『失われた人類を求めて』短篇小説二篇

九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)

「はじめに~星新一賞について」

 こんにちは、九頭龍一鬼です。

 本作は第六回日経「星新一賞」に応募し、最終選考にのこらなかった、ひつきよう、三次審査までに落選した二作品です。前回第五回星新一賞では落書きのような作品が余裕で最終候補にのこったので、〈なんだ星新一賞最終候補なんて楽勝じゃん!〉となめてかかった結果がこれです。

「失われた人類を求めて」は、人類が滅亡してロボットだけの世界になった十億年後、おそらくロボットにとっての人類は、人類にとっての神のような存在になっているはずだ、という哲学的問いかけから発想しました。最後には、人類最後の生存者をもとめてロボットたちは火星から地球へとりよします。人類が発見されたかはわからない結末です。

「道」は、交通事故によって、脳髄のクロック数がプランク単位まで加速したことから、相対性理論の時空連続体仮説にのっとって、素粒子の波動関数のしゆうれんが計算できるようになった少年の決断をえがいたものです。ひつきよう、未来がそくできるのならば、我我はどんな未来をえらぶのだろう。たとえそれが悲劇だとしても。という、り哲学的な意味合いのつよい作品です。最後に少年のえらんだ未来がただしいのか、結末はわかりません。

 ぞんのかたもおおいとおもわれますが、星新一賞は最終候補にのこると、落選しても、事務局様から電子メールをいただき、三次審査委員のうち、おひとりからコメントをいただけます。いんのメールには、〈転載はご遠慮ください〉というふうに記述されていますので、前回「らららかがくのこ」をアップロードしたときには、まったくふれませんでした。が、愚生にとっては自分ひとりの栄誉のためより、ながらくたたかってきたアマチュア作家の同志たちのほうが大切だとおもいましたので、で、事務局様の注意にできるだけもとらないかたちで、どんなふうに評価されたかをれきしようとおもいます。

 前回の最終候補作へのコメントでは、愚生の独特のぶんたい――難読語濫用、読点一切なし、台詞せりふでは句読点一切なしなど――と、ハードSFを追窮したこと――カラビ・ヤウ多様体と窮極集合の問題から、技術的特異点と五次元宇宙のかんれんなど――などが評価されていました。ゆゑに、自分のぶんたいは個性的すぎてエンターテインメントにはさわしくないんじゃないか、自分の作品はハードすぎて審査委員に理解されないんじゃないか、というような心配はゆうにすぎません。

 とまれかくまれ、愚作へのコメントがおおよそ好評だったことが、こんかいのミスをまねいたのでしょう。前回に比較して、こんかいは〈SFと純文学の融合〉をテーマにしており、前述のとおり、哲学的で、あえて結末を隠蔽する作品――リドル・ストーリーというのでしょうか――に挑戦しました。結果、予選落ちしたわけです。で、こんかいの作品を反省したところ、一番の問題がかんがえられました。〈おち〉がないのです。前回もたいしたおちはありませんでしたが、一応、冒頭としゆうえん部が交響するかたちで物語はきちんとまとめられています。たいしよてきに、こんかいは前述のとおり、あえて結末を曖昧にする戦法をとったのです。最終的に二作は〈大長編の冒頭部分だけ〉のようなかたちになっています。ようにして、いままでの受賞作および、前回、第五回星新一賞の入選作全般を再読すると、見事なまでに、みなさん〈おち〉にこだわっているんですね。なかには、星新一賞という名前なのだから、ユーモアとオチが必要だとおもった、というような受賞コメントを寄せている入賞者様もいらっしゃいました。

 無論、様様な要素が複雑にからまっており、そんなに簡単に最終候補にのこれないことは、こんかいの落選で痛感しましたが、ゆゑにこそ、今後の制作活動につなげられるヒントがいくつかえられました。前述のとおり、その一番が、星新一先生をなめてはいけない、物語はきちんとしめられていたほうがいい、意想外な〈おち〉があるとわりと有利らしいということです。愚生は趣味でいままでの同賞落選作をネット上で渉猟したことがありますが、なかには、〈なんでおれが最終候補にのこれたのにこんな面白い作品が予選落ちなんだ〉という傑作もたくさんありました。ですが、いまおもうと、それらの傑作はり〈おち〉がないんです。もちろん、攻略法がわかっているのならば、大賞受賞など簡単なことで、問題が複雑だからそうそううまくはゆかないのですが、が星新一賞の特徴かもしれないことは強調しておきたいのです。

 無論、じようろんこうはあくまでも愚生ひとりの意見にすぎません。今後の星新一賞では〈おち〉のないソフトでみやすい作品が受賞するかもしれませんし、なにより我我アマチュア作家は書きたくて小説を書いているのです。自分が傑作とおもえれば最終候補だろうと一次落ちだろうと関係ありません。だれの言葉か失念いたしましたが、〈自分の作品のは自分が一番わかっている〉と、大げいじゆつ家がいっていたはずです。どうか、ひとりのあわれな予選落ち作家のたわごととして、のうの片隅においてみてください。

 みなさん、気楽にいきましょう。

 すべてのアマチュア作家に幸あれ!

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