・・・」

そんなありきたりな学長のあいさつを右から左へと聞き流しながら 少しだけ隙間の空いた扉から外に目をやると満開の桜が風に吹かれて舞い散る瞬間だった。


まるで今日の入学式を桜までもが祝福してくれているのか そんな考えさえ生まれてしまうほど儚く美しい桜の花びらたちだった。


架虹かこ起きて」

そう耳元でささやかれて目が覚めた。

どうやら長すぎる学長の挨拶を聞いているうちに眠ってしまっていたらしい。

「次教室移動だって。名前順だから隣の教室じゃん。うわぁ、惜しい。」

そんなことを教室マップ片手に私の隣で喋っているのは もう幼稚園からの付き合いだから知り合って10年以上になる友人 志織しおりだ。

そんな風に言えばすごく仲のいい幼馴染のように聞こえるが、実際はそんな関係ではなく幼稚園から高校まで同じ場所に通いはしていたが顔を見れば少し喋るくらいでそこまで仲のいい友達なわけではない。

大学の入学式、一緒に行く人がいないから

なんとなく高校の知り合いと一緒に行くことになるという、よくある話が私たちの中でも発生したというだけである。

「うわぁ。ほんとだ。惜しい。 まぁ仕方ないことだし、いこいこ。」

そう言って私たちは足早に指定された教室へと向かった。


教室へと足を踏み入れると見事に誰も知り合いはいない。

まぁそうなるのが当たり前なのだが

久しぶりにそんな空間のなかに一人でいると心なしか少し緊張してくる。

自分の指定された番号が書かれている席に座り、少し緊張感も解け落ち着いてきたので周りを見渡してみると40人くらいの生徒が一つの教室に入れられていて、案の定、全員が同じ知り合いゼロの状況なのだろう。

誰一人喋ってはおらず、喋ろうとする人もいない。

とりあえずは大人しくしておこうという気持ちが勝ってしまい、結局誰とも言葉を交わすことなくこの教室の担当だという担当者の話を一時間聞いてその場は終わった。


その後志織と合流し、最後の説明会の会場へ向かった。

「いやもう話し長すぎだし、だいたいさっきの時間は絶対いらなかったでしょ。

私の教室さ先生の思い出話聞いてたら終わっちゃったんだけど。」

なんていう志織の話をなんとなく

「それな」「確かに」を繰り返しながら聞いていたら 知らぬ間に会場に着いていて、

私たちはまた指定された席にバラバラに座ることになった。


先程と同様、誰に話しかけることもなく座っていたら

隣の男の子が

「すいません。筆箱忘れちゃって。

筆記用具貸してもらえたりしますか?」

そうやって話しかけてきた。

あまりに突然だったので

「え。あ。はい。いいですよ。」

なんていう平凡な話の発展性のない返事をしてしまったことを後悔しながら

筆記用具を彼に手渡した。

そこからは大した会話はなく

「ありがとうございました」という彼の発言と同時に説明会は終了した。

荷物を片付けていると、もう一度彼の声がした。

「あの、もしよかったらなんですけどLINE交換しませんか」

いやいや、唐突過ぎないかなどと

心の中でツッコミながら

まぁ知り合いを増やすことは大事だという精神でLINEを交換することにした。

連絡先を交換しようとスマホを手に持った時、

「なにしてんのよ。黒木。」と声をかけてきた女の子二人組がやってきた。

どうやら彼と彼女たちは同じ高校の同級生らしい。

「私とも交換しよ」なんて会って二秒で言ってくるものだから

少し焦ったが、大学生とはこんなものかと自分に自分で言い聞かせ、その二人とも連絡先を交換した。

「じゃあ また連絡する」

そんな彼女たちの発言を合図に私たちは別れた。


その日の帰りは、志織とご飯を食べに行く約束をしていたので大学の人混みから ようやく解放され大学から電車で1時間ほどの地元のドリア専門店で腰を下ろした。

「はぁ 疲れた。いやもう誰とも喋れなかったし 疲れただけ。」

そんな志織の言葉をよそに私は

「そうだね」と相槌を打ちながら

先程連絡先を交換した女の子の1人と早くも連絡を取り合っていた。

その子の名前は 沙莉さいり


<語学のクラス発表、見た?>

<まだ見てない 今外にいてさ>

<いや、早く見て 早く早く>


知り合ったばかりなのに

やたらと馴れ馴れしいななんていう嫌悪感を抱きながら 今日発表されるらしかった語学のクラスを調べた。


<B2クラスだったぁ 沙莉ちゃんは?>

<沙莉でいいって。

てかまって うそ。

一緒なんだけど え 最高。>


いや 、ほんとかよ。

心の中で呟いた。

たまたま入学式で知り合った子が

数多くある第二言語のクラスを

同じ韓国語を選択している上に

8クラス以上ある30人程しかいないクラスまで一緒なんて、そんなことあるのか。と。

その上喋った時間僅か1分ほどの私とクラスが一緒で最高なんて 変わった子だなと思った。

まぁ今になって考えれば

これから仲良くなろうとしている子に対する対応としてはなんの変哲もないか?とも思うのだが。


<うわぁよかった。知り合いいて。>

なんていう風に私も知り合いと言えるか言えないかレベルの彼女に波長を合わせて返信した。


<そんなことよりさ サークル決めた?>

自分で話を振ってきたのにそんなことよりって。なんて思いながら


<まだ>

そう返信すると


<私たちの学部さ明日休みじゃん。

サークルの勧誘観に行こうよ。>


めんどくさすぎる。

それが正直な感想だった。

たかがサークルにかける思いが強すぎるんじゃないか。そんな風に思ったのだ。

だがしかし、サークルに入ろうと思っている私がいるのも事実であり、未だにどのサークルに入るか決めきれていないのも事実であった。

自分の中で散々悩んだ結果

<いこっか>

そう返信したのである。






<

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