傅亮2  ヒキコモリタイ 

傅亮ふりょうは歴史書、儒家の典籍を

広く知悉していた。

また、特に文章を書くのに長けていた。


初任は建威けんい參軍。

ついで、桓謙かんけんの参謀となる。


桓玄かんげんが簒奪すると、

傅亮の知識及び文才が知られ、

秘書郎として招聘を受けた。

の歴史などを書かせようとしたのだ。

しかし、役職につく前に、

桓玄は敗北した。


クーデター直後、孟昶もうちょうに取り立てられた。

あくる年、まあ色々あって

西省せいしょうに勤務し、詔勅などの起草を

司るようになった。

領軍りょうぐん将軍の副官となり、

中書郎の滕演とうえんの代わりに、

引き続き西省に。


だがその頃、母が死亡。

喪に服すため、一旦離職した。

そして喪が明けると、劉毅りゅうきの部下に。


ややあって、ふたたび滕演の副官となった。

更に411年には散騎侍郎さんきじろうとなったが、

勤務先はやはり、もっぱら西省。

ここでもやはり滕演の代役である。

その後も役職こそ上がっていったが、

職務は例によって西省での、著述。


この頃、劉裕りゅうゆうの耳に、

傅亮の堅実な働きぶりが届いたようだ。

彼に東陽とうよう郡太守を任せると良さそうだ、

劉裕はそう判断したが、

先に兄の傅迪ふてきに打診した。


この抜擢に、傅迪は大喜び。

劉裕の意図を傅亮に伝える。


傅亮、兄には答えを示さず、

その代わりに、すぐさま

劉裕のもとに赴き、会見した。


「東陽太守への抜擢を伺いました。

 我が家の貧乏ぶりを思えば、

 喜んで承りたいところです。


 しかし、申し訳ございません、

 どうにも、こう……外に出るのが、

 いささか、苦手でありまして」


おいおい、劉裕は笑う。


どんな役職にあっても西省にいたのは、

むしろ傅亮が望んだことだったのだ。

官界に出ず、黙々と

書いてさえおればいい仕事。


そういう事なら、と劉裕は言う。


「つまり、欲しいのは食い扶持なわけだな。

 わかったわかった、

 なら、東陽太守の役職と

 同じレベルで今の仕事をしろ。

 そしたら、見合うぶんをやろう」


その仕事ぶりが認められ、

司馬休之しばきゅうしを討伐する頃になり、

劉裕の太尉たいい府付きとなった。


とはいえ、仕事は例によって西省。

同僚の羊徽が中書郎ちゅうしょろうとなり、

詔勅等の作成に携わる立場となったので、

彼の職務を肩代わりするのだった。




亮博涉經史,尤善文詞。初為建威參軍,桓謙中軍行參軍。桓玄篡位,聞其博學有文采,選為秘書郎,欲令整正秘閣,未及拜而玄敗。義旗初,丹陽尹孟昶以為建威參軍。義熙元年,除員外散騎侍郎,直西省,典掌詔命。轉領軍長史,以中書郎滕演代之。亮未拜,遭母憂,服闋,為劉毅撫軍記室參軍,又補領軍司馬。七年,遷散騎侍郎,復代演直西省。仍轉中書黃門侍郎,直西省如故。高祖以其久直勤勞,欲以為東陽郡,先以語迪,迪大喜告亮。亮不答,即馳見高祖曰:「伏聞恩旨,賜擬東陽,家貧忝祿,私計為幸。但憑廕之願,實結本心,乞歸天宇,不樂外出。」高祖笑曰:「謂卿之須祿耳,若能如此,甚協所望。」會西討司馬休之,以為太尉從事中郎,掌記室。以太尉參軍羊徽為中書郎,代直西省。


亮は博く經史を涉り、尤も文詞を善くす。初にして建威參軍と、桓謙の中軍行參軍と為る。桓玄の篡位せるに、其の博學にして文采有すを聞き、選ぜられ秘書郎と為り、秘閣を整正せしめんと欲せど、未だ拜さるに及ばざるに玄は敗す。義旗の初、丹陽尹の孟昶は以て建威參軍と為す。義熙元年、員外散騎侍郎に除せられれ、西省に直し、詔命を典掌す。領軍長史に轉じ、中書郎の滕演に以て之に代る。亮の未だ拜さざるに、母の憂に遭い、闋に服し、劉毅の撫軍記室參軍に為り、又た領軍司馬に補せらる。七年、散騎侍郎に遷り、復た西省に演に代りて直す。仍いで中書黃門侍郎に轉じ、西省に直すは故の如し。高祖は其の久直勤勞なるを以て、以て東陽郡に為さんと欲し、先に以て迪に語り、迪は大いに喜び亮に告ぐ。亮は答えず、即ち馳せ高祖に見えて曰く:「伏して恩旨、東陽を擬せるを賜るをを聞き、家貧忝祿なれば、私計にて幸いと為さん。但だ憑廕の願い、實に本心に結せど、天宇に歸せるを乞う、外出を樂しまず」と。高祖は笑いて曰く:「卿は祿を須みたるのみと謂ゆ。若し能の此れに如かば、甚だ所望に協さん」と。司馬休之を西討せるに會し、以て太尉從事中郎と為り、記室を掌す。以て太尉參軍の羊徽の中書郎に為りたるに、西省に直すを代る。

(宋書43-13_政事)

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