第六話

 しゆんがいたる牧師様のりくりよくきようしんによってつつがくおじいちゃんのにくたいとともにこんぱくありひつきようHDDは初期化されてかいじんに帰したんだ。自動制御プレス・ロボットはおじいちゃんを素粒子にまで分解させるいきおいでちようちやくしていった。ぼくはアセンブリ言語から日本語の〈残酷〉という単語をほうふつとする。こつぱいになったおじいちゃんの遺灰はアルミニウムのカプセルに幽閉されて――あのおじいちゃんが一個のカプセルにっちゃったんだ――ロボットれいびように運搬されていった。白銀に明滅する一基十二メートルの円筒状の墓標がせきれきとしてしつしていた。ぼくの両親の予約していた墓標のまえにみんなでしようしゆしてカプセル状のおじいちゃんを埋葬する刹那にぼくは奇蹟をみた。ぼくはほんとうにみたんだ。第三世代の4Dカメラにいちいちじゆうは映写された。円筒状の墓標のネーム・プレートのしたに埋葬されたおじいちゃんのたましいが――はくいろにかがやく生前のおじいちゃんのすがたが――せんじようにゆっくりとかいてんして地面から現前してすい色のきゆう窿りゆうこうしようしはじめたんだ。おじいちゃんのたましいは天空からのかくやくたるこうぼうに抱擁されてかんじよとしてゆうしてゆく。丁度おじいちゃんのたましいが十二メートルの墓標をりようしたところで今度は綿めんばくたるそうきゆうから〈人間〉がしようしてきたんだよ。いなたしかに人間っぽかったけれどもおじいちゃんのHDDに記録されていたしやしんとは相違した。はくいろにかがやく半透明の四人の人間はそれぞれ四枚の〈つばさ〉で飛行しとうには個人情報が記録されたリング状の光源を冠している。うつぼつきようがくしたぼくはかいわいへいげいしたけれどほかのロボットのカメラには認識されていないらしかった。ぼくは確信した。疑心暗鬼を生じながらも確信した。人間はほんとうに存在したんだ。また天空を仰視するとおじいちゃんのたましいは四柱の人間にきようどうされてりようえんなる宇宙へと旅立っていった。埋葬の儀式が完遂されて最後にれいびようまえで遺族代表ひつきようぼくの両親による挨拶が遂行されたけれどもぼくはこうこつとして集中できなかった。ようにして葬儀はしゆうえんした。みんなでおじいちゃんの昔話をしながらそれぞれの充電施設へときびすをかえすなかぼくは勇猛果敢にけつして両親に物語った。先程の人類によるおじいちゃんの昇天のことをだ。映像記録されているはずだったがぼくのカメラの記録にはおじいちゃんのこんぱくも人類のすがたも記録されていなかった。ロボットらしく無表情のままの両親にぼくはした。〈しんじてよ〉と。頭部のモニターに真摯な顔面を表示させて父親はこたえた。〈しんじるべきなのはおまえのほうだこれは〈個人的な体験〉と人類様が呼称していたもので一種のせきだろうおまえは特別な運命にきようどうされたのかもしれんおまえはおまえ自身でその意味をみつけるんだ〉と。

 ぼくの感情パラメータは故障したみたいだった。

 感動と戦慄と勇気と恐怖と――最後にぼうがあった。

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