第1章 1-4 すごくよくできてる

 ちょっと顔自体の造りにまだ違和感があるが、美少女っちゃ美少女だった。髪は黒だが日の当たる部分が緑金に光っており、烏の濡羽色というやつに近い。目も緑の虹彩に黒が混じった不思議な色だった。鼻は高くなく、低くなく……やはり東西のハーフ系だ。背は、あまり大きくない。桜葉の身長より頭一つ低いと感じたので、一六〇センチくらいか。思わず顔を近づけ、まじまじと見入った。


 「……んん?」


 そして気づいた。眼をしばたたかせる。あかんべーをして、自分の眼をようく観た。じっくり観察した。


 (……濡れてない……)


 目が乾いている。涙が無い。恐る恐る眼球を触ってみたが、やはり乾いてつるつるだった。しかもビリヤードの球めいて硬かった。


 (義眼……?)


 急いで貫頭衣を脱ぎ、再び全裸となる。随分と華奢な身体に思えたが、肉付きは悪くない。なにより、毛穴が無いほかは異様にリアルだった。へそまである。


 (こっちの人間って、みんなこうなのか? そういうこと?)


 自分の身体をべたべたと触る。再び顔も触ってみる。ようやく皮膚の触られる感触が分かってきた。胸も触った。自分の胸だ。やや小ぶりだが、普通にやわらかい。彼女いない歴=年齢だったが、風俗くらい行ったことはある。というかむしろ好きだった。おっぱい星人。大きくても小さくても人それぞれに良さがある。我ながらこの胸は、非常にバランスが良い。乳首もちゃんとあった。色もいい。


 「……ん? うむむ……? んん?」


 しかし、触っているうちに、何かを思い出す。なんだったか……感触が、ちょっと違和感があった。


 「むむ……」

 目をつむり、考える。どこかで揉んで萎えた記憶……。

 「うーむ」


 なんだったか……。

 「あ」

 わかった。


 「めっちゃシリコン、めっちゃシリコン、めっちゃシリコン!!」

 いつぞやのおっパブで、入れ乳の嬢にあたってクレームを入れた事を思い出した。


 「…………」


 そして茫然として、胸へ手を当てている自分を全身鏡の中に見つめる。

 (こいつ……生き人形……アンドロイド……義体……なの……か……)


 ゴクリ、と唾をのんだ。のんで気づく。唾はある。口を開けると、口の中はかなり人間っぽかった。歯並びもきれい。喉の奥まで穴が続いており、かなり精巧だと思った。何の成分か知らないが、唾液がある。しかし、全身に暑い感覚がある割に汗はかいていない。鼻で息をしてみると、鼻の穴も通っている。耳も確認したが、普通だった。


 さらに、口といえばとふと思いたって尻を触る。尻穴の感触がある。それよりも、その尻のロリっぽい小ぶりの触り心地に無意識でにやけていて、そのマヌケ面が自分だと気づき、舌を打つ。


 そして、鏡台をひきずり、ベッドのところまで動かして、ベッドに腰かけて背面ブリッジぎみに仰向けとなりつつ、大股のM字開脚のまま、指で局部と肛門を開いた。


 ふつうにふつうの、女性器とおしりの穴だった。ものすごくリアルに、普通だった。本当に普通だった。色もきれいに、鏡にばっちり映っている。


 (なにこれ……オリエント……業!?)

 思わず引きつって笑っている自分が見える。

 「何をやってるの!?」


 我へ返る前に跳びあがってベッドの上に正座する。ドアを開けたクロタルが信じられないものを見た目つきで、凍りついていた。


 「い、いやっ、いやあのその、すみません!! あの、あの、すごく、なって……」


 思わず口走った。が、それは核心だった。クロタルは何か得心して、手に持っていたイフカの着替えを机の上に置いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る