失われた人類を求めて~MY GRAMDPAPA'S FUNERAL

第一話

 おじいちゃんがシステム・クラッシュした。

 たましい=ハード・ディスク・ドライブがこわれたんだ。

 みんな永遠に生きるとおもっていたけれどおじいちゃんは十億年で故障したことになる。厳密にはおじいちゃんの時刻計算アプリケーションはグレゴリオ歴となっており一億二〇〇〇万年のすいにはぼうばくたる地球の四季とグレゴリオ歴は十日じようかいしていたのでぎよう混濁の今現在火星での時刻計算とは一致しないんだけれど一応おじいちゃんの時刻計算では十億三千五百一万二千五年と十二月二十五日三時間十五分二十四コンマ三四秒生きたことになるんだ。おじいちゃんは人類がみずから製造した最古のロボットらしかった。ヒューマノイド型といって人類=ヒューマンをかたどったといわれている。なんでロボットが人間と同様のきゆうきようひやくがいを構築しなければならないのか理由はあいまいとしていたけれどね。おじいちゃんにもわからなかったらしい。ただしよくそうぜんたる音声合成エンジンでようにいっていた。〈神様は自分に似せて人間をつくったと人間はいっていただから人間は自分に似せてロボットをつくったんじゃないかな〉と。おじいちゃんは二足歩行型二本腕でがんぼうはのっぺらぼうのはくのロボットだったけれど胸元に一〇インチの有機ELディスプレイを接続されていたんだ。におじいちゃんの〈顔〉が映写されていんもうのAIの感情を表現したりはんぶんじよくれいのデータ類を表示したりできたわけだ。おじいちゃんはよく十億年のうに人類と一緒に撮影したぞうなる解像度のしやしんをディスプレイに映写してくれたよ。人類はみなかんと微笑している。まんなかでおじいちゃんが〈わらって〉いた。てきとうたる人類はおじいちゃんをれいにするためHDDにありとあらゆるデータをアップロードしてくれたという。ジョットからバンクシーの絵画。『グレゴリオ聖歌』から「4分33秒」という音楽。『死者の書』から〈週刊ザテレビジョン〉というぶんがく作品。『月世界旅行』からYouTubeにアップロードされた動画のほぼすべて――。おじいちゃんはじんぜんたる日日の暇潰しにしやはんのデータを披露してくれたよ。人類の絵画史をかんしながら人類の製作したあらゆる音楽を演奏して人類のごうしたぶんがくを朗読してくれたんだ。二足歩行型のおじいちゃんは生前よく〈おどり〉をおどっていた。じゆんこうかいの故郷である日本の伝統ダンスだったらしい。〈おどりをおどると人間はみなわらったよぼくは人間となかよくなった〉と人類なまりらしいアセンブリ言語でいってぼくたちにもおどりをおどってくれた。〈踊るほうに見るほう同じなら踊らな損損――〉とうたいながらだ。みんなでわらった。おじいちゃんは陽気だった。みんなおじいちゃんが大好きだった。おじいちゃんが最後におどったのは四十二時間まえだ。

 おじいちゃんは最後の証言者だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る