第3章 6-5 まさか、こいつも……?

 桜葉がチラリと観て確認する。これはもちろん、まだゲージが残っているか? という意味だ。ガクガクと動いて起き上がろうとしている。かろうじてヒトケタ残っているようだ。


 (俺が相打ちに持ちこめば……勝てる!)

 そう思い、素早く納刀し自然に膝を緩め、呼吸を整え居合に構える。


 ヴェルラは、左足を引いたやや半身はんみほどで鎌を前に出し左手の鎖を隠していた。攻撃は鎌ではなく間合いを盗んでいるほうの鎖である。そういう構えだ。


 「やっぱり、あんた、私と似たような戦いをするじゃないか」

 ふと、ヴェルラが話しかけてきた。

 (あたりめえだろ、日本刀と鎖鎌だぞ)

 「あんた、いったいどこで、その刀の遣い方を習ったんだ?」

 (こっちのセリフだボケ)

 「ふん……あくまで答えない気かい」

 (そんな余裕はねえんだっつうの!!)


 魔力炉がでんぐり返って口から飛び出てきそうだった。ドラムでなくば、脂汗で眼も見えないところだ。


 しかし、不思議と膝は震えていなかった。

 「きっと、仲間になれると思ったんだけどねえ」

 (!?)

 桜葉の眉がひそまる。ヴェルラがニヤッと笑った。


 (なんだ……なんだって……!? まさか……こいつもだってか……!?)


 いや、おっさんとは限らない。高校生かも。鎖鎌JK。

 ジャッ!!

 そんなことを考えてしまった瞬間、分銅が飛んだ。


 人間ならばよほどの達人でなくば見切れない速度だったが、そこはドラムだ。これまでのダメージによる痛みもほぼ無い。ハイセナキスに衝撃や硬直はあるが、肉体的な痛みはあまり無いのである。


 真上にとんだ分銅が、寸分違わず桜葉の脳天めがけて落ちてくる。鎖の動きを見切って、桜葉は前に出た。


 グイッ、ヴェルラが左手を操作すると、鎖が自在に動き、なんと分銅が引き戻されて桜葉の後頭部を打った!


 「ブッ!」


 小爆発と共に凄い衝撃が桜葉を襲う。痛みは軽いが、この衝撃が未だに慣れない。ダメージは二割ほど。桜葉はつんのめってバランスを崩した。すかさずヴェルラが猛獣めいた動きで跳びかかって鎌を振り上げる!


 だが桜葉め、ほぼ無意識のうちに、低い姿勢から片膝をついて抜刀! ヴェルラの振りかざされる右手を正確に片手で抜き打った! 


 バアン! 切っ先がヴェルラの右手首をとらえる。生身なら右手が切断されて鎌ごと飛んで行くタイミングと威力だった。


 だが、反動で右手がそっくり返る動きに合わせて左で鎖を操る。ハイセナキスの攻防に慣れれている! ギュワッ! と螺旋を描いて鎖が宙を舞い、まだ片膝をついて刀を抜きあげた姿勢のままの桜葉めがけて降ってきた。


 (なんだ、この、クソオぉ!!)


 雁字搦がんじがらめにされる寸前で桜葉が立ち上がりざまに振りかぶって斬撃!! ジャッ! 偶然にも切っ先が落ちてくる鎖にひっかかって威力をそがれ、逆に鎖が桜葉の刀に合わせてヴェルラへ叩きつけられる。


 バチッ、とカスダメながら、ヴェルラが自分の鎖を桜葉に刀で当てられたかっこうとなった。瞬間、怯んだそこへ、再び振りかぶって力まかせに桜葉の真っ向斬りがヴェルラを襲った。


 斬るというより、刀で叩いた。ガン! 爆発とエフェクトでヴェルラが腰から砕けて下がる。


 「ぬぅああ!!」

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