第28話 僕の部屋に巨乳が舞い降りた!
中間テストも終わり、学校には
そんな某日、僕の部屋に巨乳が舞い降りた。
うれしいのでもう一回言う。
僕の部屋に巨乳が舞い降りた!
あまりにうれしいので、胸の内で何度も
しかも、相当な美少女である。顔面偏差値は、確実に学内トップクラスといえる。そのあどけなさを残した面影は、美女ではなく、美少女と称するのが適格だ。愛くるしい小動物のような仕草は、男心を実に熟知したもので、指先一つの動きで世の男性すべてを
そんな巨乳の美少女が、僕の部屋に訪れるという奇跡!
このチャンスをなんとしても活かさなくては、と僕は思考を巡らせた。
「あの、
「巨乳万歳」
「え?」
おっと、心の声が漏れてしまった。
「いや、わるい。忘れてくれ、おっぱい」
「え? あ、え?」
僕はなるべく平静を保っているというのに、巨乳娘は、挙動不審に
「はぁ、また話を聞いていませんでしたね」
異常なサンプル、青髪の少女、もとい、
「しかも、聞くに堪えないセクハラ。そんなに軽蔑されたいんですか? そういう趣味をお持ちですか? だとしたら、そういうお店に出向いてください」
「うるさい、ぺちゃぱい」
引っ叩かれた。
「何すんだよ!」
「いったい何に疑問をもっているのかわかりかねますが、少なくとも、私にそういう趣味はありませんので、あまり欲しがらないでください」
「欲しがってなんかいねぇよ!」
どこのSMクラブだよ。
痛いのは嫌いなのに、ぐすん。
「で、いったい全体なんなんだい? また違う娘を連れてきて。僕の部屋はカフェでも、バーガーショップでもないんだけど」
「えぇ、知っています。偏屈で変態な不登校児の引きこもり部屋でしょう」
だから、引きこもってはいないって。
「私も連れてきたくはなかったのですが、彼女がどうしてもと言うので」
「ほう」
僕が巨乳の方を見遣ると、巨乳はびくりと震えてから口を開いた。
「
真藤は、おどおどとした態度ながらも、自らの所在を明らかにした。小動物という言葉がぴったりで、彼女は警戒するように、身体を縮こまらせている。しかし、その胸部の乳房は、間違いなくホルスタイン並みである。
「僕はカウンセラーではないんだけど」
「あ、その、ごめんなさい」
「いや、怒ってはいないよ。ただ、相談されても僕がちゃんと答えられるかわからないってだけ」
「えっと、その、それは、そうなんですけど、
「杏ちゃん?」
あぁ、
ったく、あいつは……。
いいとこあるじゃん。
「で、その香月はどうしたんだ?」
「杏ちゃんは、部活があるから来れないって」
「予想通りな行動だな。君はいいの? 香月の友達ってことは、君もハンドボール部員なんじゃ?」
「い、いえ、私は運動はからっきしで」
まぁ、聞いてみたはいいけれど、そんな雰囲気だな。
胸をそんなに膨らませていたらボールと間違われて叩かれかねない。というか叩いてみたい。
「もう一発殴っておきましょうか」
「いや、何も言ってないだろ!?」
こいつ、エスパーか?
「まぁ、紹介されたのなら仕方がないな。僕に応えられるかわからないけれど、できる限りのことをしようじゃないか」
「あ、ありがとうございます」
いやいや、同輩の相談に乗るなんて、当然のことだ。日本人のDNAに刻み込まれている助け合いの精神。その精神が、僕に語り掛けてくる。僕は、かの言葉にただ従っているだけだ。ゆえに、何もおかしくない。おかしくないのだから、白殿、そんな虫に見るような冷ややかな視線を向けるのはやめろ。
「やけに優しいんですね、堂環くん」
「いや、僕はいつもこんなかんじだけど?」
「どの口が言うんですか? 私は、あなたの口から否定の言葉以外聞いた覚えがないのですけれど」
「耳くそ詰まっているんじゃないのか? ちゃんと掃除した方がいいぞ」
「あなたが危険ドラッグのやり過ぎで、過去と未来の区別もつかなくなったと考えた方が
「ねぇよ」
反撃が過剰だろ。水鉄砲にトマホークか。耳くそでディスってんだから、鼻くそくらいで返してこいよ。
「僕が協力的なんだから、それでいいだろ」
「下心が丸見えです」
「幻聴だけでなく幻覚までか。相当、疲れているようだな。早く帰って風呂入って寝た方がいい」
「あなたのやましい気持ちが透けて見えると言っているのです。そんなに日本語が不自由でよく今日まで生きてこられましたね」
「不自由って、それは、……あ、そういえば、君、中間試験で僕に負けたんだから、暴言を控えろよ。そういう約束だろ」
「っ! 数学以外は、ほとんど変わらないじゃないですか! そんなに偉そうにしないでください!」
「勝ちは勝ちですぅ」
「こんのっ! ……そもそも私は暴言なんて使っていません。私は常に真実を口にしているまでです。なので、約束には抵触しません」
「また都合のいいことを……」
その解釈で納得できるあたりが、白殿の凶悪な、もとい、すごいところである。
「お、落ち着いてください、堂環さん」
僕と白殿の言い合いに驚いて、真藤が止めに入ってきた。
「白殿さんは、今、ちょっと機嫌がわるいんですよ。女子の気持ちは変わりやすいんです。ほら、女心とシャイニングスターって聞いたことありませんか?」
「「おまえか!」」
「え? ええ?」
香月杏の友達ということで、その知性の程は
突っ込みをハモらせてしまったことに眉を寄せる白殿であったが、はぁ、とため息をついて告げた。
「もういいです、真藤さん、やっぱり帰りましょう。この人に頼るのは間違いでした」
「おいおい、帰るなら一人で帰れよ。巨乳は置いていけ」
「……その呼び方をやめないと、本気で怒りますよ」
もう怒っている気もするが、白殿の目が、僕の知るかぎり最も冷めた色をしていたため、自粛することにした。
「話が逸れたけれど、きょ、じゃなくって、真藤、だっけ? 相談ていうのは何なんだい?」
白殿を無視して尋ねると、真藤は、ちらちらと白殿の顔を窺った後に、やっとその依頼内容を告げた。
「
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