劉裕56 琅邪王を奉ず  

司馬休之しばきゅうしを倒し、国内での

体制を盤石とした劉裕りゅうゆう


朝廷からは国内外の軍事の総督、

及び司州ししゅう征討の軍権がもたらされる。


が、劉裕、これらを固辞。

そのかわり、それらの権限を

大司馬の琅邪王ろうやおう司馬徳文しばとくぶん

もたらすよう建議。

採用された。


いよいよ劉裕は、声望固めに入った。

司馬徳文に旗を振らせて、

司州、即ち後秦こうしんを討伐する。


この大功を実現させれば、

晴れて皇帝としての道のりが確定するのだ。




公受中外都督及司州,並辭大司馬琅邪王禮敬,朝議從之。公欲以義聲懷遠,奉琅邪王北伐。


公は中外都督、及び司州を受くるに、並べて辭し大司馬の琅邪王に禮敬せば、朝議は之に從う。公は義聲を以て遠きに懷きたらんと欲し、琅邪王を奉じ北伐す。

(宋書2-11_寵礼)




劉裕の回りくどさの面目躍如。「あくまで総大将は晋の皇族」にしてる辺り、どれだけ劉牢之りゅうろうしの失敗、桓玄かんげんの失敗を重要視していたかがうかがえる。最強の武将が大義名分をも操るとか、洒落になりませんがな。誰もが反論をしたくても、反論の芽を次々と潰されてしまうのだ。


劉義隆りゅうぎりゅうと言う不世出の後継者を得ていたことも大きいだろうけれども、こうしてみると劉裕周りのスタッフたちの用意周到さは実に緻密なものだったんだろう。一方で緻密であればあるほど、劉裕にとっては息苦しかったんじゃないかな、とも思う。


王弘おうこうのところで触れるが、劉裕、「本当はこんな立場になんぞなりたくなかった」って漏らしてる。これを韜晦とうかいとして見る向きもあるが、個人的には案外本心だったんじゃないかな、って思ってる。

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