謝晦8  文帝の異謀   

劉義隆りゅうぎりゅうが立ち、しかしまだ元嘉げんか

元号が変わっていなかった頃のことだ。


北魏ほくぎの侵攻により、黄河一帯を失陥。

劉義隆、これらを徐羨之じょせんしらの咎とし、

彼らを殺そうと画策。


ただし、名目はあくまで北伐であった。

再び長安ちょうあん洛陽らくようを奪回し、漢魏かんぎ以来の

皇帝たちの陵墓を整備せん。

そう宣言し、船を整備させたのだ。


劉義隆の意図はあからさまであった。

ゆえに傅亮ふりょう、謝晦に手紙を送る。


「陛下は北伐をうたっておられるが、

 未だ確定はされておらぬ。


 その意図を、皆が図りあぐねている」


更に、こうも書く。


「臣下たちは北伐を諌めておる。

 すると陛下は、萬幼宗ばんようそう殿を遣わせ、

 そなたに諮問しよう、と仰せであった」


既にこのとき、朝廷では万全の

アンチ顧託戒厳体勢。

傅亮と謝晦がなしたこのやり取りも、

劉義隆側に漏れていた。




先是景平中,索虜為寇,覆沒河南。至是上欲誅羨之等,並討晦。聲言北伐,又言拜京陵,治裝舟艦。傅亮與晦書曰:「薄伐河朔,事猶未已,朝野之慮,憂懼者多。」又言:「朝士多諫北征,上當遣外監萬幼宗往相咨訪。」時朝廷處分異常,其謀頗泄。


是の先の景平中、索虜の寇ぜるを為すに、河南は覆沒す。是れに至りて上は羨之らを誅し、並び晦を討たんと欲す。聲は北伐を言い、又た京陵を拜さんと言い、舟艦を治裝す。傅亮は晦に書を與えて曰く:「河朔を薄伐せんとせど、事は猶お未だ已まざらば、朝野の慮に憂懼せる者多し」と。又た言えらく:「朝士の多きは北征を諫ず、上は當に外監の萬幼宗を遣りて往きて相い咨訪せしめん」と。時の朝廷の處分は常に異なり、其の謀は頗泄す。

(宋書44-8_仇隟)



萬幼宗

誰だよお前。なに重大な任務さらっと請け負ってんだよ。いや囮な感じだし、重大じゃないっちゃ重大じゃないんですが、少なくとも劉義隆と謝晦とに渡りをつけられるだけの貫目はあるひとなんですよね。ただ現状だとそれ以上はわからない。この人については、よくよく頭に引っ掛けておくべきなんだろうな、って思うのでした。

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