檀道済2 北伐前峰将   


劉裕りゅうゆう後秦こうしん征伐に当たっては、

檀道済だんどうさいを前峰として進軍させた。


淮水わいすい肥水ひすいを渡り北上すれば、

進軍先の諸城主たちはたちまち降伏。


許昌きょしょうでは姚坦ようたん、及び大將の楊業ようぎょうを捕獲。

成臯せいこうでは韋華いかが降伏。


そのまま洛陽らくように進軍、

そこでは姚沈ようしんが降伏してきた。


あらゆる城を抜き、砦を破り、

四千名以上もの捕虜を得た。


この捕虜について進言するものがあった。


「すぐさま皆殺しとしましょう。

 その生首を積み上げ、首塚を作り、

 蛮族どもを震え上がらせるのです」


うわぁ……蛮族……


だが、檀道済は言う。


「蛮族とて人の子よ。

 中原を奪ったことは罪と言えよう。


 だがその罪は、民に帰すべきではない。

 むしろ我々は、かの者らを

 今日この日にて、その罪業より

 解き放つために来たのだ」


そして捕虜をみな解放、

家に帰ることを許した。


この檀道済の振る舞いに

後秦人たちは大いに喜び感動し、

こぞって帰順を申し出てきた。


そして檀道済、更に進軍。

潼關どうかんでは後秦屈指の暁将、

姚紹ようしょうと対峙した。


諸軍と共同して姚紹を攻撃。

そして姚紹が陣没したのを受け、

降伏させた。




高祖北伐,以道濟為前鋒出淮、肥,所至諸城戍望風降服。進克許昌,獲偽寧朔將軍、潁川太守姚坦及大將楊業。至成臯,偽兗州刺史韋華降。逕進洛陽,偽平南將軍陳留公姚沈歸順。凡拔城破壘,俘四千餘人。議者謂應悉戮以為京觀。道濟曰:「伐罪弔民,正在今日。」皆釋而遣之。於是戎夷感悅,相率歸之者甚眾。進據潼關,與諸軍共破姚紹。


高祖の北伐せるに、道濟を以て前鋒と為し淮、肥を出、至る所の諸城戍にて風を望まば降服す。進みて許昌を克し、偽の寧朔將軍にして潁川太守の姚坦、及び大將の楊業を獲う。成臯に至らば、偽の兗州刺史の韋華が降ず。逕ちに洛陽に進み、偽の平南將軍にして陳留公の姚沈が歸順す。凡そ城を拔き、壘を破り、四千餘人を俘とす。議せる者は「應ちに悉く戮し以て京觀と為すべし」と謂う。道濟は曰く:「罪を伐ち民を弔すは、正に今日に在り」と。皆な釋し之を遣わしむ。是に於いて戎夷は感悅し、相い率いて之に歸す者、甚だ眾し。進みて潼關に據り、諸軍と共に姚紹を破る。

(宋書43-18_暁壮)




京觀

この言葉がまさか晋軍の言葉として出てくるとはたまげたなぁ……単純に言えば首塚です。なんでこの字を宛てるようになったかは謎。画像検索してもそれほどショッキングなものは出てこないけど、まぁ、画像検索非推奨ではあります。いまウィキペディアで見たら、檀道済のこの言葉は結構当時の京観観的なものに対して大きな画期だったっぽい。


古瀬奈津子 編『東アジアの礼・儀式と支配構造』に載る、雷聞(江川式部訳)「"京観"から仏寺へ―隋唐時期の戦場遺体の処理と救済―」に、この辺の情報が載っている、とのことだが、……まぁ国会図書館とか頼るべき案件だろうなあこれ。

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