劉裕39 首都防衛準備  

せまりくる五斗米道ごとべいどうの大軍から

建康けんこうを守るために、

各港湾に守りをわけて

配備した方がいいのでは、

と提案するものがあった。


劉裕りゅうゆうは答える。


「敵が多勢で、こちらが寡勢。

 この状態で、更に

 兵力を分散させでもすれば、

 こっちの手薄さなぞ、

 すぐに見抜かれるぞ。


 そんな状態で、一箇所を落してみろ。

 全軍の士気が、一気にがた落ちだ。


 いまは一度全兵力を石頭城せきとうじょうに集め、

 状況に応じて配置を決める。


 敵に、こちらの兵力の多寡を

 悟らせるわけにはいかん。

 だから、今は

 変に分散させない方がいい。


 とは言え、奴らが

 こっちの守りの薄い所に

 殺到するとしたら……


 さて、どうしたものかな」


一寸先は闇。

今は、やれることをやるしかない。

石頭城に兵士を集めたあと、

各地に防護柵を築く。


やがて五斗米道の軍が視認される。

劉裕は一人、呟いた。


「さて、やつらに一気に攻めかかられたら

 どうしようもないな。

 逃げる手立てを考えるしかなさそうだ。


 とは言え、

 何が起こるかわからんのが戦の常。


 万が一、やつらがいったん対岸に停泊、

 なんぞやらかしてくれれば、

 勝ちの目も見えてくるんだが」




時議者謂宜分兵守諸津要。公以為:「賊眾我寡,若分兵屯,則人測虛實。且一處失利,則沮三軍之心。今聚眾石頭,隨宜應赴,既令賊無以測多少,又於眾力不分。若徒旅轉集,徐更論之耳。」移屯石頭,乃柵淮斷查浦。既而羣賊大至,公策之曰:「賊若於新亭直進,其鋒不可當,宜且回避,勝負之事,未可量也。若回泊西岸,此成擒耳。」


時の議者は謂えらく「宜しく兵を分け諸津の要を守るべし」と。公は以て為したるらく:「賊は眾く我は寡なし、若し兵を分け屯ぜしむらば、則ち人は虛實を測らん。且つ一なる處にて利を失わば、則ち三軍の心を沮す。今、眾を石頭に聚め、隨いて宜しく應じて赴かしめ、既にして令賊をして以て多少を測りたるを無からしめ、又た眾にては力を分けず。若し徒旅の轉集さば、徐ろに更を論じたるのみ」と。移りて石頭に屯じ、乃ち淮に柵し查浦を斷つ。既にして羣賊の大いに至りたるに、公は之に策もちて曰く:「賊の若し新亭を直ちに進まば、其の鋒に當るべからず、宜しく且つ回避せん。勝負の事、未だ量りたるべからざるなり。若し西岸に回泊さば、此れ擒えたるを成りたるのみ」と。


(宋書1-38_王度)




建康をチップにして分の悪い博打をしでかしてる、と言う感じ。しかし改めて読んでみると孫子兵法バリバリですわね、発言。ここの記述を読む上じゃがっつり読んでたんだろうなーって印象にもなるが、果たしてこの辺りの発言が、劉裕の語った言葉まんまだったのかどうか。とにかく沈約センセーのお書きになるセリフは胡散臭い。

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