劉裕28 刁氏三万銭(魏)

川猿かわざる劉裕りゅうゆうは、性粗暴にして狷介。


文字などわずかにしか知らず、

しょっちゅう博打で財産を溶かすため、

人々から蔑み疎んじられていた。


ある時刁逵ちょうきが劉裕に、

土地神を祀るための

祭祀費用として三万銭を貸した。

が、いくら時が経っても返済してこない。


そんな劉裕の無法にたまりかねた刁逵、

劉裕を捕え、尋問した。


が、それも王謐おういつが肩代わりしたため、

劉裕の無法はうやむやのまま

立ち消えとなった。


落ちぶれものであり、礼儀作法には

まるで頓着しないたちであった。




島夷劉裕,意氣楚剌,僅識文字,樗蒲傾產,為時賤薄。嘗負驃騎諮議刁逵社錢三萬,經時不還。逵以其無行,錄而徵責,驃騎長史王謐以錢代還,事方得了。落魄不修廉隅。


島夷劉裕、意氣は楚剌、僅かに文字を識り、樗蒲にて產を傾け、時に賤薄と為る。嘗て驃騎諮議の刁逵より社錢三萬を負い、時を經れども還ぜず。逵は其の無行を以て、錄し徵責せど、驃騎長史の王謐の錢を以て代りて還ぜるに、事は方に了したるを得る。落魄にして廉隅を修めず。


(魏書97-2_簡傲)




島夷

中原の人間たちからすれば、長江を渡った先など「海の向こうの鄙地」扱いである、と言ったニュアンスがある。よって島国の蛮人、的な雰囲気になるだろう。魏書を書いた魏收さんは基本口汚くて楽しい。けど沈約さんがやらかす、上げまくりの中に「とは言ってるけど、実際のところはちょっと……なところもあるんですよねー」って混ぜ込む、あの陰険な書き方に較べると、ストレートなぶん逆に信用度が高い……気も、しなくはない。まぁ、後世で無責任に遊ぶ我々は「面白い方を採用して妄想する」で良いのでしょうけれど。


驃騎

いまいち誰のことかわからない。おそらく桓玄に比定しておくのが正しいような気もするのだけれども、魏書をどうひっくり返しても誰が驃騎将軍になったのかを教えてくれないのがなあ。うーん、魏收さん「なんか偉い人の部下」みたいな感じで使ってねえかこの言葉? っつーかなんで驃騎の下にある奴同士で劉裕の処遇右往左往させてんだよ。

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