詩妖1  ひよこの王恭  

五行志 詩妖 全9編



孝武帝こうぶていの治世の末、

劉裕りゅうゆうの故郷である京口けいこうの町では、

こんな歌が歌われていた。



黃雌雞,莫作雄父啼。

 黄色の雌雛では、

 父親のあの勇壮な鳴き声など

 到底真似出来まい。


一旦去毛衣,衣被拉颯棲。

 ひとたびその羽毛が

 取り除かれてしまえば、その羽毛は

 どろどろに汚れてしまうだろう。



やがて王恭が起兵して王国宝おうこくほうを殺するも、

すぐさま劉牢之りゅうろうしに破れた。



ろくすっぽ兵力を持たないお貴族さまが

うかつにも兵を

動かしてしまったものだから、

結局その兵によって蹴落とされた、

というわけだ。




太元末,京口謠曰:「黃雌雞,莫作雄父啼。一旦去毛衣,衣被拉颯棲。」尋王恭起兵誅王國寶,旋為劉牢之所敗也。


太元の末、京口の謠に曰く:「黃なる雌雞、雄父の啼きたるを作したる莫し。一と旦び毛衣を去らば、衣は颯棲に拉わるを被らん」と。尋いで王恭は起兵し王國寶を誅せど、旋じて劉牢之が為に敗せる所となりたるなり。

(宋書31-3_言語)




詩妖

民間の民謡がのちの世の展開を予言していたよ、というよくあるアレ。史実としてどこまで信じるかはともかく、この手のネタを決める時の重要な参考資料になるでしょう、という感じではあります。


ところでネットでこの歌について調べると出典がほぼ晋書になっていてですね…… お前ェ! どう考えても! 宋書のほうが! 先! でしょ!!!!!!! なんで本場中国でそんなザルな出典にしてんですかぁああああ!!!!!!!!

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