第8話 エピローグ

 MEIKOさんを見送ったあと、松風がこんなことを言い出した。

「舞、魔女のたまり場の件、ここの店長に頼んでみたらどうやろ」


 魔女のたまり場というのは、私たち魔女が魔女としての活動をする拠点のことだ。

 魔女は町の人々を笑顔にするために魔法人助けをするんだけど、町の人たちが私たち魔女に頼みごとをするときに、ここにやってくればいいよって場所が必要になる。形はいろいろで、自分の家にポストを設置したり、魔女のお店を開いたりする場合もあるらしい。

 ただ、私たちのように駆け出しの魔女が新しい町にやってきた場合、新しくお店を開いてもなかなか人は来てくれないし、魔女としては13歳で一人前でも日本の法律では未成年なので制限も多い。なので、旅立つ魔女のしおりには「もとから人が集まる場所を間借りするのが一番」と書いてあった。


 喫茶店ならいろんな人がやってくるだろうし、バイトとして雇ってもらえば生活費の足しにもなる。魔女のたまり場としてはもってこいだ。なにより、料理と飲み物がとてもおいしかった。

 さっきの騒動で店長さんの印象もよくなっただろうし、松風の提案に乗って、お願いしてみることにした。

「あのっ、店長さん。ちょっとお願いがあるんですけど」

「(にゅるにゅるん)」

 店長のたこルカさんが、こちらを向いて『何?』って感じのポーズをする。

「実は、これこれしかじかで……」

 忙しい時にはバイトとして入れること、魔女にお願いしに来た人がカフェのお客さんになってくれるかもしれないこと、とかいろいろアピールして、このカフェを魔女のたまり場にしていいですかとお願いしてみた。

 すると、たこルカさんは、するすると触手を伸ばし、私の両手を取って縦にぶんぶん振り回す。

「わあ、よかったですね、舞さん」

 ウェイトレスさんがなんか祝福してくれている。なんでこれでわかるんだろう。

「なんやようわからんけど、OKっちゅうことみたいやな。……こら魚の言葉覚えなあかんな」


 そんなわけで、わたしはゲキド街のたこルカカフェで魔女の暮らしを始めることになった。

 途中ちょっとどうなるか不安だったけど、なんとかうまくやっていけそうだ。

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ボカロの街の魔女(仮) 彬兄 @akiraani

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