謝晦20 ラウンド1   

謝晦しゃかい江口こうこうに出、

対する到彥之とうげんし彭城洲ほうじょうしゅうに。


庾登之ゆとうし巴陵はりょうに陣取ったが、

戦闘を恐れ、進まない。


その時、雨が長らく降っていた。

庾登之の幹部、劉和之りゅうわしが言う。


「この雨はどちらにも降っているもの。

 有利不利を言っても始まりません。


 それよりもここで手を拱いて、

 檀道済だんどうさい様に来られてしまえば、

 もはやなすすべはありません。


 一気に勝負を決めるべきです」


庾登之、とにかくビビりまくりである。

部下の陳祐ちんゆうに大きな袋を作らせた。

そこに茅を詰め込ませ、

帆柱に掛けさせる。


「これで一隻の艦を焼きましょう。

 そうして天に晴れ間を願い、

 決戦をのらりくらりとかわすのです」


謝晦、庾登之の進言を採用。

進軍を十五日間停止した。


また彭城洲にいた到彦之軍の前峰、

蕭欣しょうきんを攻撃。


この任務を謝晦、

孔延秀こうえんしゅうという人に任じる。

孔延秀は三千人を率い、攻撃に出た。

このとき蕭欣は陣の後ろのほうで

盾を抱え、ぶるぶる震えていた。


あまつさえ戦闘の指揮を放棄し、

船に逃げ帰るありさまである。

蕭欣軍はなすすべもなく瓦解。


孔延秀は勝ちに乗じてさらに

彭城洲に築かれていた陣地に攻め込んだ。


勢いをとどめ切れないと判断した到彥之、

隱圻いんきまで撤退し、体勢を立て直した。




晦至江口,到彥之已到彭城洲。庾登之據巴陵,畏懦不敢進。會霖雨連日,參軍劉和之曰:「彼此共有雨耳,檀征北尋至,東軍方強,唯宜速戰。」登之恇怯,使小將陳祐作大囊,貯茅數千斛,縣於颿檣,云可以焚艦,用火宜須晴,以緩戰期。晦然之,遂停軍十五日。乃攻蕭欣於彭城洲,中兵參軍孔延秀率三千人進戰,甚力。欣於陳後擁楯自衛,又委軍還船,於是大敗。延秀又攻洲口柵,陷之,彥之退保隱圻。


晦は江口に至り、到彥之は已に彭城洲に到る。庾登之は巴陵に據せど、畏懦し敢えて進まず。霖雨の連日なるに會い、參軍の劉和之は曰く:「彼と此は共に雨を有したるのみ、檀征北の尋いで至らば、東軍は方に強し、唯だ宜しく速戰すべし」と。登之は恇だ怯え、小將の陳祐をして大囊を作さしめ、茅を數千斛貯め、颿檣に縣け、云えらく「以て艦を焚き、火を用い宜しく晴れを須め、以て戰期を緩むべし」と。晦は之を然りとし、遂には軍を十五日停む。乃ち蕭欣を彭城洲に攻め、中兵參軍の孔延秀は三千人を率い進みて戰い、甚力す。欣は陳びたるの後ろにて楯を擁え自衛し、又た軍を委ね船に還らば、是に於いて大敗す。延秀は又た洲口柵を攻め、之を陷し、彥之は退きて隱圻を保つ。

(宋書44-20_衰亡)




謝晦軍到彦之軍共に、まるで士気が振るってないグダグダな戦いだったってのがよくわかる。こう言う雑な戦いに駆り出されて、あまつさえ戦死した兵士たちって悲惨だな……まるで死ぬことに納得できる気がしない。よくこんなオモシロ仲間割れの隙をついて攻め下らなかったもんですよ北魏さん。劉義符即位の時よかよっぽど防衛力的にひでえと思うんだけど、この時。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る