劉裕71 南:武帝伝説2 

劉裕さま伝説の続きである。

多すぎだろおい。



桓玄かんげんの部下である何澹之かたんしから

呼ばれた時のことである。


劉裕りゅうゆうが何澹之の屋敷に到着した時、

配下たちは、突然部屋が

光に満ち溢れたかのような

錯覚を起こした。


このことを何澹之に報告すると、

何澹之もまた桓玄に

こんなことがあったらしい、と報告。


この時桓玄は

さほど気にも留めていなかったのだが、

劉裕がクーデターを起こしたと聞いた時、

その時のことを思い出し、恐懼した。



京口の地元人に韋叟いそうという人がいた。

いわゆる相術、占いに長けた人である。


この人に、当時劉裕の上司であった

桓脩かんしゅうが言う。


「劉裕殿ほどの人物だ。将来には、

 州刺史になれたりするのであろうかな」


韋叟は答える。


「辺境の州刺史、位にならば

 なれるのでしょう」


だがその後に、劉裕に

こっそりと打ち明けている。


「いや、ぶっちゃけ皇帝レベルなんですが、

 言わない方がいいかなーと思って

 ごまかしました」


劉裕、笑って答える。


「じゃあ、その占いが当たったんなら、

 お前さんを副官に取り立ててやろうか」


そして韋叟の占い通り、劉裕は桓玄を倒し、

一気に貴顕となった。


韋叟、劉裕のもとに訪問する。


しゅう成王せいおうは、桐の葉にて

 年若い弟を唐公につけると言いましたが、

 そんな口約束に等しい話であっても、

 最終的には約束通りといたしました。


 劉裕様も同じく、あの口約束を

 実現してくださいましたが、

 どうか私を領軍将軍の補佐として

 つけて下さいませんでしょうか」


劉裕、この願いを受理した。

なお当時の領軍将軍は、おそらく謝混。

劉毅派の筆頭である。



義熙九年、すなわち劉裕が

司馬休之を倒した年。


この年、木、土、火、金星が

東井と言う星座のエリアに集合した。

惑星が一箇所に集まる現象は、

大乱、もしくは大業の

どちらかの予兆として知られる。


その四年後、劉裕は洛陽、長安を奪還。

当時の人々は、この偉業の予兆である、

と四星集合を評価した。



漢中郡成固県、漢水の辺りの崖が

雷のような轟音とともに崩れた。

そこからは十二個の銅の鍾が現れた



鞏縣に住まう宗曜、という人の所有する

田んぼから、一本の茎より九つの穂が

生じている稲が発見された。


これは瑞祥だ、ということで、

宗曜、劉裕に献上。

そして劉裕はそのまま皇帝に献上した。


だが皇帝、これは君のものだろう、

と返却しようとした。


劉裕がそれを拒否したので、

晋帝はそのまま自らのもとに

穂を留め置くのだった。




帝造遊擊將軍何澹之,左右見帝光曜滿室,以告澹之,澹之以白玄,玄不以為意,至是,聞義兵起,甚懼。晉陵人韋叟善相術,桓修令相帝當得州不,叟曰:「當得邊州刺史。」退而私於帝曰:「君相貴不可言。」帝笑曰:「若中,當相用為司馬。」至是,叟詣帝曰:「成王不負桐葉之信,公亦應不忘司馬之言。今不敢希鎮軍司馬,願得領軍佐。」於是用焉。義熙九年,歲、鎮、熒惑、太白聚東井,至是而關中平。漢中成固縣漢水崖際有異聲如雷,俄頃岸崩,有銅鍾十二,出自潛壤。鞏縣人宗曜于其田所獲嘉禾,九穗同莖,帝以獻,晉帝以歸於我。帝沖讓,乃止。


帝の遊擊將軍の何澹之に造りたるに、左右は帝の光曜なるが室を滿たしたるを見、以て澹之に告ぐらば、澹之は以て玄に白えど、玄は以て意と為さず、是れに至り、義兵の起ちたるを聞き、甚だ懼る。晉陵人の韋叟は相術を善くさば、桓修は令し帝の當に州を得たりや不やを相さしむらば、叟は曰く:「當に邊州の刺史を得たらん」と。退りたるに、帝に私して曰く:「君が相の貴なるは言いたる可からず」と。帝は笑いて曰く:「若し中らば、當に相い用い司馬と為さん」と。是れに至り、叟は帝に詣でて曰く:「成王は桐葉の信に負かず、公も亦た司馬の言を忘れず應じたり。今、敢えて鎮軍司馬を希わず、領軍が佐を得んと願う」と。是に於いて用いたり。義熙九年、歲、鎮、熒惑、太白の東井に聚いたるに、是に至りて關中は平らぐ。漢中の成固縣の漢水の崖際にて雷が如き異聲有り、俄頃にして岸は崩れ、銅鍾の十二有り、潛壤せるより出づ。鞏縣の人の宗曜は其の田所より嘉禾を獲る。九なる穗莖を同じうす。帝の以て獻ぜるに、晉帝は以て我に歸す。帝の沖讓せるに、乃ち止む。

(南史1-2_術解)




南史のこの瑞祥たちが、どう宋書の瑞祥志五行志天文志に描かれているか。楽しみです。

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