劉裕62 禅譲の詔    

晋帝しんてい司馬徳文しばとくぶんは、

劉裕りゅうゆうに帝位を譲るための

詔勅しょうちょく文をしたためた。


そこにはこうある。


「予が玉座を下り、この宮殿から離れ、

 帝位をそう王に帰したることは

 ぎょう王がしゅん王に禅譲したこと、

 かん帝が帝に禅譲したことに

 倣うものである」


詔勅の下書きを終え、

清書に送り出した後、

司馬徳文は筆を弄びながら、

側仕えに漏らした。


桓玄かんげんの簒奪の時に、

 既に天命は改まっていたのだ。


 それが劉裕殿によって二十年ほど

 引き伸ばされていたにすぎん。


 このような日が来ること、

 甘んじて受け入れるべきなのであろうよ」




晉帝禪位于王,詔曰:「予其遜位別宮,歸禪于宋,一依唐虞、漢魏故事。」詔草既成,送呈天子使書之,天子即便操筆,謂左右曰:「桓玄之時,天命已改,重為劉公所延,將二十載。今日之事,本所甘心。」


晉帝は王に位を禪らんとし、詔して曰く:「予は其れ位を遜じ宮を別れ、歸して宋に禪らん。一に唐虞、漢魏の故事に依らん」と。詔草の既にして成りたれば、送呈天子使書之,天子は即ち筆を便操し、左右に謂いて曰く:「桓玄の時、天命は已にして改まりたり。重ねて劉公が為に延ぶる所、將に二十載になんなんとす。今日の事、本より心に甘んずる所なり」と。


(宋書2-17_衰亡)

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