第16話

「はいはい、わかったよ」


宇崎が俺にすうっと近づいて来た。


――えっ?


次の瞬間、俺は頭部に強い衝撃を感じた。


そしてそのまま意識を失った。



目覚めた。


ベッドの上だ。俺は起き上がろうとした。


――えっ?


有り得ないような体勢になり、バランスを崩し、床に落ちて尻餅をついた。


――いったい、どうなってる?


俺の目に写ったもの。それは俺自身の下半身だった。


そして信じられないことに、右足の膝から下がなくなっていることに気付いた。


――えええっ!


右膝に包帯がぐるぐる巻きにされていたが、そこから先がなにもないのだ。


あまりのことにそのまま動けず、ただ膝を見ていると、宇崎が入って来た。


手に一枚の皿だけを持って。


「おまたせ。君のためにいい肉を持ってきたよ」


見て、嗅いで、俺にはわかった。


それはまごうことなき極上の肉であるということが。



       終

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極上の肉を、この俺に ツヨシ @kunkunkonkon

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