詩妖5  元顕の時の予言 

司馬元顯しばげんけんが権勢を奮っていた頃、

こんな流行歌があった。


當有十一口 當為兵所傷

木亙當北度 走入浩浩鄉

 十一個の口が兵に傷つけられよう。

 木亙は北のかた、浩浩鄉に逃げるだろう。


また、こんな歌も。


金刀既以刻 娓娓金城中

 宿命の予言を刻まれた金刀が、

 天子の居ます宮殿に飾り立てられている。


これらは、通説では襄陽じょうようの高僧、竺曇林じくどんりん

作ったものである、とされており、

世間に非常に流行した。


なお、これらの詩を孟顗もうぎと言う人が

以下のように解釈している。


「十一口」は桓玄かんげんのあざなを表している。

「木亙」は桓の変字体である、と。


桓氏一門が軒並み長安ちょうあん洛陽らくよう

逃亡しようとした。

彼らにとっての理想郷、

ゆえに「浩浩鄉」である、と。


「金刀」は、言うまでもない。劉。

クーデターに参加した諸将に

劉姓のものが多かったためだ。


そして「娓娓」は、見目麗しき顔、を示す。

造作の話ではない。

威徳に満ち溢れた顔、とかそんな意味だ。




司馬元顯時,民謠詩雲:「當有十一口,當為兵所傷。木亙當北度,走入浩浩鄉。」又雲:「金刀既以刻,娓娓金城中。」此詩雲襄陽道人竺曇林所作,多所道,行於世。孟顗釋之曰,「十一口」者,玄字象也;「木亙」,桓也。桓氏當悉走入關、洛,故雲「浩浩鄉」也。「金刀」,劉也。倡義諸公,皆多姓劉。「娓娓」,美盛貌也。


司馬元顯の時,民謠詩に雲えらく:「十一なる口を有せるは、當に兵に傷つかる所と為らん。木亙の當に北に度したらんとせるに、走りて浩浩鄉に入らん」と。又た雲えらく:「金刀は既にして以て刻まれ、娓娓として金城が中たり」と。此の詩は襄陽の道人の竺曇林の作りたる所と雲われ、多く道われたる所となり、世に行く。孟顗は之を釋して曰く、「十一口」は玄が字の象なり、「木亙」は桓なりと。桓氏の當に悉く走りて關、洛に入らんとせば、故に雲えらく「浩浩鄉」なり。「金刀」は劉なり。義を倡えたる諸公は、皆な多きが姓を劉とす。「娓娓」は美盛なる貌なり。

(宋書31-7_言語)




桓玄打倒クーデターに参戦してる劉氏

劉裕りゅうゆう劉毅りゅうき劉道規りゅうどうき劉藩りゅうはん劉粋りゅうすい劉蔚りゅううつ劉珪之りゅうけいし劉懐粛りゅうかいしゅく劉懐慎りゅうかいしん劉遵考りゅうじゅんこう劉虔之りゅうけんし劉鐘りゅうしょう、などなど。一応名前拾える人は全部拾えたとと思うけど、どうなのかしらね。

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