劉裕23 覆舟山での対峙 

破竹の勢いで建康けんこうに向かってくる

クーデター軍に桓玄かんげんはいよいよビビる。


そこで建康けんこう城の北にある山、覆舟山ふくしゅうざんを中心に

桓謙かんけんを東に、卞範之べんはんしを西に駐屯させた。

あわせて二万の軍勢だ。


桓玄軍の迎撃布陣が整った日の翌朝早く、

クーデター軍は朝食を終えると

余った食料を捨てた。


ここで先行隊を募り、

彼らに多くの旗を持たせて、

覆舟山に登らせた。


いつの間にやら覆舟山を占拠させた、

そのように敵に思い込ませるためだ。


覆舟山に突然現れた軍勢を見、

桓玄は慌てて庾禕之ゆいし

多くの武器や兵士を引き連れ、

合流させた。


が、なにぶん相手は劉裕りゅうゆう

しかも自ら先頭に立ち、突撃してくる。

配下将、配下兵たちは死をも恐れず、

劉裕のあとを追う。


勢いに乗ったクーデター軍たちは、

一騎当百、とでもいうべき状態。

上げる鬨の声は天地をも

震わさんばかり。


しかもこの時、風は東北から吹いていた。

つまり覆舟山を焼けば、その煙は

建康へと流れていく。


劉裕が火を放つよう命じると、

あっという間に建康の空を煙が覆う。

そして、煙の向こうから戦鼓、怒号。


めきめきへし折れまくる、

桓玄軍の戦意。


こうして桓玄軍、

さして時を置かずして瓦解するのだった。


桓玄は軍を配し布陣こそさせたが、

既に逃亡する心づもりを固めていた。

そこで殷仲文いんちゅうぶん

石頭で船の準備をさせ、子姪を率い

長江ちょうこうに船を浮かべ、逃亡した。




玄聞敷等並沒,愈懼。桓謙屯東陵口,卞範之屯覆舟山西,眾合二萬。翌旦,義軍食畢,棄其餘糧,進至覆舟山東,使丐士張旗幟於山上,以為疑兵。玄又遣武騎將軍庾禕之,配以精卒利器,助謙等。高祖躬先士卒以奔之,將士皆殊死戰,無不一當百,呼聲動天地。時東北風急,因命縱火,煙爓張天,鼓噪之音震京邑。謙等諸軍,一時土崩。玄始雖遣軍置陣,而走意已決,別使領軍將軍殷仲文具舟於石頭,仍將子姪浮江南走。


玄は敷らの並べて沒せるを聞き、愈いよ懼る。桓謙をして東陵口に屯ぜしめ、卞範之をして覆舟山が西に屯ぜしめるに、眾は合わせて二萬たり。翌旦、義軍は食を畢えるに、其の餘糧を棄て、進みて覆舟山が東に至り、丐士をして旗幟を山上に張らしめ、以て疑兵と為す。玄は又た武騎將軍の庾禕之を遣わせ、以て精卒利器を配し、謙らの助けとす。高祖の躬ら士卒に先し以て奔り之くに、將士は皆な殊に死戰し、一の百に當らざる無く、呼聲は天地を動かす。時に東北の風の急なれば、因りて火を縱つべく命じ、煙爓は天に張り、鼓噪の音は京邑を震わす。謙ら諸軍、一なる時にして土崩す。 玄は始め軍を遣り陣を置かしめたりと雖ど、而して走ぐる意を已に決し、別に領軍將軍の殷仲文をして舟を石頭に具せしめ、仍ち子姪を將い江に浮かび南走す。


(宋書1-23_暁壮)




覆舟山がどう見ても

防御拠点になりようがない山なので

パニクってる。


いや、だって覆舟山の北側、

玄武湖げんぶこがまるまる覆ってますねん。

どうやって覆舟山に

桓謙の目を盗んで登らせられたんだよ。


鍾山しょうざんのことを覆舟山と呼びました、だと、

妥当性も高いんだけどなあ。



卞範之

桓玄一の腹心、と呼んでいい。ただ、やはり尻尾振り以上の感想は出て来ない。そこは桓玄亡き後も踏ん張った桓謙に見劣りする。


庾禕之

庾亮の親族なのだろうが、続柄は不明。

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