向靖1  譜代将の活躍  

向靖しょうせい

 既出:劉裕16、徐羨之4



向靖は字を奉仁ほうじん、小字をという。

河內かだい山陽さんよう県から

江南に疎開してきた一族で、

代々京口けいこうに住まっていた。

そして、劉裕りゅうゆうとは幼馴染だった。


その名が劉裕の祖父と同じであったため、

小字に改名した。


京口けいこう建康けんこう奪還にそれぞれ従事。

しかし建康を落したとはいえ、

残党は未だ多い。

そこで向靖と劉藩りゅうはん孟龍符もうりゅうふは残党討伐に。

白茅はくぼうにて桓歆かんいん桓石康かんせきこう桓石綏かんせきすいを破り、

さらに進軍、壽陽じゅようを陥落させた。

その後、堂邑どうゆうに駐屯した。


南燕なんえん討伐に参戦し、

何か月か臨朐りんく城で戦ったが、落とせない。

そこで向靖と檀韶だんしょうらは別動隊を編み、

敵の死角から臨朐に攻め入った。


このとき向靖は甲冑を着込んだまま

城壁を登り、城内に進入を果たすと、

城を陥落させ、屋上にはためく

南燕の旗を斬り捨てた。

これにより南燕軍は、廣固こうこに撤退。


続いての廣固でも、向靖はやはり率先して

城壁にとりつき、登った。



そして、盧循ろじゅんの強襲。

ここでは南部の守りを任じられた。


盧循が建康正面の長江の中州である

蔡洲さいしゅうに陣を構え、

そこから阮賜げんしと言う男に

建康の南の町、姑孰こじゅくを攻めさせた。


このとき姑孰を守っていたのは

毛脩之もうしゅうしと言う将軍だった。

先んじて敵襲の報せを飛ばしたうえで、

向靖も趙恢ちょうかいを率いて急行。

そして阮賜軍を打ち破り、輜重を奪う。


盧循が撤退を始めたところに

劉裕が追撃を掛ければ、

追撃戦、特に南陵なんりょう雷池らいち左里さり

三ヶ所の戦いにて、

向靖は大戦功をあげた。




向靖,字奉仁,小字彌,河內山陽人也。名與高祖祖諱同,改稱小字。世居京口,與高祖少舊。從平京城,參建武軍事。進平京邑,京邑雖平,而群寇互起,彌與劉藩、孟龍符征破桓歆、桓石康、石綏於白茅,攻壽陽克之。戍堂邑。從征鮮卑,大戰於臨朐,累月不決。彌與檀韶等分軍自間道攻臨朐城。彌擐甲先登,即時潰陷,斬其牙旗,賊遂奔走。攻拔廣固,彌又先登。盧循屯據蔡洲,以親黨阮賜為豫州刺史,攻逼姑孰。彌率譙國內史趙恢討之。時輔國將軍毛脩之戍姑孰,告急續至,彌兼行進討,破賜,收其輜重。盧循退走,高祖南征,彌為前鋒,於南陵、雷池、左里三戰,並大捷。


向靖は字を奉仁、小字を彌。河內の山陽の人なり。名を高祖が祖が諱と同じうせば、小字に改稱す。京口に世居し、高祖と少舊なるを與とす。京城を平らぐに從い、建武軍事に參ず。進みて京邑を平らぐ。京邑の平がると雖ど、群寇は互いに起ち、彌と劉藩、孟龍符は征きて桓歆、桓石康、石綏を白茅に破り、壽陽を攻め之を克す。堂邑に戍す。鮮卑を征せるに從い、大いに臨朐にて戰えど、月を累ねど決まらず。彌と檀韶らは軍を分け間道より臨朐城を攻む。彌は甲を擐じ先に登り、即時にて潰陷し其の牙旗を斬らば、賊は遂に奔走す。攻めて廣固を拔くるに、彌は又た先に登る。盧循の蔡洲に屯據せるに、親黨の阮賜を以て豫州刺史と為し、攻め姑孰に逼る。彌は譙國內史の趙恢を率い之を討つ。時の輔國將軍の毛脩之の姑孰に戍せるに、急を告げ續きて至らば、彌は兼行し進みて討ち、賜を破らば、其の輜重を收む。盧循の退走せるに、高祖は南征せば、彌を前鋒と為し、南陵、雷池、左里の三戰にて、並べて大捷す。

(宋書45-18_暁壮)




以前耳にした「人の能力を作るのは、立場だ」論がまさにドンピシャではまりそーなおひと。何なんすかこの戦歴。重要な戦役で大きな功績を挙げていて、また劉裕が動く時には割とその隙間を埋めるような箇所にいる。絶大な信頼のもと動いていたであろうことが伺われます。


けど「あまりにも信頼がおける人材」だから、のちのちになると内の守り方面に偏重していくのだよね。そうするとド派手な外征の任務にはなかなか当ててもらえず、結果後半では輝かしい戦績が残りづらくなる。そして我々にとっては「えっ誰?」みたいな存在感になっちゃってる。その辺が次話で如実に表れてきます。

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