劉義隆3 南:即位への道 

劉裕りゅうゆうが即位したとき、劉義隆りゅうぎりゅうは14。


劉裕が咎人たちの裁判に臨んだおり、

ちょうど劉義隆もそこにいた。


そこで劉裕、劉義隆を試す。

劉義隆自身に咎人を尋問させ、

その罪過の是非を問わせたのだ。


すると劉義隆の尋問、及び判決は

実に見事なものであった。

劉裕、劉義隆の才知に大喜びした。



その後江陵こうりょうに出鎮、西府軍の長となる。

そして劉裕が死に、劉義符りゅうぎふが即位。

間もなくして、建康けんこうの西の空に、

黑龍が出現、更に五色の雲が追従した。


翌年、江陵城の上に紫の雲が出現。

鑑定者は皆、帝王が西に現れた、

とみなした。


その年のうちに劉義符は廃位、

次の皇帝を誰にすればよいか、と

議論がなされていたが、

徐羨之じょせんし傅亮ふりょうらは、符瑞が

劉義隆の即位を促していると主張。

この主張が通り、劉義隆のもとに

即位打診の使者が飛ばされた。


使者筆頭は、傅亮。

劉義隆の前で文書を読み、玉璽を示した。


すわ劉義隆様が皇帝に!?

荊州けいしゅう府の属領たちはこのニュースを

触れてまわろうとする。

が、他ならぬ劉義隆自身がそれを禁止。

劉義隆は、あえて通常の業務を行った。


だが、劉義隆が猶予している間にも、

事態はさらに転がっていく。


徐羨之、劉義符を殺害。

さらに彼自身までもが、

百官を引き連れ、荊州に赴く。


この動きに荊州の人間は

徐羨之の侵攻を疑い、恐れたが、

劉義隆、及びその側近

王曇首おうどんしゅ王華おうか到彥之とうげんし

侵攻ではない、と確信していた。


劉義隆は言う。


「諸公の意図は、飽くまで高祖の偉業を

 継ぐことにあるだろう。

 敢えて彼らが反逆する理由がない。


 また、この荊州府に揃っている

 諸臣将兵の実力を持ってすれば、

 仮に彼らの意図が侵攻であったとしても、

 容易に鎮圧できよう。


 このような状況で、

 彼らを疑って何になる!」


こうして劉義隆、徐羨之らの先導を受け、

船で江陵を出発。


王華に荊州府を守らせ、

到彥之には要衝、襄陽じょうようを。

王曇首は、劉義隆に随行。


その道すがら、黑龍が現れた。

そして劉義隆の乗る船を背負い、

飛び跳ねる。


側仕えたちは誰もがうろたえたが、

劉義隆は、落ち着いたままで王曇首に言う。


王が、を開くときにも

 このようなことがあったそうだな。


 さて、おれにこの天命を

 受け止めるだけの器があるのかな」


一行は建康手前にある港、新亭しんていに到着。

ここで宋臣総出の歓迎を受けた。

まずは劉裕が眠る初寧陵しょねいりょうを参拝。

それから檀道済だんどうさいが入り口を守る、

主を失って久しい中堂に到着。


中堂で改めて皇帝即位の要請を受けたが、

恐れ多いことである、と固辞した。

しかし家臣たちはなおも劉義隆を求める。


要請の繰り返されること四回、

ついに劉議隆は要請を受諾、即位した。




帝時年十四,來朝,會武帝當聽訟,仍遣上訊建康獄囚,辯斷稱旨,武帝甚悅。景平初,有黑龍見西方,五色雲隨之。二年,江陵城上有紫雲。望氣者皆以為帝王之符,當在西方。其年少帝廢,百官議所立,徐羨之、傅亮等以禎符所集,備法駕奉迎,入奉皇統。行台至江陵,尚書令傅亮奉表進璽紱,州府佐吏並稱臣,請題榜諸門,一依宮省,上皆不許。教州、府、國綱紀宥所統內見刑。是時,司空徐羨之等新有弑害,及鑾駕西迎,人懷疑懼,惟長史王曇首、司馬王華、南蠻校尉到彥之共期朝臣未有異志。帝曰:「諸公受遺,不容背貳;且勞臣舊將,內外充滿,今兵力又足以制物,夫何所疑!」乃發江陵,命王華知州府,留鎮陝西,令到彥之監襄陽。車駕在道,有黑龍躍負上所乘舟,左右莫不失色,上謂王曇首曰:「此乃夏禹所以受天命,我何德以堪之。」及至都,群臣迎拜於新亭。先謁初寧陵,還次中堂,百官奉璽紱,沖讓未受,勸請數四,乃從之。


帝は時にして年十四、來朝し、武帝の當に訴えを聽きかんとせるに會い、仍いで上を遣りて建康の獄囚を訊かしむれば、旨を稱せること辯斷たれば、武帝は甚だ悅ぶ。景平の初、黑龍の西方に見いたる有り、五色雲は之に隨う。二年、江陵城の上に紫雲有り。望氣者は皆な以て帝王の符、當に西方に在りと為す。其の年少帝は廢せられ、百官に議の立ちたる所、徐羨之、傅亮らは以て禎符の集まりたる所なれば、法駕を備え奉迎し、入りて皇統を奉ず。行台の江陵に至れるに、尚書令の傅亮は表を奉じ璽紱を進め、州府の佐吏、並び稱臣は、諸門の榜に題せるを請いたること、一に宮省に依れど、上は皆な許さず。州、府、國の綱紀の宥さるる所を教え、內を統べ刑を見る。是の時、司空の徐羨之らは新たに弑害を有し、鑾駕して西迎したるに及び、人は疑懼を懷きたるも、惟だ長史の王曇首、司馬の王華、南蠻校尉の到彥之は共に朝臣に未だ異志を有したらざるを期す。帝は曰く:「諸公は遺いを受け、背貳を容れざらん。且つ勞臣舊將は內外に充滿し、今、兵力の又た以て制せらる物に足らば、夫れ何ぞの疑いたる所たらんか!」と。乃ち江陵を發し、王華に命じ州府を知せしめ、留めて陝西に鎮めしめ、到彥之に令し襄陽を監ぜしむ。車駕は道に在りて、黑龍の上の乘りたる所の舟を負い躍したらば、左右に失色せざる莫かれど、上は王曇首に謂いて曰く:「此れ乃ち夏の禹の天命を受けたる所以、我れ何ぞの德を以て之に堪えんか?」と。都に至りたるに及び、群臣は新亭にて迎拜す。先に初寧陵を謁で、還りて中堂に次し、百官は璽紱を奉ぜど、沖讓して未だ受けず、勸請せること四を數え、乃ち之に從う。


(南史2-1_王度)


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