王康2  洛陽を守る   

いちど彭城ほうじょうに出た王康おうこうであったが、

洛陽らくようには母親を残していた。

なので洛陽に戻る。


するとそのタイミングで、長安ちょうあん失陷。

これは、間もなく洛陽付近も荒れるだろう。

そう悟った王康、長安からの避難民である

張旰醜ちょうかんしゅう劉雲りゅううんらと義勇軍を結成。

百人ほどの兵力で、七百世帯ほどの

避難民たちを守ることに。

洛陽の北西部に位置する金墉きんよう城に入り、

防衛戦の備えをした。


中原の不安定な情勢。

ここにいち早く反応したのは、

劉裕りゅうゆうの粛清を恐れ、北土に逃れていた

東晋とうしん皇族系の人々だった。


名前が上がるのは、

司馬文榮しばぶんえい司馬道恭しばどうきょう司馬順明しばじゅんめい司馬楚之しばそし

の、四名だ。


司馬文榮。邵平しょうへいという人物が、

一族や并州の流遇の民、

約一千世帯を率いて推戴。

金墉城の南に陣取った。


司馬道恭は東垣より三千人を率いて西に、

司馬順明は五千人を率いて陵雲台りょううんだいに。


ここで、司馬順明は一番配下の多かった

司馬文榮を暗殺。その勢力を吸収。


最後の司馬楚之は柏谷塢はくやうに駐屯。

北魏ほくぎ将の于栗磾うりつだんが遊軍として芒上ぼうじょうに。


これらの勢力が次々に金墉城を攻めたが、

王康は約二ヶ月に渡り、守り通した。


劉裕が宋王に進封されたあたりで、

王康を寧朔さくねい將軍、河東かとう太守に任ずる、

という書簡をもたせ、姜囗きょうこうという人に

洛陽の救援に出向かせた。


救援部隊の到着により、

司馬氏の諸勢力は、たちまち逃げ出す。


劉裕は、王康のこの義挙を絶賛。

西平せいへい県の男爵、龍驤將軍とした。

そして王康の家族全員を、

建康けんこうに招き、住まわせた。


その後の王康、農業養蚕に励み、

地域住民もまた王康をよく頼り、

また親しんだ。


420年、金墉にて死亡。

恐らくは僑県だろう。

49 歳だった。




求還洛陽視母,尋值關、陝不守,康與長安徙民張旰醜、劉雲等唱集義徒,得百許人,驅率邑郭僑戶七百餘家,共保金墉城,為守戰之備。時有一人邵平,率部曲及并州乞活一千餘戶屯城南,迎亡命司馬文榮為主。又有亡命司馬道恭自東垣率三千人屯城西,亡命司馬順明五千人屯陵雲臺。順明遣刺殺文榮,平復推順明為主。又有司馬楚之屯柏谷塢,索虜野阪戍主黑弰公遊騎在芒上,攻逼交至,康堅守六旬。宋臺建,除康寧朔將軍、河東太守。遣龍驤將軍姜囗率軍救之,諸亡命並各奔散。高祖嘉康節,封西平縣男,食邑三百戶,進號龍驤將軍。迎康家還京邑。勸課農桑,百姓甚親賴之。永初元年,卒金墉,時年四十九。


洛陽に還じて母を視んことを求め、尋いで關、陝の守らざるに值い、康は長安の徙民の張旰醜、劉雲らと義徒を集めたらんと唱え、百許りの人を得、邑郭の僑戶七百餘家を率い驅せ、共に金墉城を保ち、守戰の備えを為す。時に一なる人、邵平有り、部曲、及び并州の乞活の一千餘戶を率い城の南に屯ざば、亡命の司馬文榮を迎え主と為す。又た亡命の司馬道恭の東垣より三千人を率い城の西に屯じ、亡命の司馬順明の五千人の陵雲臺に屯ぜる有り。順明は遣りて文榮を刺殺せしめ、平ぐらば復た順明を推して主と為す。又た司馬楚之の柏谷塢に屯ぜる有り、索虜の野阪戍主の黑弰公は遊騎にて芒上に在り、攻め逼り交わりたる至れど、康は六旬を堅守す。宋臺の建つるに、康を寧朔將軍、河東太守に除す。龍驤將軍の姜囗を遣わせ軍を率い之を救わしむるに、諸亡命は並べて各おの奔散す。高祖は康の節を嘉し、西平縣男、食邑三百戶に封じ、號を龍驤將軍に進ましむ。康が家を迎え京邑に還ぜしむ。農桑を勸課し、百姓は甚だ之に親しみ賴る。永初元年、金墉にて卒す、時に年四十九なり。

(宋書45-15_暁壮)




長安失陥をいいことに、司馬氏の残存勢力が、おそらく北魏の支援を受けて洛陽を落しにかかっているさまが描かれていますね。この頃の洛陽周辺の様子とか、晋書載記とか魏書には載ってるのかしら。まぁ、おいおい見えてくるのでしょう。

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