詩妖2 王恭さんの敗北
挙兵して
市井の人々はこんな歌を歌っていた。
昔年食白飯 今年食麥麩
昔は白飯を食わせてくれたのに、
今年は麥麩を食わされた。
天公誅謫汝 教汝撚嚨喉
天公はお前を処罰し、
お前のそののど元を
くいっと捻るだろう。
嚨喉喝複喝 京口敗複敗
喉は嗄れに嗄れる。
そして京口もまた
破れに破れるのだ。
「昔年食白飯」は、
王恭が兵権を得たことを言う。
そしてはじめこそ丁重な扱いであったが、
「今年食麥麩」、
最近は麦の本体を取り除いた、
表の抜け殻を喰わされた、であるから、
将兵からの信頼を損ねたことを指す。
だから、天から王恭に罰が下る。
お前なんかコテンパンに
されちまうぞ、というわけだ。
王恭が死んだ後、京口周辺では
咳混じりのはやり病が発生。
民衆ののどは大いに嗄れた。
また王恭については、こんな歌もあった。
黃頭小人欲作亂
賴得金刀作蕃捍
「黄」と「恭」の上の部分が共通していて、
「小人」は「恭」の下の部分と共通する。
そして金刀と言えば、「劉」の字。
つまり劉牢之を護衛につけて、
反乱を起こすだろう、と謳われたのだ。
王恭鎮京口,舉兵誅王國寶。百姓謠雲:「昔年食白飯,今年食麥麩。天公誅謫汝,教汝撚嚨喉。嚨喉喝複喝,京口敗複敗。」「昔年食白飯」,言得志也。「今年食麥麩」,麩,粗穢,其精已去,明將敗也,天公將加譴謫而誅之也。「撚嚨喉」,氣不通,死之祥也。「敗複敗」,丁寧之辭也。恭尋死,京都大行咳疾,而喉並喝焉。王恭在京口,民間忽雲:「黃頭小人欲作賊,阿公在城下,指縛得。」又雲:「黃頭小人欲作亂,賴得金刀作蕃捍。」「黃」字上,「恭」字頭也;「小人」,「恭」字下也。尋如謠者言焉。
王恭の京口に鎮ぜるに、兵を舉げ王國寶を誅す。百姓は謠に雲えらく:「昔年にては白飯を食い、今年は麥麩を食う。天公は汝を誅謫し、汝を教え嚨喉を撚ぜん。嚨喉は喝し複た喝し、京口は敗れ複た敗る」と。「昔年食白飯」、志を得たるを言いたるなり。「今年食麥麩」、麩は粗穢にして其の精なるを已にして去りたれば、明將の敗るるにして、天公の將に譴謫を加え之を誅したるなり。「撚嚨喉」、氣の通ぜず、死の祥なり。「敗複敗」、丁寧の辭なり。恭の尋いで死にたるに、京都にて大いに咳疾が行き、喉は並べて喝たる。王恭の京口に在せるに、民間は忽ち雲えらく:「黃頭小人の賊を作したるを欲さば、阿公は城下ぶに在りて、縛得せるを指さん」と。又た雲えらく:「黃頭小人は作亂を作さんと欲せど、金刀を得たるに賴りて蕃捍を作す」と。「黃」が字が上は「恭」が字の頭なり。「小人」は「恭」字の下なり。尋いで謠いたるの言いたるが如くなる。
(宋書31-4_言語)
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