第七話

 教師は永遠の沈黙をほどいた。

 教師はせつやくわんしてこたえた。

〈これはむずかしい問題ですね厳密には問題はむずかしくないのですがけんかくされる〈解答〉がむずかしいというか想像をぜっしていますぼくは多元宇宙論については窮極集合の立場をとっていますすなわち数学的に計算できるしつかいの宇宙に世界は分岐してゆくとかんがえるのですゆゑに矛盾するかもしれないけれども〈分岐の制限された宇宙〉もまた数学論的に究極集合にほうされているかもしれない実際に西暦一九五四年度のノーベル賞物理学賞を受賞したマックス・ボルンの理論〈ボルン効果〉によれば量子論的波動関数のしゆうれんには確率分布が適応されることが証明されていますこの刹那にを大地震が猛襲する確率は単純に計算すれば五分五分のはずですが無論そう簡単に大地震は勃発しないのです二重スリット実験において量子レベルでのかんしようじまができるときに最初のうちは〈濃密なしまようと淡泊なしまよう〉ができてゆく部分をイメージしてもらえればいいでしょうひつきようきみの認識する〈一本道〉の未来とは宇宙内のしつかいの素粒子の波動関数に偶然にボルン効果が発揮せしめられたとかんがえられるのですこれこそ〈想像をぜっする偶然のつみかさね〉で発生した異常といえます素粒子の波動関数はプランク秒単位でしゆうれんするので〈一本道〉の人生は5*10の44乗*60秒*60分*24時間*365日*70年という天文学的数字を世界のすべての素粒子の波動関数におけるコヒーレンスにかけあわせた数値にボルン効果がはたらいた結果といえますこれはせきです無論せきには喜劇もあれば悲劇もあるきみがそれを喜劇とよべるか悲劇とよべるかの問題なのですのうべんたつをふるったようにきみたちの未来は無限に分岐しているといえどいんせきはきみの未来のしつこくとなるでしょうきみはいま窮極の岐路にたたされているのです片方の道にはよりどりみどりひやつりようらんの道程がえんされている片方の道はひとつの結末にしかほうちやくしないながくまがりくねった一本道だ前者の道は神の道であり後者の道は奴隷の道でもある無論神はまた孤独であり奴隷には奴隷の仲間がいるひつきよう神の道には存在しないものが奴隷の道には存在するかもしれませんそれを〈愛〉とよびたくなるのが人間ですがぼくには断言できないはやきみの脳内の現象は我我人類の想像力をひようぜんりようしているのですまたきみの選択により世界の波動関数のしゆうれんはすべて決定されるわけですが無論きみはそんなことをこうかくしなくていいのですよきみが世界を一本道のいちれんたくしようとすることで世界規模の戦争を回避できなかったり人類が滅亡したりしてもなんらざんさんすることはないのです先程の言葉をつかえば人類をみなごろしにしてでも掌握したいものが愛だからです〉と。

 ぼくは一晩徹夜してかんがえた。

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