符瑞2  劉裕即位の符瑞 

廬江ろこう霍山かくざんからは、

いつも十二の鐘の音が聞こえてきていた。


劉裕りゅうゆう後秦こうしん制圧の途につくと、

霍山の山肌が崩れ、

六つの鐘が見つかった。

非常に精巧な作りであり、

それぞれの鐘には、

百六十文字ずつが刻まれていた。


ほうほう、どんな内容が?

そこは載ってない。



冀州きしゅうの高僧、法稱ほうしょうが臨終の際、

弟子の普嚴ふげんに語っている。


「神さまがわしに言った。

 長江の東に、劉、という将軍がおる。

 かれは漢皇帝家の末裔にして、

 今まさに天命を受けようとしておる。

 そこで吾は三十二枚の璧を鋳潰し、

 一つの金の塊となした。

 それを将軍に与えることが

 天命の証である。


 三十二は、高帝(劉邦りゅうほう)より数えて

 将軍に至るまでの世代数である」


このことを、普嚴は同僚の法義ほうぎに告げた。

法義は嵩高廟すうこうびょうの石壇の下から

玉璧三十二枚を発見。

早速これらを鋳潰し、

ひとかたまりの黃金とした。



漢中かんちゅう城の縣、

漢水の沿岸で、落雷のような音がした。

間もなく川岸が崩落、

そこから銅鐘が十二枚発見された。



きょう縣のひと、宋耀そうようの畑から、

嘉禾かかが九本見つかった。

その二年後に、劉裕は禅讓を受けている。



予言書の一つである「孔子河雒讖こうしからくせん」には、

こんな内容が載っている。


「二口建戈は比ぶ能わず

 兩金は相刻み、神鋒を發す、

 主なき空穴の中に奇は入り、

 女子は獨立し又と雙と為る」


ここで二口建戈は「劉」の字を指す。


晋は五行で言えば、金行の国。

一方で劉という字にも

金の字が含まれている。

そこで「双方の金が相刻まれる」

と語られているのである。


中に誰もいない穴(宀)の中に

「奇」の字が入れば、「寄」となる。


女が独り立ちし、

又、とつがいとなれば、「奴」となる。


つまり、遥か昔の予言書にも、

すでに劉裕の存在は

仄めかされていたのである。




廬江霍山常有鐘聲十二。帝將征關、洛,霍山崩,有六鐘出,制度精奇,上有古文書一百六十字。冀州有沙門法稱將死,語其弟子普嚴曰:「嵩皇神告我雲,江東有劉將軍,是漢家苗裔,當受天命。吾以三十二璧,鎮金一餅,與將軍為信。三十二璧者,劉氏卜世之數也。」普嚴以告同學法義。法義以十三年七月,于嵩高廟石壇下得玉璧三十二枚,黃金一餅。漢中城固縣水際,忽有雷聲,俄而岸崩,得銅鐘十二枚。又鞏縣民宋耀得嘉禾九穗。後二年而受晉禪。孔子【河雒讖】曰:「二口建戈不能方,兩金相刻發神鋒,空穴無主奇入中,女子獨立又為雙。」二口建戈,「劉」字也。晉氏金行,劉姓又有金,故曰兩金相刻。空穴無主奇入中,為「寄」字。女子獨立又為雙,「奴」字。


廬江の霍山には常に十二なる鐘聲を有す。帝の將に關、洛を征せんとせるに、霍山は崩れ、六なる鐘の出でたる有り、制度は精奇、上には古文書を一百六十字有す。冀州に有りたる沙門の法稱の將に死なんとせるに、其の弟子の普嚴に語りて曰く:「嵩皇神は我に告げて雲えらく、江東に劉將軍有り、是れ漢家の苗裔、當に天命を受く。吾れ三十二璧を以て、金一餅を鎮め、將軍が為に信を與う。三十二璧たるは、劉氏が卜世の數なり」と。普嚴は以て同學の法義に告ぐ。法義は十三年七月に嵩高廟の石壇が下より玉璧三十二枚を得たるを以て、黃金一餅とす。漢中城の固縣の水際にて、忽ち雷聲有り、俄にして岸は崩れ、銅鐘十二枚を得る。又た鞏縣の民の宋耀は嘉禾九穗を得る。二年の後に晉より禪を受く。孔子の【河雒讖】に曰く:「二口建戈は方ぶ能わず、兩金相刻は神鋒を發す、空穴無主奇は中に入り、女子獨立し又た雙と為す」と。二口建戈は「劉」字なり。晉氏は金行にして、劉姓も又た金を有す、故に兩金相刻と曰う。空穴無主奇入中は、「寄」字と為る。女子獨立又為雙は「奴」字なり。

(宋書27-2_術解)




南史でおらおら本紀中にねじ込まれてきてた内容、やっぱり符瑞志に載ってました。まあそうですよねー。より詳細な内容を確認できてシヤワセなのです。しかしなんのとんちゲームだよ、曹娥碑三十里かよ。

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