詩妖4  桓玄はKUSO 

桓玄かんげん簒奪の折、童謡が歌われた。


草生及馬腹 烏啄桓玄目

 馬の腹にまで草が生い茂る頃、

 カラスが桓玄の目をついばむだろう。


クーデターが起き、桓玄が江陵こうりょうに逃亡、

旧暦五月、つまり真夏に殺された。

童謡は、まさにそのタイミングを

言い当てていた。



また、こんな歌も歌われている。


征鐘落地 桓迸走


征鐘は、ぐちゃぐちゃに汚れた服のこと。

桓は、全身のことを指す。


桓玄が荊州けいしゅうから建康けんこう

攻め上ってきてからも、

この歌はなお歌われていた。


落地は、まさに失墜の象徴。

迸走は、もう言うまでもない感じだ。



また桓玄の権勢が高まった頃、

こんな童謡も流行ったそうだ。


長幹巷 巷長幹

今年殺郎君 明年斬諸桓


長幹巷、巷長幹は謎。

庾楷ゆかいのやつと似た感じだろうか。

今年に郎君=司馬元顕しばげんけんは殺されるけれど、

すぐに桓玄一派も斬り殺されるだろう、

そう歌われたのだ。




桓玄既篡,童謠曰:「草生及馬腹,烏啄桓玄目。」及玄敗走至江陵,五月中誅,如其期焉。桓玄時,民謠語雲:「征鐘落地桓迸走。」征鐘,至穢之服;桓,四體之下稱。玄自下居上,猶征鐘之廁歌謠,下體之詠民口也。而雲「落地」,墜地之祥,迸走之言,其驗明矣。桓玄得志,童謠曰:「長幹巷,巷長幹。今年殺郎君,明年斬諸桓。」及玄走而諸桓悉誅焉。郎君,司馬元顯也。


桓玄の既にして篡ぜるに、童謠に曰く:「草の生ゆるは馬腹に及び、烏は桓玄が目啄をまん」と。玄の敗走し江陵に至りたるに及び、五月中には誅せられ、如くは其の期たり。桓玄の時,民謠は語りて雲えらく:「征鐘は地に落ち桓は迸走す」と。征鐘は、至り穢れたる服。桓は、四體の下稱なり。玄の下より上に居し、猶お征鐘の廁歌は謠われ、下體の詠は民の口さるなり。而して雲えらく「落地」たるは地に墜つるの祥、迸走の言は其の驗明なるのみ。桓玄の志を得たるに、童謠に曰く:「長幹巷、巷長幹。今年に郎君は殺され、明年に諸桓は斬らる」と。玄の走げたるに及び諸桓は悉く誅たれたる。郎君は司馬元顯なり。

(宋書31-6_言語)




うーん、当たり前だけど劉裕りゅうゆうが雄飛するきっかけとなった歌しか残していませんわねー。もっと多種多様な童謡が残ってたろうになあ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る