謝晦10 決戦準備    

なんだかんだあり、謝晦しゃかい

遂に決戦を決意する。


謝晦は南蛮校尉なんばんこうい府を焼き払い、

これらをすべて建康けんこうとの決戦に

充てようとした。


兵士たちの多くはこちらから出向き、

戦いを挑むべきだ、という。


その中にあって、謝晦、

副官の庾登之ゆとうしに言う。


「ここより、我々は攻め下ろうと思う。

 そなたは兵三千をもって

 この江陵こうりょう城にとどまり、

 劉粹りゅうすいに備えていていただきたい」


すると庾登之は言う。


「下官の親老は建康におり、

 そこに辿り着くすべもありません。


 どうにも、心がざわついてなりません。

 謝晦様のご命令とは言え、

 どうして受けることができるでしょうか」


すると謝晦、

周りの者たちに向かい、言った。


「戦士が、三千だ!

 この兵士たちで、城を守れると思うか?」


すると、南蛮校尉府で副官を務めていた

周超しゅうちょうが進み出た。


「守るだけではなく、敵が攻めてくれば、

 むしろ迎撃して功績を

 上げることすら可能でしょう!」


そう言って盛り上がる謝晦の部下たち。

辞退は不可能だ、

そう見て取った庾登之は、言う。


「周超どのはご雄弁でいらっしゃる。

 ならば下官の代わりに、

 かれを副官となさるのがよいでしょう。


 この江陵の守備については、

 お引き受けいたしましょう」


これにより謝晦、その場で周超を

副官に任命した。


また庾登之については

事務方の総取締とし、

江陵守護についてはそのまま任命した。




晦欲焚南蠻兵籍,率見力決戰。士人多勸發兵,乃立幡戒嚴,謂司馬庾登之曰:「今當自下,欲屈卿以三千人守城,備禦劉粹。」登之曰:「下官親老在都,又素無旅,情計二三,不敢受此旨。」晦仍問諸佐:「戰士三千,足守城不?」南蠻司馬周超對曰:「非徒守城而已,若有外寇,可以立勳。」登之乃曰:「超必能辦,下官請解司馬、南郡以授。」即於坐命超為司馬、建威將軍、南義陽太守,轉登之為長史,南郡如故。


晦は南蠻兵籍を焚かんと欲し、率いて決戰を見力す。士人の多きは兵を發せんことを勸め、乃ち幡を立て戒嚴せば、司馬の庾登之に謂いて曰く:「今、當に自ら下らんとす。卿に屈し三千人を以て守城し、劉粹を備禦せんことを欲す」と。登之は曰く:「下官が親老は都に在り、又た素より旅無く、情は二三を計う、敢えて此の旨を受けず」と。晦は仍りて諸佐に問うらく:「戰士三千、守城に足りるや不や?」と。南蠻司馬の周超は對えて曰く:「徒に守城なるのみに非ず、若し外寇有らば、以て勳をも立つるべし」と。登之は乃ち曰く:「超は必や能辦たれば、下官は司馬を解さるを請い、南郡を以て授けん」と。即ち坐にて命じ超を司馬、建威將軍、南義陽太守を為し、登之を轉じ長史と為し、南郡は故の如し。

(宋書44-10_言語)




微妙に意味が取りづらいのだけれど、この読みで合っていれば、南蛮、つまり江陵の南のほうにいる「まつろわぬ民」を牽制する任務の兵士たちも建康との戦いに回しました、という事になるだろうか。この辺における劉粋の動向とかも気になるとことではありますが、待て次回、かなあ。


庾登之

宋書にも伝があり、そこでは「謝晦に請われて副官となったはいいが、基本的に謝晦の風下についていることが気にくわなかった」的に書かれている。なお、奥さんが謝晦の奥さんの姉妹。まぁ、この人はこの人で庾冰ゆひょうの孫だし、色々プライドもあったろうね。

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