カレー嫌いの林くん
如月先勝
第一話(完)
いつの時代も、小学校の給食における人気ランキング上位に君臨するメニューがある。
カレーライスだ。
家庭料理としても人気が高く、その香りと味わいは、子供から大人まで多くの人を魅了してやまないという。
その日給食当番だった僕は、分担を決めるじゃんけんの結果、カレーの担当になった。
隣の人から受け取った器に、ルーをよそっていく。
固形のメニューと違って一人分の量が決まっていないので、器によそう際のさじ加減が難しい。
最初のうちは量を均等に揃えるのに手間取っていたけれど、いくつかこなすうちに慣れてきた。
コツをつかんだ僕が、工場のベルトコンベアのようにカレーを生産しているときだった。
「僕はいらないから」
林くんはそう言うと、何食わぬ顔で自分の席に戻った。
クラスの全員に給食を配り終えたとき、みんなの視線は一点に集中していた。
林くんの机の上には、牛乳とサラダのみが鎮座している。
「林くん、食欲ないの?」
「いや」
「じゃあ、どうして?」
「カレーが嫌いなんだ」
教室が騒然とした。
「カレーが嫌いなやつなんているのかよ」
「林って変わってるよな」
カレーが嫌いというだけで、まるで人間ではないかのような扱いだった。
僕は林くんに同情の念を示すいっぽう、自分がカレー嫌いではないことを安堵していた。
カレー嫌いの林くん 如月先勝 @kisaragi_sensho
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